ソニー ソニーFGをスピンオフ 株式の一部を残したままの分離と再上場という、部分的な切り出し

更新:

時期 2025年5月
当時の社長 十時裕樹
論点 金融事業の分離と資本効率
何をなぜ決めたか
概要

2025年10月1日、ソニーグループが金融事業を営む完全子会社ソニーフィナンシャルグループ(SFGI)をパーシャル・スピンオフで分離した。保有するSFGI普通株式の80%超を株主へ現物配当により分配し、同日、現物配当の効力発生をもって実行が完了した。SFGI株式は実行に先立ち2025年9月29日に東京証券取引所プライム市場へ上場している。

分離後にソニーグループが持つSFGI株式の持分比率は16.4%で、所有株式数は1,172,218,284株。SFGIは連結子会社から外れ、持分法適用の関連会社となった。

背景

金融は1979年8月、米The Prudential Insurance Co. of Americaとの合弁でソニー・プルーデンシャル生命保険を設立して始めた事業である。2004年4月に持株会社ソニーフィナンシャルホールディングスを設け、2007年10月に東京証券取引所市場第一部へ上場させたが、2020年9月には普通株式と新株予約権の全てを3,967億円で取得して完全子会社化した。

ただし金融分野の資産は2025年3月末で21兆728億円あり、連結総資産35兆2,931億円の6割を占めていた。金融分野の子会社とそれ以外のグループ会社の間で資金を貸借することは厳格に制限されており、規模の大きさが利益や資金の融通に直結する構造ではなかった。

内容

検討開始を公表したのは2023年5月18日の経営方針説明会で、2024年2月13日には経済産業大臣から産業競争力強化法にもとづく事業再編計画の認定を得た。2025年5月14日の取締役会で実行方針を決議し、同日以降、第五次中期経営計画の経営数値目標も継続事業ベースの営業利益へ置き換えている。

十時裕樹社長は 『パーシャル・スピンオフは、スピンオフをする側にとってもされる側にとっても、互いの将来の成長のために必要であると判断したものである』 と、分離が双方のための選択であることを説明した。実行は東京証券取引所からの上場承認その他の関係当局の承認や認定の取得を前提としており、8月8日に上場本申請、9月8日に上場承認を得て9月29日の上場に至った。

含意

2025年5月14日の方針決議にともない、2025年度第1四半期からIFRS第5号に従って金融事業を非継続事業に分類し、資産と負債を所有者分配目的で保有する処分グループへ移した。実行時には金融事業で計上された累積その他の包括利益の残高を非継続事業からの純損益へ振り替え、2025年度に約1兆4,000億円の損失を計上する見込みとなった。

この振替は資本の部における内訳項目の移動で、資本合計とキャッシュ・フローへの影響はなく、継続事業の損益にも影響しない。連結総資産は35兆2,931億円から15兆6,834億円へ落ち、ソニーグループの株主に帰属する当期純損益は3,268億円の損失となった。

いつ何が起きたか 9件
筆者の見解
筆者の見解

46年の弧が閉じ、二つの会社が身軽になる

この分離は事業の切り離しであるより、貸借対照表の切り離しだったとみられる。2025年3月末の金融分野の資産は21兆728億円で、連結総資産35兆2,931億円の6割を占めていた。しかも金融分野の子会社とそれ以外のグループ会社の間で資金を貸借することは厳格に制限されており、その巨大な資産はグループの他の事業が使えるものではなかった。1979年に本業の脆さを補う保険として始めた金融は、利益の面ではたしかに支えになったが、規模の面では連結の見え方を歪ませ続けた。その歪みを外したことが、この判断の実体だろう。

もっとも、外すための代償は小さくない。実行時に累積その他の包括利益の残高を損失へ振り替えたため、2025年度に約1兆4,000億円の損失が非継続事業からの純損益に立ち、ソニーグループの株主に帰属する当期純損益は3,268億円の損失に転じた。資本合計とキャッシュ・フローへの影響はなく、継続事業の損益も動かない振替ではあるが、46年間の含み損益をひと息に損益計算書へ通したという事実は残る。手元に残した16.4%の持分と、実行後もSFGIが使い続けるソニーブランドが、切り離した先とのつながりをどこまで価値に変えられるか。二つの会社の答えは、これから出る。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
分離の条件

分離の条件

科目 概要 備考
分離した事業 金融事業 完全子会社ソニーフィナンシャルグループ(SFGI)と、その傘下のソニー生命・ソニー損保・ソニー銀行
分離の法的形式 パーシャル・スピンオフ 保有するSFGI普通株式を当社株主へ現物配当により分配する方法
検討開始の公表 2023年5月18日 ソニーグループ経営方針説明会で検討開始を発表した
事業再編計画の認定 2024年2月13日 経済産業大臣より産業競争力強化法にもとづき取得
実行方針の決議日 2025年5月14日 2025年10月1日付での実行を9月初旬の取締役会に付議する方針を決定した日
分配したSFGI株式 保有株式の80%超 2025年5月14日時点の開示。実行後の持分比率は20%未満とした
SFGI株式の上場 2025年9月29日 8月8日に上場本申請、9月8日に上場承認。東京証券取引所プライム市場
実行完了日 2025年10月1日 現物配当の効力が発生し、金融事業に対する支配の喪失にともなう連結除外を行った
分離後の持分比率 16.4% 所有株式数は1,172,218,284株。連結子会社から外れ持分法適用の関連会社となった
分離した事業の資産 21兆728億円 2025年3月末のSFGIの総資産の帳簿価額。負債の帳簿価額は19兆9,999億円
会計上の分類 非継続事業 2025年度第1四半期よりIFRS第5号を適用。資産負債は所有者分配目的保有へ
資本から減額する額 現物配当するSFGI株式の公正価値相当額 IFRIC解釈指針第17号に従い資本から減額し、負債として計上する
純損益へ振り替えた累積その他の包括利益 約1兆4,000億円の損失 2025年度に計上する見込みの概算値。資本合計とキャッシュ・フローへの影響はない
実行の前提 上場承認と関係当局の承認等 東京証券取引所からの上場承認その他の認定・許認可の取得を前提とした
税制適格要件の充足 保証されていないと開示 第107期時点。ADR保有者との関係で必要な手続とともに検討事項に挙げた
ブランドの取り扱い ソニーブランドの継続使用が可能 実行後も事業間連携を通じて金融事業のブランド価値の向上をめざす
1株当たり配当金への算入 含めない 2025年度の年間配当25円の予定額に、SFGI株式の現物配当は含まれない

出所:ソニーグループ 有価証券報告書 第107期(2024年3月期)・第108期(2025年3月期)【重要な後発事象】【事業等のリスク】【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 / 臨時報告書(2025年10月1日) / ソニーフィナンシャルグループ 中間期ディスクロージャー誌2025・IR説明会資料(2025年12月1日)

金融分野が占めた資産と連結の総資産

ソニー:金融分野が占めた資産と連結の総資産

(百万円) 金融分野の資産金融分野を除く資産連結の総資産 備考
2021年3月期 19,339,5178,919,31527,507,843 IFRS適用初年度の第105期に前期として再表示された数値
2022年3月期 20,974,02710,238,95830,480,967 IFRS第17号「保険契約」の適用前に開示した当初の数値
2022年3月期 20,145,01510,238,95829,651,955 IFRS第17号にもとづき修正再表示した数値
2023年3月期 19,912,82711,950,13431,154,095
2024年3月期 20,877,12813,888,42134,107,490
2025年3月期 21,072,82814,851,41535,293,173 金融分野が連結総資産の6割。SFGIの負債の帳簿価額は19兆9,999億円
2026年3月期 −−15,683,490 10月1日の連結除外で金融分野が消え、総資産は前期末比19兆6,097億円の減少
連結の総資産と金融分野が占めた割合
連結の総資産(百万円)金融分野の資産率(%)

出所:ソニーグループ 有価証券報告書 第105期(2022年3月期)・第107期(2024年3月期)・第108期(2025年3月期)【セグメント情報】 / ソニーグループ 2025年度(2026年3月期)通期連結業績(連結財政状態計算書)

分離した金融分野の業績

ソニー:分離した金融分野の業績

(百万円) 金融ビジネス収入営業利益 備考
2021年3月期 1,674,002154,765 第105期に前期として再表示された金融分野の主要経営数値
2022年3月期 1,533,829150,111
2023年3月期 1,454,546223,935 IFRS第17号の適用前に開示した当初の数値
2023年3月期 889,082318,118 IFRS第17号にもとづき修正再表示した数値
2024年3月期 1,769,954173,576 ソニー生命の特別勘定の運用益が増え、収入は前年度比8,809億円の増加
2025年3月期 931,400130,528 ソニー生命の減収により、収入は前年度比8,386億円の減少
金融ビジネス収入
金融ビジネス収入(百万円)

出所:ソニーグループ 有価証券報告書 第105〜108期(2022年3月期〜2025年3月期)【セグメント情報】金融分野の主要経営数値

当社株主に帰属する資本と当期純損益

ソニー:当社株主に帰属する資本と当期純損益

(百万円) 当社株主に帰属する資本当社株主に帰属する当期純利益(損失) 備考
2021年3月期 6,680,3431,029,610
2022年3月期 7,144,471882,178
2023年3月期 6,598,5371,005,277
2024年3月期 7,587,177970,573
2025年3月期 8,179,7451,141,600
2026年3月期 −△326,865 累積その他の包括利益の振替で純損益は損失に転じた。資本への影響はない

出所:ソニーグループ 有価証券報告書 第108期(2025年3月期)【主要な経営指標等の推移】 / ソニーグループ 2025年度(2026年3月期)通期連結業績(連結損益計算書)

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参考文献
出典・参考

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