この人事は昇格ではなく、指揮系統の短縮だっただろう。CEOと社長が別人であれば、エレクトロニクスの現場は社長を見て動き、全社の資源配分はCEOが決める。両者の間に議論の余地が残るかぎり、機構改革の決定が現場へ届くまでには一段の翻訳が挟まる。エレクトロニクスとゲームを一つに統合し、生産から販売までを横断機能へ移す設計は、その翻訳を許さない構造を前提にしていた。社長職の兼務は、その前提を人事の側から担保する措置だったのだろう。
もっとも、肩書きを足して縮められるのは距離であって、損益ではない。2010年3月期に営業利益317億円で黒字を回復したあとも、当期純損益は3期続けて赤字となり、2012年3月期の損失は4,566億円に達した。テレビとパネル調達の構造は一本化された指揮系統のもとでも解けず、体制そのものが2012年4月に平井一夫氏へ引き継がれている。ソニーが次に取った手は、権限を集めることではなく、事業そのものを売却することだった。