トヨタ自動車東日本の新設(2011年・トヨタ自動車の決断)

更新:
論点 東北を自立した第3の生産拠点にするか
トヨタ自動車:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
他社との統合ではない完全子会社3社の1社への統合と、東北の国内第3の生産拠点化

何をなぜ決めたか:他社との統合ではない完全子会社3社の1社への統合と、東北の国内第3の生産拠点化

概要

2011年7月13日、トヨタ自動車が、東北に生産拠点を開設する系列子会社の関東自動車工業・セントラル自動車・トヨタ自動車東北の3社を統合し、関東自動車工業を存続会社として2012年7月1日にトヨタ自動車東日本を発足させると発表した経営判断。豊田章男社長のもとで進められた。

統合に先立つ2012年1月1日には、関東自動車工業の普通株式1株にトヨタの普通株式0.25株を割り当てる簡易株式交換を実施し、議決権比率を50.83%から100.00%へ引き上げている。他社との対等統合ではなく、完全子会社どうしを1社に統合する共通支配下の再編であった。

背景

トヨタは愛知を核に、九州を高級車、東北を小型車の生産拠点とする国内三極構想を進めていた。日本の車両生産台数は2007年3月期の5,100,823台から2011年3月期には3,721,351台まで減少し、1ドル70円台の円高と東日本大震災後の部品供給網の寸断が重なった。

統合の中核となる関東自動車工業も、東富士工場ほか主要な設備の帳簿価額が2007年3月期の136,034百万円から2012年3月期には90,081百万円へ縮んでいる。東北に分かれていた3社を1社にまとめ、小型車を一貫生産する体制の整備が急がれた。

内容

株式交換の取得原価は、同時に完全子会社化したトヨタ車体と合わせて79,902百万円。対価はトヨタの普通株式31,151,148株で、保有する自己株式を充当したため自己株式が125,819百万円減り、自己株式処分差損45,916百万円が発生した。共通支配下の取引等として処理しており、のれんは発生していない。

2012年7月1日、関東自動車工業がセントラル自動車とトヨタ自動車東北を吸収合併し、商号をトヨタ自動車東日本へ変更した。本店は神奈川県横須賀市から宮城県黒川郡へ移り、主要な設備も東富士工場ほかから宮城大衡工場ほかへ移っている。資本金は6,850百万円のままで、議決権比率は100.00%。

含意

統合の翌期、宮城大衡工場ほかの主要な設備は帳簿価額119,109百万円・従業員7,274人となり、統合前の関東自動車工業(90,081百万円・5,797人)から一段大きい拠点になった。日本の車両生産台数も2014年3月期には4,344,892台まで戻している。

ただし2016年3月期は3,980,576台で、2007年3月期の水準には届いていない。統合後の帳簿価額も1,000億円台で横ばいが続き、東北は中部・九州に次ぐ第3の生産拠点になったものの、拠点の規模そのものが大きく伸びたわけではない。

いつ何が起きたか 5件
考察:系列再編がもたらしたもの
考察

考察:系列再編がもたらしたもの

この判断は、外部の会社を買収する再編ではなく、すでに全株を握っている会社どうしを一つの会社に統合する作業だった。共通支配下の取引等として処理され、のれんは発生しない。動いたのは資本関係ではなく、拠点の置き場所である。本店は神奈川県横須賀市から宮城県黒川郡へ移り、主要な設備も東富士工場ほかから宮城大衡工場ほかへ移った。統合の実質は、東北で小型車を企画から生産まで担う一つの法人格をつくることにあったと推察される。

もっとも、法人を一つにすることと、拠点が大きくなることは別だった。統合翌期の主要な設備は帳簿価額119,109百万円まで増えたが、その後は1,000億円台で横ばいが続き、日本の車両生産台数も2016年3月期には3,980,576台と統合前と同じ水準になった。円高と震災の逆風のなかで国内の生産をどう残すかという問いに対し、この再編が出した答えは、生産量を積み増すことではなく、東北に自ら判断できる一社を置くことだったのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る 3表

数字で見る

図と表

トヨタ自動車:統合会社となった拠点の設備と人員

主要な設備の帳簿価額(百万円・人)従業員数(人)
トヨタ自動車:統合会社となった拠点の設備と人員
(百万円・人) 主要な設備の帳簿価額従業員数 備考
2007年3月期 136,0345,633 関東自動車工業 東富士工場ほか(静岡県裾野市)
2008年3月期 125,3575,758
2009年3月期 113,6405,877
2010年3月期 103,9115,986
2011年3月期 96,3655,901
2012年3月期 90,0815,797 3社統合を発表した期。2012年1月1日に株式交換で完全子会社化した
2014年3月期 119,1097,274 トヨタ自動車東日本 宮城大衡工場ほか(宮城県黒川郡)。3社分を含む
2015年3月期 108,9297,170
2016年3月期 104,4607,193
2017年3月期 109,1047,234
出所:トヨタ自動車 有価証券報告書 第103〜113期【主要な設備の状況】(国内子会社の状況・帳簿価額は建設仮勘定を含まない)
出所:トヨタ自動車 有価証券報告書 第103〜113期【主要な設備の状況】(国内子会社の状況・帳簿価額は建設仮勘定を含まない)

トヨタ自動車:車両(新車)の生産台数

日本(台)日本率(%)
トヨタ自動車:車両(新車)の生産台数
(台) 日本全世界 備考
2007年3月期 5,100,8238,180,951
2008年3月期 5,160,2938,547,200
2009年3月期 4,254,9847,051,032
2010年3月期 3,956,9966,809,440
2011年3月期 3,721,3517,169,721 東日本大震災で部品供給網が寸断された期
2012年3月期 3,940,5097,435,781
2013年3月期 4,276,4828,698,454
2014年3月期 4,344,8929,032,165
2015年3月期 4,124,5938,929,887
2016年3月期 3,980,5768,575,899
2017年3月期 4,109,0388,975,509
出所:トヨタ自動車 有価証券報告書 第103〜113期【生産、受注及び販売の状況】(自動車事業の生産実績)
出所:トヨタ自動車 有価証券報告書 第103〜113期【生産、受注及び販売の状況】(自動車事業の生産実績)

統合の条件

統合の条件
科目 概要 備考
結合当事企業 関東自動車工業・セントラル自動車・トヨタ自動車東北 存続会社は関東自動車工業。統合と同時に商号をトヨタ自動車東日本へ変更した
統合の法的形式 吸収合併 関東自動車工業がセントラル自動車およびトヨタ自動車東北を吸収した
合併の効力発生日 2012年7月1日
統合後の商号 トヨタ自動車東日本
統合後の本店所在地 宮城県黒川郡 存続会社の統合前の本店は神奈川県横須賀市
統合後の資本金 6,850百万円 存続会社の統合前の資本金と同額
統合会社への議決権比率 100.00%
統合後の主要な設備 宮城大衡工場ほか(宮城県黒川郡) 統合前は東富士工場ほか(静岡県裾野市)。帳簿価額は90,081百万円から119,109百万円へ
株式交換の企業結合日 2012年1月1日
株式交換の法的形式 簡易株式交換 会社法第796条第3項。トヨタを完全親会社、関東自動車工業とトヨタ車体を完全子会社とする
株式交換比率 関東自動車工業1株:トヨタ0.25株 同時に完全子会社化したトヨタ車体は1株:0.45株
株式交換の取得原価 79,902百万円 対価はトヨタの普通株式。トヨタ車体を含む2社分の合算額
交付した株式数 31,151,148株 保有する自己株式を充当。自己株式は125,819百万円減少した
会計処理 共通支配下の取引等 のれんは発生しない。自己株式処分差損45,916百万円を計上した
株式交換前の議決権比率 50.83% うち間接所有0.39%。2011年3月期末時点の関東自動車工業
出所:トヨタ自動車 有価証券報告書 第107〜110期(2011年3月期〜2014年3月期)【企業結合等関係】【関係会社の状況】【主要な設備の状況】【沿革】
出所:トヨタ自動車 有価証券報告書 第107〜110期(2011年3月期〜2014年3月期)【企業結合等関係】【関係会社の状況】【主要な設備の状況】【沿革】
参考文献

参考文献

参考
  • トヨタ自動車 適時開示「トヨタグループ3社、統合の主要条件を基本合意」
  • トヨタ自動車 有価証券報告書「第108期(2012年3月期)【企業結合等関係】」
  • トヨタ自動車 有価証券報告書「第108期(2012年3月期)【関係会社の状況】【主要な設備の状況】」
  • トヨタ自動車 有価証券報告書「第107期(2011年3月期)【関係会社の状況】」
  • トヨタ自動車 有価証券報告書「第109期(2013年3月期)【沿革】【関係会社の状況】」
  • トヨタ自動車 有価証券報告書「第110期(2014年3月期)【主要な設備の状況】」
  • トヨタ自動車東日本 企業公式サイト「沿革」

次に読む決断

免責事項およびポリシー