氏家俊明氏が社長就任(2021年・タダノの決断)

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論点創業家以外から社長を起用するか
タダノ:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
創業家以外から初めてトップを迎え入れる方式での経営の引き継ぎ

何をなぜ決めたか:創業家以外から初めてトップを迎え入れる方式での経営の引き継ぎ

概要

2021年4月1日、タダノは氏家俊明氏を代表取締役社長・CEOに据えた。1948年に多田野鉄工所として設立されて以来、社長の座が創業家の多田野家を離れたのは初めてで、新社長は2019年4月に企画管理部門付顧問として入社したばかりだった。入社から2年のあいだに取締役、代表取締役副社長、社長と上がっている。2003年6月から社長を務めてきた多田野宏一氏は、代表権のある会長へ就任した。

背景

2019年7月にデマーグブランドのクレーン事業の買収を完了し、8社の株式取得と11社の事業譲受を引き受けた。連結従業員数は2019年3月期の3,405名から5,084名へ増加したが、欧州セグメントは2018年3月期から営業損失が続いた。2020年10月8日にはドイツ子会社のタダノ・デマーグGmbHとタダノ・ファウンGmbHが現地法に基づく事業再生手続きに入り、その費用2,827百万円を含めて2021年3月期は12,987百万円の当期純損失となった。

内容

新社長は1984年に丸紅へ入り、建設機械部長、経営企画部長を経て、2018年4月に常務執行役員・輸送機グループCEOを務めた人物である。前任の多田野宏一氏も1977年に丸紅へ入社し、1988年にタダノへ移っていた。創業家から外部へという移り方であると同時に、商社出身者から商社出身者への引き継ぎでもあった。

交代と同じ2021年4月、2020年4月に置いた任意の指名諮問委員会が指名報酬諮問委員会へ改編され、後継者計画が諮問事項に加わった。氏家俊明社長は就任にあたり、前社長から何度か言われた言葉として『Innovationを起こすのは若者・馬鹿者・よそ者である』を挙げている。

含意

就任後の仕事は事業から撤退することから始まった。2022年12月期にインド市場向け製品の開発・製造を中止して1,216百万円を特別損失に計上し、2023年12月期には北起多田野(北京)起重機有限公司を清算、2025年にはバラシャイド工場を閉鎖してオールテレーンクレーンの生産を日本とドイツの各工場へ移した。決算期も3月から12月へ変え、第75期は9か月決算となっている。

一方で2024年2月の長野工業、2025年1月のマニテックス・インターナショナルほか14社、同年7月のIHI運搬機械の運搬システム事業と買収は続き、2025年12月期の売上高は349,477百万円と過去最高になった。欧州セグメントの営業損失は2018年3月期から9期続いている。

いつ何が起きたか8件
当時の取締役6名

当時の取締役(2020年6月株主総会決議)

考察:よそ者を呼んだ側と、呼ばれた側
考察

考察:よそ者を呼んだ側と、呼ばれた側

創業家から外部へ、と要約すると見落とすものがある。渡した多田野宏一氏自身が1977年に丸紅へ入り、1988年にタダノへ移ってきた人であった。同じ商社から来て創業家の名を負った当主が、同じ商社から来た11年後輩へ渡した形になる。創業家の継承を打ち切る判断というより、買った会社を一つにまとめる仕事に、社内で育った言葉では届かないという見立てが先にあったのだと推察される。経営を渡した年の当期純損失は12,987百万円で、リーマンショック後の2011年3月期に出した6,722百万円を上回っていた。

もっとも、託された仕事の中身は撤退することと買うことの両方であった。インドの開発を止め、北京の合弁を清算し、ドイツではバラシャイド工場を閉鎖して小型機の生産を日本へ戻す一方、長野工業とマニテックス・インターナショナル、IHI運搬機械の運搬システム事業を相次いで取得している。2025年12月期の売上高は349,477百万円と過去最高になった。ただし欧州セグメントの営業損失は2018年3月期から9期続いており、直近期の△3,278百万円まで縮んではいても黒字には届いていない。外から来た人に何を期待したのかは、その一点で測られることになる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る3表

数字で見る

図と表

タダノ:欧州・日本・米州のセグメント損益

欧州売上高(百万円)欧州営業損益率(%)
タダノ:欧州・日本・米州のセグメント損益
(百万円)欧州売上高欧州営業損益日本営業損益米州営業損益備考
2016年3月期24,3381,37427,9682,212
2017年3月期21,50486916,104△64
2018年3月期17,425△27715,572△244欧州の営業損益がこの期から損失に転じる
2019年3月期21,870△1,12315,7231,529
2020年3月期32,074△6,37617,0483,7192019年7月にデマーグブランドのクレーン事業を取得
2021年3月期33,393△12,5578,272△238ドイツ子会社2社が事業再生手続きへ。社長交代を決めた期
2022年3月期36,986△9,48912,2411,664
2022年12月期36,467△9,9499,7755,048決算期変更により2022年4月から12月までの9か月決算
2023年12月期43,834△13,83426,2027,101
2024年12月期32,404△11,52627,1816,481
2025年12月期44,539△3,27820,1692,515バラシャイド工場を閉鎖し、生産を日本とドイツの各工場へ移管
出所:タダノ 有価証券報告書 第68〜78期【セグメント情報等】
出所:タダノ 有価証券報告書 第68〜78期【セグメント情報等】

タダノ:連結の業績

売上高(百万円)営業利益率(%)
タダノ:連結の業績
(百万円)売上高営業利益親会社株主に帰属する当期純利益備考
2016年3月期209,42631,06219,621
2017年3月期179,67618,48411,881
2018年3月期173,70315,5119,391
2019年3月期188,45115,83511,462
2020年3月期227,94913,9496,433
2021年3月期186,040△4,196△12,987欧州事業再生関連費用2,827百万円などを特別損失に計上
2022年3月期205,6615,25113,096
2022年12月期192,9327,1912,2109か月決算。インド事業再編関連損失1,216百万円を計上
2023年12月期280,26618,3497,773
2024年12月期291,50023,7786,642
2025年12月期349,47718,55218,298売上高は過去最高。連結従業員数は5,997名
出所:タダノ 有価証券報告書 第68〜78期【連結損益計算書】
出所:タダノ 有価証券報告書 第68〜78期【連結損益計算書】

交代の経緯と対応

交代の経緯と対応
科目概要備考
社長交代の実施2021年4月1日氏家俊明氏が代表取締役社長・CEOに就任した
新社長の前歴丸紅 常務執行役員・輸送機グループCEO1984年4月に丸紅入社。2009年建設機械部長、2013年経営企画部長、2014年執行役員
新社長の入社2019年4月企画管理部門付顧問として入社。社長就任までの在籍は2年
取締役就任2019年6月取締役、執行役員専務
代表取締役副社長就任2020年6月
新社長の任期2021年6月から1年取締役の任期は2005年より1年に短縮されている
前社長の処遇代表取締役会長多田野宏一氏。2003年6月から2021年3月まで代表取締役社長を務めた
前社長の前歴丸紅を経て1988年6月に入社1977年4月に丸紅入社。1997年ファウンGmbH取締役社長、2002年代表取締役
指名の枠組み指名報酬諮問委員会2020年4月に任意の指名諮問委員会を設置し、2021年4月に指名報酬諮問委員会へ改編
委員会の諮問事項指名・報酬・後継者計画取締役・監査役候補者と執行役員の指名、取締役の報酬、後継者計画を審議する
委員会の構成構成員の過半数が独立社外取締役委員長は代表取締役会長、委員に代表取締役社長と社外取締役4名・社外監査役1名
委員会の開催2021年度に7回
取締役会の体制変更議長とCEOの分掌社外取締役を3名から5名へ増やし、社内4名・社外5名の構成にした
出所:タダノ 有価証券報告書 第73期(2021年3月期)・第74期(2022年3月期)【役員の状況】【コーポレート・ガバナンスの状況等】、統合報告書2021
出所:タダノ 有価証券報告書 第73期(2021年3月期)・第74期(2022年3月期)【役員の状況】【コーポレート・ガバナンスの状況等】、統合報告書2021
当時の取締役6名

当時の取締役(2020年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • タダノ 有価証券報告書「第73期(2021年3月期)【役員の状況】【コーポレート・ガバナンスの状況等】【連結損益計算書関係】」
  • タダノ 有価証券報告書「第74期(2022年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • タダノ 有価証券報告書「第75期(2022年12月期)【連結損益計算書関係】」
  • タダノ 有価証券報告書「第76期(2023年12月期)【連結損益計算書関係】」
  • タダノ 有価証券報告書「第78期(2025年12月期)【沿革】【設備の状況】【従業員の状況】【セグメント情報等】」
  • タダノ 統合報告書「統合報告書2021」

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