ホンダとEV合弁を設立(2022年・ソニーの決断)

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論点 モビリティーへ合弁で参入するか
ソニー:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
連結対象外とした折半出資の合弁への技術の持ち込みと、モビリティへの踏み出し

何をなぜ決めたか:連結対象外とした折半出資の合弁への技術の持ち込みと、モビリティへの踏み出し

概要

2022年3月に本田技研工業との戦略的提携の協議に入り、同年9月にモビリティ分野の合弁会社ソニー・ホンダモビリティを設立した。出資比率はソニーが50%で、連結子会社ではなく持分法適用会社として扱う。

掲げたのは2025年のEVの販売開始である。「セーフティ」「エンタテインメント」「アダプタビリティ」の3領域からモビリティの進化に貢献するという枠組みを置き、車という移動空間を感動空間の拡張先の一つに数えた。

背景

モビリティへの接近は合弁の2年前から始まっていた。2020年1月のCES 2020で、安心・安全から快適さやエンタテインメントまでを追求する取り組みとして「VISION-S」を発表し、試作車を展示している。イメージング・センシング技術、各シートに内蔵したスピーカーによる「360 Reality Audio」、パノラミックスクリーン、車載ソフトウェアを組み合わせた提案であった。

試作車は欧州で走行テストに入り、2021年度にはドイツのテストコースで5G走行試験を開始する。センシングとAIの技術はADASで重要な役割を果たしており、CMOSイメージセンサーの延長線上にモビリティがあった。

内容

ソニーが担うのは技術の提供である。合弁の新ブランド「AFEELA」の開発車両へ、イメージング・センシング、エンタテインメント、5Gを含む通信・ネットワークの領域から技術を出す。合弁そのものは連結の外に置かれ、持分法で会計処理される。

体制も両社が別に立てた。ホンダは2022年3月期に専務執行役員の担当として「ソニーJV準備室」を置き、水野泰秀氏が就任した。ソニーは2023年度から執行役副社長CSOの担当にモビリティ事業を加え、御供俊元氏が担っている。

含意

折半出資と持分法という形は、完成車を自ら量産する重さを負わずに自社の技術を載せる車を確保する組み方であった。ただし損益は連結の外へ逃げない。共同支配企業への投資は2022年3月期末の328億円から2024年3月期末の601億円へ積み上がり、取込損益は2022年度の18億円の利益から2023年度92億円、2024年度275億円の損失へ振れた。

その他分野の営業損益も2024年度は180億円の損失となり、悪化の主因は持分法による投資損益であった。量産前の開発段階に固有の負担が、持分法を通じて営業利益に直に効いている。

いつ何が起きたか 7件
当時の取締役 13名

当時の取締役(2021年6月株主総会決議)

  • 吉田憲一郎:取締役
  • 十時裕樹:取締役
  • 隅修三:取締役会議長
  • TimSchaaff:取締役
  • 岡俊子:取締役
  • 秋山咲恵:取締役
  • 畑中好彦:取締役
  • AdamCrozier:取締役
  • 岸上恵子:取締役
  • WendyBecker[ウェンディベッカー]:取締役
  • JosephA.KraftJr.[ジョセフクラフト]:取締役
  • TimSchaaff[ティムシャーフ]:取締役
  • AdamCrozier[アダムクロージア]:取締役
考察:裏方で収益を上げるという青写真の行方
考察

考察:裏方で収益を上げるという青写真の行方

この判断の核にあるのは、スマートフォンで掴んだ稼ぎ方をもう一度なぞろうとする発想であったと思われる。本体で覇権を握れずともイメージセンサーで世界を席巻したように、完成車で自動車大手と量を競うのではなく、技術とコンテンツを載せる車を確保する──折半出資と持分法という組み方は、その青写真を、量産の重さを連結の内側へ引き込まずに試すための形であった。ソニーが見ていたのは一台ごとの利益というより、車という移動空間へ自社の資産をどう浸透させるかであったのだろう。

もっとも、連結の外に置いても損は逃げない。共同支配企業の取込損益は2024年度に275億円の損失まで振れ、その他分野の営業損益を180億円の損失へ押し下げた。持分法による投資損益を営業利益の前に置くという表示方針が、合弁の開発段階の負担をそのまま本業の利益へ通している。AFEELAの量産と販売はなお進行中で、裏方で稼ぐ絵図が成り立つかは、まず完成車そのものが受け入れられるかにかかっている。移動空間を感動空間の拡張先に数えるという構想が、どこまで形になるのかはこれから問われていくのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る 3表

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図と表

ソニー:持分法で会計処理されている投資と共同支配企業の取込損益

関連会社(百万円)うち共同支配企業(百万円)共同支配企業の取込損益率(%)
ソニー:持分法で会計処理されている投資と共同支配企業の取込損益
(百万円) 持分法で会計処理されている投資うち共同支配企業共同支配企業の取込損益 備考
2020年3月期 204,29122,496− IFRS移行日(2020年4月1日)の残高。この日より前の期間は組み替えていない
2021年3月期 225,08626,547△2,535 2020年度までは米国会計基準。IFRS移行にともなう組替後の数値
2022年3月期 268,51332,8421,726 3月にホンダとの戦略的提携の協議に入った。合弁の設立は翌期
2023年3月期 325,22045,5801,812 9月にソニー・ホンダモビリティを設立。ソニーの出資比率は50%
2024年3月期 423,74460,133△9,225
2025年3月期 347,71844,397△27,547
出所:ソニーグループ 有価証券報告書 2021年度・2022年度・2024年度(連結財務諸表注記『関連会社及び共同支配企業に対する投資』)
出所:ソニーグループ 有価証券報告書 2021年度・2022年度・2024年度(連結財務諸表注記『関連会社及び共同支配企業に対する投資』)

ソニー:その他分野の営業損益と全社の持分法による投資損益

ソニー:その他分野の営業損益と全社の持分法による投資損益
(百万円) その他分野の営業損益持分法による投資利益(損失) 備考
2021年3月期 7,17811,551 2020年度までは米国会計基準。IFRS移行にともなう組替後の数値
2022年3月期 17,98123,646
2023年3月期 16,84924,449
2024年3月期 1,60010,502 営業利益の152億円減は主に持分法による投資利益の減少による
2025年3月期 △17,996△7,801 損益悪化は主に持分法による投資損益の悪化による
出所:ソニーグループ 有価証券報告書 2022年度・2024年度(連結損益計算書、分野別概況)
出所:ソニーグループ 有価証券報告書 2022年度・2024年度(連結損益計算書、分野別概況)

合弁の条件

合弁の条件
科目 概要 備考
提携相手 本田技研工業株式会社 モビリティ分野での戦略的提携。2022年3月に協議へ入った
合弁会社 ソニー・ホンダモビリティ株式会社
設立 2022年9月
出資比率 ソニー50% 沿革の記載はソニーの出資比率のみで、間接所有の内訳は開示されていない
会計上の取扱い 持分法適用会社 個々に重要性のある関連会社及び共同支配企業はないとされ、社名を挙げた開示はない
提携の対象範囲 セーフティ、エンタテインメント、アダプタビリティ モビリティの進化に貢献する3領域として掲げた
掲げた目標 2025年のEVの販売開始 2021年度時点の目標
ソニーからの技術提供 AFEELA開発車両 イメージング・センシング、エンタテインメント、5Gを含む通信・ネットワークの領域
相手方の推進体制 専務執行役員が「ソニーJV準備室」を担当 本田技研工業の2022年3月期の執行役員体制。水野泰秀氏が就いた
自社の推進体制 執行役副社長CSOがモビリティ事業を担当 2023年度から御供俊元氏の担当に加わった
出所:ソニーグループ 有価証券報告書 2021年度・2022年度・2023年度【沿革】【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【研究開発活動】【役員の状況】、本田技研工業 有価証券報告書 第98期(2022年3月期)【役員の状況】
出所:ソニーグループ 有価証券報告書 2021年度・2022年度・2023年度【沿革】【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【研究開発活動】【役員の状況】、本田技研工業 有価証券報告書 第98期(2022年3月期)【役員の状況】
当時の取締役 13名

当時の取締役(2021年6月株主総会決議)

  • 吉田憲一郎:取締役
  • 十時裕樹:取締役
  • 隅修三:取締役会議長
  • TimSchaaff:取締役
  • 岡俊子:取締役
  • 秋山咲恵:取締役
  • 畑中好彦:取締役
  • AdamCrozier:取締役
  • 岸上恵子:取締役
  • WendyBecker[ウェンディベッカー]:取締役
  • JosephA.KraftJr.[ジョセフクラフト]:取締役
  • TimSchaaff[ティムシャーフ]:取締役
  • AdamCrozier[アダムクロージア]:取締役
参考文献

参考文献

参考
  • ソニーグループ 有価証券報告書「2021年度【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【研究開発活動】」
  • ソニーグループ 有価証券報告書「2022年度【沿革】【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • ソニーグループ 有価証券報告書「2022年度・2024年度 連結財務諸表注記『関連会社及び共同支配企業に対する投資』」
  • ソニーグループ 有価証券報告書「2019年度【研究開発活動】」
  • ソニーグループ 統合報告書「Corporate Report 2024」
  • 本田技研工業 有価証券報告書「第98期(2022年3月期)【役員の状況】」

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