舶用エンジンの品質不適切行為(2024年・カナデビアの決断)更新:2026/09/01論点子会社の不正の調査をどこまで広げるかカナデビア:業績の推移売上高(億円)営業利益率(%)データ出所特別調査委員会の設置と、6分野へ広がった不正の認定2024年7月、舶用エンジン事業を営む連結子会社で不適切行為が発覚した。日立造船は17日付でグループから独立した外部有識者による特別調査委員会を設置し、透明性と実効性を確保した調査に入る。結果は2025年3月25日、同年4月30日、同年11月6日の三度にわたって公表され、舶用エンジンのほか可燃ごみ焼却施設、し尿処理施設、橋梁、鋳物製品、特殊バルブにも不適切行為が及んでいた。何をなぜ決めたか:特別調査委員会の設置と、6分野へ広がった不正の認定概要2024年7月、舶用エンジン事業を営む連結子会社で不適切行為が発覚した。日立造船は17日付でグループから独立した外部有識者による特別調査委員会を設置し、透明性と実効性を確保した調査に入る。結果は2025年3月25日、同年4月30日、同年11月6日の三度にわたって公表され、舶用エンジンのほか可燃ごみ焼却施設、し尿処理施設、橋梁、鋳物製品、特殊バルブにも不適切行為が及んでいた。会社はこれを本件不適切行為と呼び、6項目の再発防止策を策定して実施している。背景掲げた再発防止策は、行為の温床を裏返した形になっている。組織の縦割り化と業務の属人化を防ぐために人事ローテーションを活性化し、長期間ひとりの担当者が同じ業務に従事しない仕組みを構築する。経験の浅い職員でも適切に業務を遂行できるよう、業務プロセスの可視化・標準化を進める。不適合報告の改ざんを防ぐデジタルツールも導入した。不適切行為が判明した2024年7月から3か月後の同年10月、商号は日立造船からカナデビアへ改まっている。内容2025年4月、社長を委員長とするコンプライアンス委員会の下部組織として品質コンプライアンス委員会を設置した。年4回開き、各部門の品質に関係する業務の適切性と是正措置の実施状況をモニタリングして、コンプライアンス委員会へ報告する。品質保証統括部は人員を増強し、品質保証部門と事業部門の責任と権限をISO9001規格に従って再整理した。経営体制も動いた。指名・報酬諮問委員会は不適切行為に伴う経営体制の見直しを審議し、2025年4月1日付で会長兼CEOであった三野禎男氏が地位を変更、社内取締役は社長兼CEOの1名となった。含意費用は2期に分かれて出た。2025年3月期は特別調査委員会等の調査費用と、今後見込まれるNOx規制・CO2規制への対応費用等の見積りで3,567百万円。2026年3月期は顧客対応費用、橋梁の経過観察費用、弁護士費用等で2,711百万円である。舶用原動機を含む脱炭素化セグメントは、2025年3月期に売上高70,247百万円と伸ばしながらセグメント利益が101百万円まで落ち、2026年3月期は2,467百万円の損失に転じた。全社の売上高が6,452億円と過去最高を更新した期に、この区分だけが逆を向いている。いつ何が起きたか7件当時の取締役8名当時の取締役(2024年6月株主総会決議)三野禎男:会長桑原道:社長庄司哲也:取締役坂田信以:取締役堀口明子:取締役木村悟:専務執行役員橋爪宗信:常務執行役員宮崎眞紀:取締役考察:調査を自ら拡大した会社が負ったもの考察考察:調査を自ら拡大した会社が負ったものこの案件の芯は、舶用エンジンという一事業の不正そのものよりも、調査の範囲を会社自身が広げた点にあるのだろう。発端は連結子会社1社で、そこで区切って調査を終える選択肢もあった。実際に選んだのはグループから独立した外部有識者だけで委員会を構成することで、結果として可燃ごみ焼却施設、し尿処理施設、橋梁、鋳物製品、特殊バルブまで、主力の環境プラントを含む6分野に不適切行為が認定された。公表が2025年3月から11月まで三度に分かれたのは、調査が終わる前に判明した分から順次公表する方針をとったためだろう。もっとも、範囲を広げた代償は数字に出ている。品質不適切行為関連費用は2期で計上が続き、脱炭素化セグメントは2026年3月期に2,467百万円の損失へ沈んだ。NOx規制・CO2規制への対応費用が見積りに含まれている以上、支出はまだ終わっていない。会長兼CEOの地位変更で経営体制は整理されたが、再発防止策の実効は品質不正再発防止推進室からの報告を取締役会が受け続けるところにしかなく、決着したと言える段階には至っていない。Yutaka Sugiura, 2026年9月数字で見る3表数字で見る図と表カナデビア:脱炭素化セグメントの売上高とセグメント利益脱炭素化の売上高(百万円)脱炭素化のセグメント利益率(%)表を見るカナデビア:脱炭素化セグメントの売上高とセグメント利益×(百万円)脱炭素化の売上高脱炭素化のセグメント利益備考2022年3月期39,889401舶用原動機、脱硝触媒、圧力容器等各種プロセス機器、電解・PtGを含む区分2023年3月期46,6604132024年3月期55,2571,8052025年3月期70,247101不適切行為の判明と特別調査委員会の設置がこの期。利益は前期比1,704減2026年3月期69,238△2,467全社の売上高は6,452億円と過去最高。この区分だけが損失に転じた出所:カナデビア 有価証券報告書 第125〜129期(セグメント情報)出所:カナデビア 有価証券報告書 第125〜129期(セグメント情報)カナデビア:品質不適切行為関連費用と引当金品質不適切行為関連費用(百万円)表を見るカナデビア:品質不適切行為関連費用と引当金×(百万円)品質不適切行為関連費用品質不適切行為関連費用引当金備考2025年3月期3,5671,484調査費用と、今後見込まれるNOx規制・CO2規制対応費用等を見積もった2026年3月期2,7111,355顧客対応費用、橋梁の経過観察費用および弁護士費用等出所:カナデビア 有価証券報告書 第128〜129期(連結損益計算書関係・連結貸借対照表)出所:カナデビア 有価証券報告書 第128〜129期(連結損益計算書関係・連結貸借対照表)経緯と対応不適切行為の判明2024年7月特別調査委員会の設置2024年7月17日調査結果の公表2025年3月25日追加の公表2025年4月30日さらなる公表2025年11月6日対象となった事業・製品舶用エンジンほか5分野品質不適切行為関連費用3,567百万円品質不適切行為関連費用2,711百万円表を見る経緯と対応×科目概要備考不適切行為の判明2024年7月舶用エンジン事業を行う連結子会社で行われていたことが判明した特別調査委員会の設置2024年7月17日グループから独立した外部有識者で構成し、透明性と実効性を確保した調査結果の公表2025年3月25日舶用エンジン以外の事業・製品にも不適切行為があったことが判明した追加の公表2025年4月30日同じ調査に基づく2度目の公表さらなる公表2025年11月6日3度目の公表。対象の範囲がここまでで確定した対象となった事業・製品舶用エンジンほか5分野可燃ごみ焼却施設、し尿処理施設、橋梁、鋳物製品、特殊バルブ等品質不適切行為関連費用3,567百万円2025年3月期。調査費用と、NOx規制・CO2規制への対応費用等の見積り品質不適切行為関連費用2,711百万円2026年3月期。顧客対応費用、橋梁の経過観察費用および弁護士費用等品質不適切行為関連費用引当金1,355百万円2026年3月末の残高。2025年3月末は1,484百万円品質コンプライアンス委員会2025年4月に設置コンプライアンス委員会の下部組織。年4回開き運営状況を報告する品質不正再発防止推進室設置再発防止策の実行状況を定期的に取締役会へ報告する経営体制の見直し2025年4月1日会長兼CEOの三野禎男氏が地位を変更し、社内取締役は社長兼CEOの1名へ国土交通省への報告向島工場の橋梁事業国土交通省への報告と適時開示を取締役会で審議した再発防止策6項目経営トップのコミットメント、組織風土改革、業務プロセスの改善ほか出所:カナデビア 有価証券報告書 第128期(2025年3月期)【対処すべき課題】【事業等のリスク】【連結損益計算書関係】・第129期(2026年3月期)【事業等のリスク】出所:カナデビア 有価証券報告書 第128期(2025年3月期)【対処すべき課題】【事業等のリスク】【連結損益計算書関係】・第129期(2026年3月期)【事業等のリスク】当時の取締役8名当時の取締役(2024年6月株主総会決議)三野禎男:会長桑原道:社長庄司哲也:取締役坂田信以:取締役堀口明子:取締役木村悟:専務執行役員橋爪宗信:常務執行役員宮崎眞紀:取締役参考文献参考文献参考カナデビア 有価証券報告書「第128期(2025年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」カナデビア 有価証券報告書「第128期(2025年3月期)【連結損益計算書関係】」カナデビア 有価証券報告書「第129期(2026年3月期)【事業等のリスク】」カナデビア コーポレート・ガバナンス報告書「2025年5月30日提出」次に読む決断カナデビアの意思決定2010年カナデビアカナデビアごみ焼却炉談合の課徴金確定公正取引委員会の審決を争いながら49億円を納付した選択2010年2010年カナデビアカナデビアAE&E Inova買収欧州・豪州の環境プラント企業の連続取得と、日立造船からカナデビアへの商号変更2010年同じ問い:不祥事後の取締役会改革2024年豊田自動織機豊田自動織機エンジン国内認証問題で出荷停止特別調査委員会の指摘を受け入れ、型式指定取消しまで背負った判断2024年2024年川崎重工業川崎重工業海上自衛隊への裏金供与潜水艦事業の裏金と舶用エンジン検査データ改ざんの露呈、そして統治の立て直し2024年2024年トヨタ自動車トヨタ自動車ダイハツ・日野の認証不正対応グループ3社の不正を受けた開発・認証体制の引き取り2024年2023年タムロンタムロン特別調査委員会の設置と社長辞任社長の交代と、社外取締役が過半数の取締役会による経費監視2023年2023年東京海上HD東京海上HD保険料調整事案と業務改善命令子会社の独占禁止法違反による処分と業界慣行の解消2023年×出所