タカラトミーハロルド・ジョージ・メイ氏が社長就任:創業家が執行を外部のプロ経営者へ委ね、2年7か月で引き戻した社長人事

更新:

時期 2015年6月
当時の社長 富山幹太郎
論点 監視と執行の分離と、外部招聘トップの起用
概要

2015年6月、代表取締役副社長最高執行責任者のハロルド・ジョージ・メイ氏が代表取締役社長兼最高経営責任者に就任した。28年あまり社長を務めてきた富山幹太郎氏は代表取締役会長へ退いている。役職変更の目的に掲げたのは、経営監視機能と経営執行機能を明確に分離してガバナンスの実効性を確保するとともに、迅速な意思決定を行い機動的な業務執行を実現することであった。

メイ氏は日本コカ・コーラ副社長などを経て2014年3月に経営顧問として招かれ、同年6月に代表取締役副社長へ上がっている。社長在任は2017年12月31日の辞任まで2年7か月だった。

背景

招いた時点の業績は下り坂にあった。売上高は2012年3月期の1,872億円から2015年3月期には1,499億円まで落ち、2013年3月期に71億円、2015年3月期に18億円の最終赤字を計上している。

とりわけ重かったのが欧米豪を担うTOMY Internationalグループで、業績は厳しい状況が続いていた。海外事業統括本部長として招かれたメイ氏の職掌はこの立て直しにあり、社長就任はその延長線上に置かれた。

内容

就任3か月後の2015年9月15日、メイ氏はTOMY Holdings, Inc.の最高経営責任者を兼ね、グループ全体の経営指揮を執る体制が敷かれた。あわせて欧米豪の経営管理を現地から本社主導へ移し、アメリカズ・欧州・オセアニアを直接管理する形に変えている。事業計画の見直しに伴い、2016年3月期第3四半期にのれんと無形固定資産の一部を減損し、特別損失85億円、最終赤字67億円を計上した。

国内では定番・新規・ビッグベット・おもちゃ4.0の4群へ商品を整理し、ベイブレードバーストを投入。2018年3月期には売上高1,773億円・経常利益124億円まで戻した。

含意

転機は2017年6月だった。最高経営責任者の呼称が富山幹太郎会長へ戻り、メイ氏は代表取締役社長のみとなる。同時に小島一洋氏が代表取締役副社長最高執行責任者兼最高財務責任者へ上がった。半年後の2017年12月31日にメイ氏が辞任し、翌2018年1月に小島一洋氏が代表取締役社長最高執行責任者に就任している。

辞任の理由は会社の公表資料に記載がない。連結報酬等の総額は2017年3月期が121百万円、2018年3月期が131百万円で、いずれも1億円以上の個別開示対象だった。

筆者の見解

執行を預けるという選択

この人事の芯は、外国人を社長に据えたことではなく、創業家が執行の一切を外部へ預けたことにある。28年あまり社長の座にあった富山幹太郎氏が会長へ退き、入社からわずか1年3か月の人物へ社長と最高経営責任者を同時に渡した。掲げた理由は監視と執行の分離だが、実質はTOMY Internationalグループの立て直しを職掌ごと託す判断だったとみられる。海外事業統括本部長として招いた人物をそのまま全社の長へ押し上げた運びからは、その意図が読み取れる。

もっとも、預けた執行は最後まで預けられたわけではなかった。2017年6月に最高経営責任者の呼称が会長へ戻った時点で、権限の重心は創業家側へ傾き直している。その半年後の辞任と、2018年1月の小島一洋氏の昇格をあわせて見れば、この2年7か月は経営の恒久的な移譲ではなく、業績の谷を越えるための一時の委任だったのではないか。売上高は2018年3月期に1,773億円まで戻り、経常利益は124億円と就任前年の6倍になった。数字の上では託した仕事は果たされている。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

経緯と対応

科目 概要 備考
経営顧問として入社 2014年3月 日本コカ・コーラ副社長兼チーフ・カスタマー・オフィサーからの転身
最高執行責任者就任 2014年4月 海外事業統括本部長を兼務。同年6月に代表取締役副社長へ
社長就任 2015年6月 代表取締役社長兼最高経営責任者。富山幹太郎氏は代表取締役会長へ退いた
役職変更の目的 経営監視機能と経営執行機能の明確な分離 ガバナンスの実効性の確保と、迅速な意思決定・機動的な業務執行の実現を掲げた
前職 日本コカ・コーラ 副社長 ハイネケン・ジャパン、ニッポン・リーバ、サンスターを経て2006年から在籍
選任に関わる仕組み 取締役指名委員会 社外取締役・社外監査役などで構成する取締役会の諮問機関。評価・選任の方針を提言する
米国持株会社CEOの兼任 2015年9月15日 TOMY Holdings, Inc.の最高経営責任者を兼ね、欧米豪を本社の直接管理へ移した
連結報酬等(2017年3月期) 121百万円 基本報酬54、ストック・オプション9、賞与57。1億円以上の個別開示対象
連結報酬等(2018年3月期) 131百万円 基本報酬100、ストック・オプション30。辞任までの在任分
最高経営責任者の移動 2017年6月 富山幹太郎氏が代表取締役会長最高経営責任者に復し、メイ氏は代表取締役社長のみに
辞任 2017年12月31日 代表取締役社長を辞任した
社長在任 2年7か月 2015年6月の就任から2017年12月31日の辞任まで
後任 小島一洋氏 2018年1月に代表取締役社長最高執行責任者へ。前年6月に副社長COO兼CFOに就任していた
辞任の理由 会社の公表資料に記載がない 有価証券報告書は辞任の事実と日付だけを記している

出所:タカラトミー 有価証券報告書 第64期(2015年3月期)・第65期(2016年3月期)・第66期(2017年3月期)・第67期(2018年3月期)【業績等の概要】【役員の状況】【コーポレート・ガバナンスの状況等】

タカラトミー:連結業績の推移

(百万円) 売上高経常利益親会社株主に帰属する当期純利益 備考
2011年3月期 159,49010,1438,929
2012年3月期 187,2659,8233,679
2013年3月期 178,7452,622△7,173 2015年3月期より前は「当期純利益又は当期純損失」の名称で開示している
2014年3月期 154,8043,300232
2015年3月期 149,9382,014△1,817 メイ氏は代表取締役副社長最高執行責任者としてこの期を務めた
2016年3月期 163,0671,459△6,703 2015年6月に社長就任。第3四半期にのれん等を減損し特別損失8,522を計上した
2017年3月期 167,6617,8235,372
2018年3月期 177,36612,4207,962 2017年12月31日に辞任。売上高・経常利益ともに就任前を大きく上回った
2019年3月期 176,85314,3039,302
2020年3月期 164,83710,2044,507
2021年3月期 141,2187,1705,374
売上高と最終利益率
売上高(百万円)親会社株主に帰属する当期純利益率(%)

出所:タカラトミー 有価証券報告書 第60〜70期(主要な経営指標等の推移)

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出典・参考
  • タカラトミー 有価証券報告書「第65期(2016年3月期)【業績等の概要】」
  • タカラトミー 有価証券報告書「第65期(2016年3月期)【役員の状況】」
  • タカラトミー 有価証券報告書「第66期(2017年3月期)【役員の状況】【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • タカラトミー 有価証券報告書「第67期(2018年3月期)【役員の状況】【コーポレート・ガバナンスの状況等】」

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