ロート製薬 杉本雅史氏が社長就任 創業家が会長として代表権を残し、執行を武田出身の社外人材へ委ねた交代
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何をなぜ決めたか
- 概要
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2018年8月に山田邦雄氏が取締役会長兼社長に就任して社長を兼ね、その空白を埋める形で2019年6月、武田薬品出身の杉本雅史氏が代表取締役社長に就任した。同社初の社外出身社長にあたる。
山田邦雄氏は代表取締役会長として代表権を残し、代表取締役は会長と社長の2名となった。就任時の杉本雅史氏の所有株式数は「―」で、1,972千株を持つ会長との差は明白である。所有と象徴を創業家が担い、執行を外部の経営者へ委ねる体制へ移した判断だった。
- 背景
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1899年創業のロート製薬は山田家の同族経営を120年続け、外部資本に縛られない独立した判断で多角化を重ねてきた。非創業家ながら生え抜きの吉野俊昭社長が経営を預かっていたが、2018年に急逝し、山田邦雄氏の会長兼社長への復帰は緊急避難の色が濃かった。2009年6月から会長を務めてきた人物が9年ぶりに執行の座へ戻った形で、再生医療や食・農まで広げた事業を担う後継は課題として残っていた。
- 内容
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杉本雅史氏は1984年4月に武田薬品工業へ入社し、2009年10月にヘルスケアカンパニープレジデント、2017年4月に武田コンシューマーヘルスケアの代表取締役社長に就任した人物である。2018年6月に同社を退社し、2019年1月にロート製薬へ戦略アドバイザーとして入社した。社長就任の5か月前にあたる。
就任翌日の2019年6月27日、取締役会は報酬・指名等諮問委員会を廃止し、指名委員会と報酬委員会を新設した。指名委員会は取締役3名のうち社外取締役2名で構成し、代表取締役の選定・解職議案の原案を策定する。
- 含意
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交代を境に取締役会の姿も変わった。2018年3月期に13名・社外2名だった取締役会は、2019年3月期に12名・社外3名、2020年3月期には9名・社外3名まで絞られ、2024年3月期には13名・社外5名へ広がる。人数を減らして社外を増やし、次いで多様な社外を加える順序である。業績は2019年3月期の売上高1,835億円・営業利益208億円から2024年3月期の2,708億円・400億円へ伸びた。選択と集中が主流の製薬業界にあって、主力事業を増やす路線を外部の経営者に託した選択が形になった。
いつ何が起きたか 9件
筆者の見解
同族の設計と、その現代化
この承継の核心は、社長の急逝という偶発に対処したことよりも、創業120年の同族企業が、独立性を保ったまま執行だけを外部へ開いた点にあるだろう。1949年の株式会社化で敷かれた、外部資本を抑える資本の設計は、他社の顔色をうかがわずに副業解禁や再生医療といった逆張りの多角化を可能にしてきた。その独立性は創業家がトップに座ることで担保されてきた面が大きい。所有株式数が「―」の社長と1,972千株を持つ会長という組み合わせは、所有は手放さず執行だけを専門家へ委ねるという、次の形を試したことの現れだろう。
もっとも、外部から迎えた経営者に規律を託すだけでは足りなかった。就任翌日に諮問委員会を指名委員会と報酬委員会へ組み替え、代表取締役の選定・解職議案の原案策定を社外過半の委員会に持たせたことは、次の交代を属人的な判断から外す仕掛けである。取締役会が13名から9名まで絞られ、社外が2名から5名へ増えていく流れも同じ方向を向く。同族企業が規模と多角化に見合う規律をどこで身につけるのかという問いに、ロート製薬は「創業家が代表権を残したまま、選ぶ手続きのほうを外部に開く」という答えを置いたのだと思われる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
交代の経緯と対応
交代の経緯と対応
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 会長による社長兼務の開始 | 2018年8月 | 山田邦雄氏が取締役会長兼社長に就任。2009年6月から会長を務めていた |
| 招聘前の在籍 | 武田薬品工業(1984年4月入社) | 2009年10月にヘルスケアカンパニープレジデント |
| 招聘前の直近の役職 | 武田コンシューマーヘルスケア 代表取締役社長 | 2017年4月に就任し、2018年6月に退社した |
| 入社 | 2019年1月 | 戦略アドバイザーとして入社。社長就任の5か月前にあたる |
| 社長就任 | 2019年6月 | 代表取締役社長に就任。代表取締役は会長と社長の2名となった |
| 取締役の任期 | 1年 | 2019年3月期に係る定時株主総会終結の時から2020年3月期に係る定時株主総会終結の時まで |
| 就任時の所有株式数 | ― | 代表取締役会長の山田邦雄氏は1,972千株を所有 |
| 創業家出身の会長の役職 | 代表取締役会長 | 2018年3月期の役員一覧では代表取締役会長最高経営責任者(CEO) |
| 指名委員会の設置 | 2019年6月27日 | 取締役会決議で報酬・指名等諮問委員会を廃止し、指名委員会と報酬委員会を設置 |
| 指名委員会の構成 | 取締役3名(うち社外取締役2名) | 委員は社外取締役の松永真理氏・鳥井信吾氏と山田邦雄氏。委員長は鳥井信吾氏 |
| 指名委員会の権限 | 代表取締役の選定・解職議案の原案策定 | 取締役選任・解任議案、取締役の役位に関する議案の原案も策定し取締役会へ提案 |
| 交代時の取締役会 | 12名(うち社外取締役3名) | 2018年3月期は13名・社外2名。2020年3月期には9名・社外3名へ |
出所:ロート製薬 有価証券報告書 第83期(2019年3月期)【役員の状況】【コーポレート・ガバナンスの状況等】
取締役会の構成の推移
ロート製薬:取締役会の構成の推移
| (名) | 取締役 | うち社外取締役 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2014年3月期 | 12 | 2 | 各期の有価証券報告書提出日現在の員数。役員一覧から監査役4名を除いた数 |
| 2015年3月期 | 12 | 2 | |
| 2016年3月期 | 11 | 2 | |
| 2017年3月期 | 11 | 2 | |
| 2018年3月期 | 13 | 2 | |
| 2019年3月期 | 12 | 3 | 杉本雅史氏が代表取締役社長に就任。社外取締役は2名から3名へ |
| 2020年3月期 | 9 | 3 | 取締役を12名から9名へ絞った |
| 2021年3月期 | 9 | 3 | |
| 2022年3月期 | 11 | 4 | |
| 2023年3月期 | 11 | 4 | |
| 2024年3月期 | 13 | 5 | 社外取締役は交代前の2名から5名へ |
出所:ロート製薬 有価証券報告書 第78〜88期【役員の状況】【コーポレート・ガバナンスの状況等】
売上高と営業利益の推移
ロート製薬:売上高と営業利益の推移
| (百万円) | 売上高 | 営業利益 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2014年3月期 | 143,822 | 16,821 | |
| 2015年3月期 | 151,774 | 13,159 | |
| 2016年3月期 | 167,016 | 15,683 | |
| 2017年3月期 | 154,599 | 15,451 | |
| 2018年3月期 | 171,742 | 19,087 | |
| 2019年3月期 | 183,582 | 20,812 | 業績連動報酬に係る指標の目標19,500に対する実績が20,812 |
| 2020年3月期 | 188,327 | 23,085 | |
| 2021年3月期 | 181,287 | 22,990 | |
| 2022年3月期 | 199,646 | 29,015 | |
| 2023年3月期 | 238,664 | 33,959 | |
| 2024年3月期 | 270,840 | 40,048 |
出所:ロート製薬 有価証券報告書 第78〜88期(連結損益計算書)
同じ問いに直面した会社
参考文献
- ロート製薬 ニュースリリース(2016年6月14日)「兼業解禁!会社の枠を超えた新しい働き方、ロート製薬の『社外チャレンジワーク』スタートします」
- ロート製薬 有価証券報告書「第83期(2019年3月期)【役員の状況】【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
- ロート製薬 有価証券報告書「第84期(2020年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
- ロート製薬 有価証券報告書「第78〜88期【役員の状況】」