ストリンガー氏が社長兼務(2009年・ソニーの決断)

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論点権限を一人に集中して改革を急ぐか
ソニー:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
CEOと社長を一人に集約し、エレクトロニクスとゲームを一体で動かす体制への転換2009年4月1日、代表執行役会長兼CEOのハワード・ストリンガー氏が社長を兼ね、代表執行役会長兼社長CEOとなった。2005年6月から社長を務めた中鉢良治氏は代表執行役副会長に移り、本社機能におけるCEOの補佐と製品安全・品質、環境を担当する立場となった。

何をなぜ決めたか:CEOと社長を一人に集約し、エレクトロニクスとゲームを一体で動かす体制への転換

概要

2009年4月1日、代表執行役会長兼CEOのハワード・ストリンガー氏が社長を兼ね、代表執行役会長兼社長CEOとなった。2005年6月から社長を務めた中鉢良治氏は代表執行役副会長に移り、本社機能におけるCEOの補佐と製品安全・品質、環境を担当する立場となった。

同じ日に、エレクトロニクス事業とゲーム事業のオペレーションの抜本的改革を目的とした機構改革を実施している。業績報告のビジネスセグメントも2009年度第1四半期から、コンスーマープロダクツ&デバイスとネットワークプロダクツ&サービスの2分野を軸とする区分へ改まった。

背景

2008年秋以降の世界的な景気後退と円高、価格競争の激化を受け、2009年3月期の連結業績は売上高及び営業収入7兆7,299億円、営業損失2,277億円、親会社株主に帰属する当期純損失989億円となった。前期の営業利益3,744億円から一転しての赤字である。

2009年度も厳しい事業環境が予想されるなかで、エレクトロニクスを中心にスピードと収益性に主眼をおいた事業構造の変革が課題に据えられ、グループ全体の費用を2008年度に比べて3,000億円超削減する施策が置かれた。2009年3月31日現在の代表執行役3名は、2008年度の役員賞与を全額返上している。

内容

機構改革の狙いは、エレクトロニクスとゲームの両事業を戦略的に統合し、ネットワークにつながる製品やサービスを創出する体制を強化することにあった。2009年4月1日以降、生産・物流・調達・カスタマーサービス、研究開発・共通ソフトウエア開発、グローバル・セールス・マーケティングという三つの横断的な機能組織が置かれた。

実行面では、製造事業所を2008年12月時点の全世界57拠点から2010年3月末までに46拠点へ減らし、エレクトロニクス事業の全世界の従業員数を2008年9月末時点の約16万人から約8,000人削減する計画が進んだ。構造改革費用は2008年度の754億円に対し、2009年度は1,243億円を計上した。

含意

一人に集めた指揮系統は3年で解かれた。2010年3月期は営業利益317億円で黒字を回復したものの、親会社株主に帰属する当期純損益は2010年3月期408億円の損失、2011年3月期2,595億円の損失、2012年3月期4,566億円の損失と3期続けて赤字が並んだ。

2012年4月1日、ソニー・コンピュータエンタテインメント出身の平井一夫氏が代表執行役社長兼CEOに就任し、ストリンガー氏は代表執行役会長へ移った。社長としての在任は3年0か月であり、CEOと社長を分けた体制が戻ったことになる。

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考察:肩書きを足すという治療法
考察

考察:肩書きを足すという治療法

この人事は昇格ではなく、指揮系統の短縮だっただろう。CEOと社長が別人であれば、エレクトロニクスの現場は社長を見て動き、全社の資源配分はCEOが決める。両者の間に議論の余地が残るかぎり、機構改革の決定が現場へ届くまでには一段の翻訳が挟まる。エレクトロニクスとゲームを一つに統合し、生産から販売までを横断機能へ移す設計は、その翻訳を許さない構造を前提にしていた。社長職の兼務は、その前提を人事の側から担保する措置だったのだろう。

もっとも、肩書きを足して縮められるのは距離であって、損益ではない。2010年3月期に営業利益317億円で黒字を回復したあとも、当期純損益は3期続けて赤字となり、2012年3月期の損失は4,566億円に達した。テレビとパネル調達の構造は一本化された指揮系統のもとでも解けず、体制そのものが2012年4月に平井一夫氏へ引き継がれている。ソニーが次に取った手は、権限を集めることではなく、事業そのものを売却することだった。

Yutaka Sugiura, 2026年9月
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図と表

ソニー:連結業績の推移

売上高及び営業収入(百万円)営業利益(損失)率(%)
ソニー:連結業績の推移
(百万円)売上高及び営業収入営業利益(損失)親会社株主に帰属する当期純利益(損失)備考
2004年3月期7,496,39198,90288,511
2005年3月期7,159,616113,919163,838
2006年3月期7,475,436191,255123,616
2007年3月期8,295,69571,750126,328
2008年3月期8,871,414374,482369,435窓のなかで営業利益が最も大きい期。売上高及び営業収入も最大となった
2009年3月期7,729,993△227,783△98,9382009年4月1日付の体制変更と機構改革を決めた期。営業損益は損失へ転じた
2010年3月期7,213,99831,772△40,802新体制の初年度。営業損益は黒字を回復したが当期純損益は損失が続いた
2011年3月期7,181,273199,821△259,585ソニーと連結納税グループの繰延税金資産に対し3,623億円の評価性引当金を計上
2012年3月期6,493,212△67,275△456,660窓のなかで当期純損失が最大。翌4月に平井一夫氏が社長兼CEOに就任した
2013年3月期6,800,851230,10043,034
2014年3月期7,767,26626,495△128,369
出所:ソニー 有価証券報告書 第87〜97期【主要な経営指標等の推移】(連結・米国会計基準)。各期を当期とする有報の値。2004年3月期と2005年3月期は第89期の5期表から採った
出所:ソニー 有価証券報告書 第87〜97期【主要な経営指標等の推移】(連結・米国会計基準)。各期を当期とする有報の値。2004年3月期と2005年3月期は第89期の5期表から採った

ソニー:連結従業員数の推移

連結従業員数(人)
ソニー:連結従業員数の推移
(人)連結従業員数備考
2004年3月期162,000
2005年3月期151,400
2006年3月期158,500
2007年3月期163,000
2008年3月期180,500窓のなかで最多。前期比17,500名増
2009年3月期171,300
2010年3月期167,900エレクトロニクスの人員削減と製造事業所の統廃合が進んだ年度
2011年3月期168,200
2012年3月期162,700
2013年3月期146,300
2014年3月期140,900
出所:ソニー 有価証券報告書 第87〜97期【主要な経営指標等の推移】【従業員の状況】。2004年3月期と2005年3月期は第89期の5期表から採った
出所:ソニー 有価証券報告書 第87〜97期【主要な経営指標等の推移】【従業員の状況】。2004年3月期と2005年3月期は第89期の5期表から採った

経営体制の一本化の経緯と対応

経営体制の一本化の経緯と対応
科目概要備考
一本化の前の体制2005年6月ハワード・ストリンガー氏が代表執行役会長兼CEO、中鉢良治氏が代表執行役社長
新しい体制の発足日2009年4月1日ストリンガー氏が代表執行役会長兼社長CEO。社長職とCEOが一人に集まった
前社長の処遇代表執行役 副会長中鉢良治氏。本社機能におけるCEOの補佐、製品安全・品質、環境を担当
同日の機構改革エレクトロニクスとゲームの統合両事業のオペレーションの抜本的改革を目的とし、2009年4月1日付で実施した
横断的な機能組織三つ生産・物流・調達・カスタマーサービス/研究開発・共通ソフトウエア開発/販売
業績報告の区分2009年度第1四半期から変更コンスーマープロダクツ&デバイスとネットワークプロダクツ&サービスの2分野へ
役員報酬の扱い2008年度役員賞与を全額返上2009年3月31日現在の代表執行役3名。役員定額報酬も2009年4月以降減額した
費用削減の目標3,000億円超2009年度のグループ全体での費用を2008年度に比べて削減する計画
構造改革費用1,243億円2009年度の実績。2008年度は754億円。2010年度は約800億円を見込んだ
製造事業所の統廃合57拠点から46拠点へ2008年12月時点から2010年3月末まで。低コスト国への移管とOEM/ODMの活用
人員削減の計画約8,000人エレクトロニクス事業の全世界の従業員を2008年9月末の約16万人から削減
体制の解消2012年4月1日平井一夫氏が代表執行役社長兼CEOに就任し、ストリンガー氏は代表執行役会長へ
出所:ソニー 有価証券報告書 第92期(2009年3月期)【対処すべき課題】【役員の状況】、第93期(2010年3月期)【対処すべき課題】【事業の内容】、第95期(2012年3月期)【役員の状況】
出所:ソニー 有価証券報告書 第92期(2009年3月期)【対処すべき課題】【役員の状況】、第93期(2010年3月期)【対処すべき課題】【事業の内容】、第95期(2012年3月期)【役員の状況】
参考文献

参考文献

参考
  • ソニー 有価証券報告書「第92期(2009年3月期)【対処すべき課題】【役員の状況】」
  • ソニー 有価証券報告書「第93期(2010年3月期)【対処すべき課題】【事業の内容】」
  • ソニー 有価証券報告書「第95期(2012年3月期)【役員の状況】【主要な経営指標等の推移】」

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