豊田自動織機エンジン国内認証問題で出荷停止:特別調査委員会の指摘を受け入れ、型式指定取消しまで背負った判断
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- 概要
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2023年3月17日、フォークリフト用エンジンの排出ガスが経年劣化で国内規制値を超えていること、および排出ガス国内認証での法規違反の可能性を確認し、ディーゼル2機種とガソリン1機種の計3機種、ならびにそれらを搭載するフォークリフトなどの出荷を止めた。あわせて独立した外部有識者からなる特別調査委員会を設置している。
2024年1月29日にその調査結果を受領し、フォークリフト用9機種と建設機械用2機種での違反、自動車用ディーゼルエンジン3機種の出力試験での違反を公表して、新たな出荷停止に踏み切った。2月22日に国土交通省から是正命令、3月5日に3型式の型式指定取消しを受けている。
- 背景
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違反は開発段階の認証取得時にとどまらず、量産移行後の抜き取り検査にも及んでいた。排出ガスの劣化耐久試験で実測値と異なるデータを使う、試験中に部品を交換する、量産品と異なる制御ソフトを使う、複数の測定値から都合のよい値を選ぶ――特別調査委員会はこれらを、故意の不正、ばらつきを目立たなくする目的の書き換え、法規の理解不足による違反の3種類に分類した。
産業車両用エンジンへの本格的な排出ガス規制の導入という変化点を捉えきれず、認証制度を理解しないまま人・モノ・カネを手当てできなかったことが、最大の反省点となった。伊藤浩一社長は 『規模の小さな事業、声の小さな機能に寄り添い、現場や職場の苦しみ、悩みを組織として十分に汲み取ることができていませんでした』 と、事業の置かれ方そのものに原因があったことを認めている。
- 内容
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2024年2月27日に自動車用ディーゼルエンジン3機種の基準適合が確認され、3月4日から生産・出荷を再開した。3月22日には特別調査委員会の提言をふまえた再発防止策を国土交通省へ報告し、3月26日、社長の伊藤浩一氏をはじめ事業部長・関係役員ら20名が出席して再発防止プロジェクトを「再出発委員会」に改めて始動させた。
経営体制も動いた。トヨタ自動車で取締役副社長を務めた寺師茂樹氏が2024年4月に顧問として入り、6月に代表権のある取締役会長へ就任している。前社長の大西朗氏は同じ6月に取締役副会長から取締役へ退いた。
- 含意
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損失は4期にわたって積み上がった。2023年3月期に20,751百万円、2024年3月期に49,387百万円、2025年3月期に11,830百万円、2026年3月期に64,331百万円を認証関連の損失として計上している。出荷停止に伴う補償費用の引当金も、2024年3月期末に49,984百万円まで膨らんだ。
2024年9月22日には米国カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所で集団訴訟を提起され、2025年10月31日に和解金と無償点検の提供からなる和解契約を締結した。和解金46,769百万円が2026年3月期の損失の大半を占めており、影響は国内の行政処分だけでは終わらなかった。
声の小さな機能に押し付けたもの
この問題で問われたのは、不正を働いた個人ではなく、産業車両用エンジンという事業の置かれ方だったとみられる。会社が自ら挙げた反省点は、規制強化という変化点を感度よく捉えられず、規模の小さな事業と声の小さな機能を、不正を行わざるをえない環境にしてしまった、という一点に集約される。海外生産とM&Aで売上高も拠点も膨らんでいくなかで、フォークリフト用エンジンの認証という地味な工程に人も予算も回らなかった。故意の書き換えと、法規の理解不足による違反とが同じ調査で並んで出てきたことが、その手当ての薄さを物語っている。
もっとも、代償は国内の行政処分では終わらなかった。認証関連の損失は4期で1,462億円に達し、その3割は米国の集団訴訟の和解金が占めた。北米では2021年にも認証取得の遅れで出荷を止めており、認証という出口で二度躓いたことになる。トヨタ自動車で副社長を務めた寺師茂樹氏を代表権のある会長として迎え、自動車用エンジンの開発・認証を親会社へ移したのは、自力で立て直す道を選ばなかったということでもある。グループの源流企業が、認証という出口を自前で抱えきれなくなったことの表れだとみられる。
Yutaka Sugiura, 2026年9月
経緯と対応
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 最初の公表 | 2023年3月17日 | 排出ガス国内規制値の超過と認証の法規違反の可能性を国土交通省ほかへ報告した |
| 出荷停止(第一次) | エンジン3機種 | ディーゼル2機種・ガソリン1機種と、それらを搭載するフォークリフトなど |
| 型式の指定・認定取消し(第一次) | 2023年4月26日 | ディーゼルエンジン2機種およびそれを搭載するフォークリフトが対象 |
| 調査体制 | 特別調査委員会 | 外部弁護士による調査に加え、独立した外部有識者からなる委員会を設置した |
| 調査結果の公表 | 2024年1月29日 | 国土交通省をはじめとした監督官庁へ報告し、同日に内容を開示した |
| 新たに判明した違反 | フォークリフト用9機種・建設機械用2機種 | うちフォークリフト用5機種と建設機械用1機種は旧型。現行1機種は規制値を超過 |
| 自動車用エンジンの違反 | ディーゼル3機種の出力試験 | トヨタ自動車・日野自動車の認証申請手続きのうち当社が担当した試験。出荷基準値は満たす |
| 不正行為の類型 | 3種類 | 故意の不正、ばらつきを目立たなくする書き換え、法規の理解不足による違反 |
| 出荷停止(第二次) | 2024年1月29日 | フォークリフト用ガソリンエンジン1機種と車両、自動車用ディーゼル3機種 |
| 是正命令 | 2024年2月22日 | 不正行為を起こさない体制への抜本的な改革を促すもの |
| 型式指定取消し(第二次) | 2024年3月5日 | フォークリフト用ガソリンエンジン2機種と建設機械用エンジン1機種 |
| 自動車用エンジンの出荷再開 | 2024年3月4日 | 2月27日に基準適合が確認され、出荷停止指示の解除の決定を受けた |
| 再発防止策の報告 | 2024年3月22日 | 特別調査委員会の提言をふまえた抜本的な再発防止策を国土交通省へ報告した |
| 再発防止の推進体制 | 再出発委員会 | 2024年3月26日に社長・事業部長・チーフオフィサーら20名が出席して始動した |
| 経営体制の変更 | 2024年6月 | トヨタ自動車で取締役副社長を務めた寺師茂樹氏が代表取締役取締役会長に就任 |
| 営業利益への影響 | 2023年3月期207億円、2024年3月期525億円 | 認証問題に関連する費用として計上した額 |
| フォークリフトの出荷再開 | 2025年1月8日 | 2.0t〜3.5t積ディーゼル式はオフロード法に基づく特定特殊自動車の型式届出による |
| 米国の集団訴訟 | 2024年9月22日 | カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所。2025年10月31日に和解契約を締結した |
| 和解金 | 46,769百万円 | 無償点検の提供とあわせた和解。2026年3月期のその他の費用に計上している |
出所:豊田自動織機 有価証券報告書 第145期(2023年3月期)〜第148期(2026年3月期)【偶発事象】【引当金】【費用の性質別内訳】【事業等のリスク】【役員の状況】 / 豊田自動織機レポート2024
豊田自動織機:認証関連損失と引当金残高の推移
| (百万円) | 認証関連損失 | 認証問題の引当金残高 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2019年3月期 | − | − | |
| 2020年3月期 | − | − | |
| 2021年3月期 | − | − | |
| 2022年3月期 | − | − | |
| 2023年3月期 | 20,751 | 11,079 | 2023年3月17日にエンジン3機種とフォークリフトの出荷を停止した期 |
| 2024年3月期 | 49,387 | 49,984 | 調査結果の公表、是正命令、型式指定取消しが重なった期 |
| 2025年3月期 | 11,830 | 13,092 | |
| 2026年3月期 | 64,331 | 11,944 | 米国集団訴訟の和解金46,769百万円を含む。科目名はエンジン認証関連損失 |
| 2027年3月期 | − | − | 2026年6月1日に上場廃止。第149期以降は有価証券報告書の提出がない |
| 2028年3月期 | − | − | |
| 2029年3月期 | − | − |
出所:豊田自動織機 有価証券報告書 第145〜148期【費用の性質別内訳】【引当金】
豊田自動織機:セグメント利益の推移
| (百万円) | 自動車 | 産業車両 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2019年3月期 | − | − | |
| 2020年3月期 | 17,290 | 102,246 | |
| 2021年3月期 | 4,786 | 109,984 | |
| 2022年3月期 | 33,007 | 113,616 | |
| 2023年3月期 | 34,636 | 121,856 | |
| 2024年3月期 | 18,230 | 165,616 | 自動車は前期比164億円の減益。ディーゼルエンジンの出荷停止が響いた |
| 2025年3月期 | 45,057 | 166,729 | |
| 2026年3月期 | 17,144 | 113,507 | 産業車両は前期比532億円の減益。米国集団訴訟の和解金を計上した期 |
| 2027年3月期 | − | − | 2026年6月1日に上場廃止。第149期以降は有価証券報告書の提出がない |
| 2028年3月期 | − | − | |
| 2029年3月期 | − | − |
出所:豊田自動織機 有価証券報告書 第144〜148期【セグメント情報】(営業利益ベース・連結IFRS)
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