ダイハツ・日野の認証不正対応(2024年・トヨタ自動車の決断)

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論点子会社の不正にどこまで踏み込むか
トヨタ自動車:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
グループ3社の不正を受けた開発・認証体制の引き取り2023年4月28日、ダイハツ工業が海外向け車両の側面衝突試験の認証申請における不正行為を公表した。2022年3月の日野自動車、続く豊田自動織機と合わせ、グループ3社で認証不正が重なった。2024年1月26日の国土交通省からの指示に基づく調査では、2014年以降、生産を終了した車種を含む7車種で国が定めた基準と異なる方法の試験が判明し、5月31日に報告している。

何をなぜ決めたか:グループ3社の不正を受けた開発・認証体制の引き取り

概要

2023年4月28日、ダイハツ工業が海外向け車両の側面衝突試験の認証申請における不正行為を公表した。2022年3月の日野自動車、続く豊田自動織機と合わせ、グループ3社で認証不正が重なった。2024年1月26日の国土交通省からの指示に基づく調査では、2014年以降、生産を終了した車種を含む7車種で国が定めた基準と異なる方法の試験が判明し、5月31日に報告している。

3社の不正に共通する真因を「経営と現場の乖離」と受け止め、小型車事業の開発から認証までを引き取る体制へ変えた。

背景

ダイハツ工業では、ダイハツ・ロッキーおよびトヨタ・ライズのHEV車のポール側面衝突試験に関する認証手続でも不正が判明し、認可対象国の該当車両の出荷・販売を停止した。日本での連結販売台数は2024年3月期に199万3千台と、前期から7万6千台減少している。

現場に過度なプレッシャーがかかり、余裕がなくなって風通しが悪くなった結果、遵法意識が薄れ、不正が日常化した。経営陣はそうした現場の実態を把握できておらず、不正を引き起こした環境を変えることができなかった。

内容

ダイハツ工業へは50名以上が入り、各国の法規や図面の見直しと再試験の対応を進めた。2023年12月の第三者委員会の調査報告以降は、ほぼ毎日、両社の経営メンバーが会議を開催している。小型車事業はトヨタからの委託に変え、リソーセス管理を含めて開発から認証までトヨタが責任を持つ体制とした。豊田自動織機からは自動車用エンジンの開発・認証を移管し、日野自動車は三菱ふそうトラック・バスとの経営統合で再建を進める。

自社では再発防止策14項目を定め、法規主監を約40名まで増員し、日当たり生産台数の上限を1万4,500台から1万4,000台へ下げた。

含意

2024年7月に国土交通省から認証業務に関する是正命令を受け、実地調査では、定められた手順から外れて処理された認証が7車種8事案あると指摘された。8月に再発防止報告書を提出し、以降は四半期報告として進捗を伝えている。

日野自動車のエンジンの認証問題にかかる損失は、2025年3月期に281,140百万円を売上原価と販売費及び一般管理費へ計上した。営業利益の減益要因としては2,805億円が示されている。認証問題の責任は会長・副会長・社長の評価に反映され、報酬が減額された。

いつ何が起きたか9件
当時の取締役10名

当時の取締役(2024年6月株主総会決議)

考察:引き取った責任の重さ
考察

考察:引き取った責任の重さ

この2年で引き受けたのは、子会社の不祥事の後始末ではなく、グループの分業そのものの組み替えだったと思われる。小型車をダイハツ工業に任せ、エンジンの一部を豊田自動織機に委ね、商用車を日野自動車に預ける分業体制は、親会社が商品企画の上流を握りながら、認証という出口の責任は各社に負わせる構造でもあった。その出口で3社が相次いで躓いたとき、選ばれたのは監督の強化ではなく、開発から認証までを自ら引き取ることだった。委託に変えるという言い方は穏やかだが、実質は小型車の責任を本体へ戻す判断である。

もっとも、引き取る側の本体にも余力があったわけではない。自社でも基準と異なる方法の試験が見つかり、是正命令まで受けている。日当たり生産台数の上限を1万4,500台から1万4,000台へ下げ、法規主監を増員したのは、仕事の量を減らさなければ正しい仕事が成り立たないという認識の表れだろう。グループ全体の認証を本体が担う以上、この余力づくりを続けられるかどうかが、再発防止の実効を決めることになる。

Yutaka Sugiura, 2026年9月
数字で見る3表

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図と表

トヨタ自動車:販売費及び一般管理費と営業利益の推移

販売費及び一般管理費(百万円)
トヨタ自動車:販売費及び一般管理費と営業利益の推移
(百万円)販売費及び一般管理費営業利益備考
2020年3月期2,981,9652,554,607
2021年3月期2,634,6252,197,748
2022年3月期2,975,9772,995,697
2023年3月期3,587,9902,725,025
2024年3月期4,015,3835,352,934ダイハツ工業と豊田自動織機の出荷停止の影響を受けた期
2025年3月期4,782,4524,795,586日野自動車の認証問題にかかる損失281,140百万円を売上原価と販管費に計上
2026年3月期4,697,5243,766,216前期に計上した日野自動車の認証不正関連費用の反動で販管費は849億円の減少
出所:トヨタ自動車 有価証券報告書 第117〜122期(連結損益計算書)
出所:トヨタ自動車 有価証券報告書 第117〜122期(連結損益計算書)

トヨタ自動車:日本での連結販売台数

日本での連結販売台数(千台)
トヨタ自動車:日本での連結販売台数
(千台)日本での連結販売台数備考
2020年3月期2,240
2021年3月期2,125
2022年3月期1,924
2023年3月期2,069
2024年3月期1,993ダイハツ工業と豊田自動織機の出荷停止の影響。前期から76千台の減少
2025年3月期1,991前期から2千台の減少。海外は7,372千台で78千台の減少
2026年3月期2,082前期から91千台の増加
出所:トヨタ自動車 有価証券報告書 第116〜122期(業績等の概要)
出所:トヨタ自動車 有価証券報告書 第116〜122期(業績等の概要)

経緯と対応

経緯と対応
科目概要備考
ダイハツ工業の公表2023年4月28日同社が開発した海外向け車両の側面衝突試験の認証申請における不正行為
追加で判明した不正ダイハツ・ロッキーおよびトヨタ・ライズHEV車のポール側面衝突試験に関する認証手続の不正
出荷・販売の停止認可対象国の該当車両審査機関・認証当局へ報告・相談の上で停止。社内再試験で基準の充足を確認した
第三者委員会の設置法律面および技術面の外部専門家全容解明と真因分析、組織の在り方と開発プロセスまでを対象とする再発防止策を委嘱
第三者委員会の調査報告2023年12月以降、ほぼ毎日、両社の経営メンバーが再発防止策と事業構造の見直しを協議
3社に共通する真因経営と現場の乖離過度なプレッシャーで余裕と風通しが失われ、遵法意識が薄れて不正が日常化した
ダイハツ工業への人員50名以上各国の法規や図面の見直し、再試験の対応を一緒に進めた
小型車事業の体制変更トヨタからの委託リソーセス管理を含め、開発から認証までトヨタが責任を持つ体制へ
豊田自動織機への対応自動車用エンジンの開発・認証を移管資本関係は子会社と異なるが、グループの一員として再発防止を支援する
日野自動車への対応三菱ふそうトラック・バスとの経営統合2023年5月に基本合意。ダイムラートラック社との連携を通じて再建を進める
国土交通省からの指示2024年1月26日型式指定申請に関する調査の指示
自社で判明した不正7車種5月31日に国土交通省へ報告した内容で、2014年以降の試験が国の基準から外れたやり方で行われていた
生産中の対象車種カローラフィールダー/アクシオ、ヤリスクロス歩行者・乗員保護試験でのデータ不備
生産終了した対象車種クラウン、アイシス、シエンタ、RX衝突試験等の試験方法の誤り
是正命令2024年7月国土交通省より認証業務に関する是正命令を受領した
実地調査での指摘7車種8事案定められた手順から外れて処理された認証
再発防止報告書の提出2024年8月国土交通省へ提出。以降は四半期報告として2回、進捗を報告している
再発防止策14項目短期の取り組みとして着実な実行を掲げた
法規主監の増員約40名認証の現場で何が起きているかを漏れなくつかめるよう、2線監査を強めた
生産台数の上限日当たり1万4,000台当初計画の1万4,500台から下げ、現場の余力をつくった
会議体の新設ガバナンス・リスク・コンプライアンス会議2024年6月に設置。認証問題や大規模災害のBCPなどの重要経営課題を審議する
子会社監査の拡充重点対象の子会社17社監査に充てる時間を従来の2倍以上へ延ばし、複数の角度から確かめた
役員報酬への反映会長・副会長・社長の報酬を減額評価項目「強固な経営基盤」に反映。取締役を兼務しない執行役員も同様
認証問題にかかる損失281,140百万円日野自動車のエンジンの認証問題。2025年3月期の売上原価と販管費に計上
営業利益への影響2,805億円日野自動車による認証不正問題の影響。2025年3月期の減益要因に含まれる
認証制度の改革2025年3月国土交通省と自動車メーカーによる官民協議会がキックオフした
出所:トヨタ自動車 有価証券報告書 第120期(2024年3月期)・第121期(2025年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【事業等のリスク】【偶発事象】
出所:トヨタ自動車 有価証券報告書 第120期(2024年3月期)・第121期(2025年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【事業等のリスク】【偶発事象】
当時の取締役10名

当時の取締役(2024年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • トヨタ自動車 有価証券報告書「第120期(2024年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • トヨタ自動車 有価証券報告書「第120期(2024年3月期)【事業等のリスク】」
  • トヨタ自動車 有価証券報告書「第121期(2025年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • トヨタ自動車 有価証券報告書「第121期(2025年3月期)【事業等のリスク】」
  • トヨタ自動車 有価証券報告書「第121期(2025年3月期)【偶発事象】」
  • トヨタ自動車 有価証券報告書「第121期(2025年3月期)【業績等の概要】」
  • トヨタ自動車 有価証券報告書「第122期(2026年3月期)【業績等の概要】」

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