カナデビアごみ焼却炉談合の課徴金確定:公正取引委員会の審決を争いながら49億円を納付した選択

更新:

時期 2010年11月
当時の社長 古川実
論点 談合の認定を争うか、受け入れるか
概要

1999年8月、公正取引委員会はごみ焼却施設建設工事をめぐり、日立造船を含む5社に独占禁止法違反の勧告を出した。会社はこれを不応諾とし、審判で争う道を選ぶ。2006年6月27日に排除措置を命じる審決が出ると東京高等裁判所へ審決取消請求訴訟を提起し、2007年3月23日の課徴金納付命令に対しても審判を請求して命令を失効させた。

2010年11月10日の審判審決は4,901百万円の課徴金納付を命じた。会社はこれも東京高裁で争いながら2011年1月に国庫へ納付し、2013年10月29日の上告棄却で確定している。

背景

2000年代半ばの日立造船には独占禁止法違反が重なっていた。鋼橋上部工事では2005年6月に26社が公正取引委員会から刑事告発を受けて東京高等検察庁に起訴され、し尿処理施設建設工事では2006年5月に子会社のアタカ工業を含む11社が刑事告発を受け、同年6月に大阪地方検察庁から起訴された。

し尿処理施設の件では2007年3月19日に大阪地方裁判所の有罪判決を受け、清掃施設工事業について中部・近畿・中国・九州の区域で同年7月10日から8月8日まで建設業法に基づく営業停止処分を受けている。法令・企業倫理の遵守は企業存立の基盤であり経営上の最重要課題であると位置付けた。

内容

排除措置審決の取消を求めた訴訟は、2008年9月26日に東京高等裁判所が5社の請求を棄却し、2009年10月6日に最高裁判所が上告を棄却して審決が確定した。課徴金の審判はなお続き、2010年11月10日の審決で4,901百万円が命じられる。

争いのあいだ、住民訴訟と発注者からの損害賠償請求訴訟に備えた訴訟損失引当金繰入額は2008年3月期に9,118百万円、2009年3月期に5,699百万円、2010年3月期に6,174百万円を数えた。2008年3月期の特別損失12,225百万円は、同じ期の営業利益10,825百万円を上回っている。

含意

14年を費やした抵抗で課徴金は減らなかった。4,901百万円は審決のまま確定し、納付から2年9か月後に訴訟だけが終わっている。環境部門の売上高は2006年3月期の144,779百万円から2010年3月期には115,441百万円まで減少した。

住民訴訟の判決も重なった。福岡市発注の案件では5社が連帯して2,088百万円、東京都発注の2件では3,139百万円を支払うよう命じられ、尼崎市発注の案件は最高裁が控訴審判決を取り消して差し戻している。他社が落札した案件に係る損害賠償請求訴訟は2014年1月16日に5社連帯で315百万円を支払う判決が確定したが、この分は当該他社が全額を負担した。

筆者の見解

争う権利を使い切って残ったもの

この件で日立造船が選んだのは、談合の認定そのものを受け入れないことであった。1999年の勧告不応諾から数えれば14年、排除措置審決にも課徴金納付命令にも審判と訴訟を重ね、高裁・最高裁のすべての段階を使っている。行政処分を争うのは企業の権利であり、命令の失効によって納付を先送りできた期間も長い。ただ、その時間の長さは、いつ確定するか分からない負担を毎期の決算に抱え込むことと引き換えであったとみられる。訴訟損失引当金繰入額が3期続けて数十億円規模で積まれたのは、争いが終わらなかったためである。

もっとも、争いの終わり方は静かであった。課徴金は審決の翌々月に納付され、2013年10月の上告棄却の時点で財政状態・経営成績・キャッシュ・フローへの影響は残っていない。争点は優劣ではなく、いつ費用として認めるかにあったともいえる。同じ時期に鋼橋上部工事とし尿処理施設建設工事でも刑事告発を受け、営業停止処分まで受けた事実を並べれば、この14年は一件の係争ではなく、官公需に依存した受注構造そのものの後始末だったのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

経緯と対応

科目 概要 備考
公正取引委員会の勧告 1999年8月 ごみ焼却施設建設工事をめぐり5社が対象。勧告を不応諾とし審判を求めた
排除措置審決 2006年6月27日 東京高等裁判所へ審決取消請求訴訟を提起した
課徴金納付命令 2007年3月23日 審判を請求したため、審判開始により同命令は失効した
審決取消請求訴訟の判決 2008年9月26日 東京高等裁判所が5社の請求を棄却した
排除措置審決の確定 2009年10月6日 最高裁判所が上告を棄却した
課徴金の審判審決 2010年11月10日 東京高等裁判所へあらためて審決取消請求訴訟を提起した
課徴金の額 4,901百万円 審判審決が日立造船に命じた額。以後の判決でも変わっていない
課徴金の納付 2011年1月 係争中のまま国庫へ納付した
審決取消請求訴訟の判決 2012年3月2日 東京高等裁判所が日立造船の請求を棄却した
課徴金の確定 2013年10月29日 最高裁判所が上告を棄却。財政状態・経営成績への影響はない
関連する住民訴訟 福岡市発注の案件で5社連帯2,088百万円 東京都発注の2件で3,139百万円、南河内清掃施設組合発注の案件で708百万円の判決
損害賠償請求訴訟の確定 2014年1月16日 他社落札案件で5社連帯315百万円。判決に基づく賠償金は当該他社が全額負担
再発防止 コンプライアンス経営の徹底 法令・企業倫理の遵守を企業存立の基盤かつ経営上の最重要課題と位置付けた

出所:日立造船 有価証券報告書 第109〜117期(2006年3月期〜2014年3月期)【事業等のリスク】【重要な後発事象】【訴訟】

カナデビア:独占禁止法違反に係る特別損失

(百万円) 訴訟損失引当金繰入額特別損失合計 備考
2006年3月期 鋼鉄製橋梁工事の課徴金および違約金923を計上。訴訟損失引当金の計上はない
2007年3月期 1,8593,920 住民訴訟に備えた繰入れ。し尿処理施設・水門設備工事の課徴金1,621を含む
2008年3月期 9,11812,225 住民訴訟で支払義務が認定された場合に備えた繰入れ
2009年3月期 5,6996,795 審判手続中の課徴金納付命令が最終的に確定した場合に備えた損失見込額
2010年3月期 6,1746,174 発注者からの損害賠償請求訴訟等に備え、将来のリスクを一掃した
2011年3月期 573 11月10日に4,901百万円の審決。和解に伴う戻入益1,162を特別利益に計上
2012年3月期 1,121
2013年3月期 2,531
2014年3月期 10月29日に上告棄却で確定。特別損失の計上はない
2015年3月期 1,336
2016年3月期 3,191
訴訟損失引当金繰入額
訴訟損失引当金繰入額(百万円)

出所:日立造船 有価証券報告書 第109〜119期(連結損益計算書・特別損失の内訳)

カナデビア:環境部門の売上高と営業利益

(百万円) 環境部門の売上高環境部門の営業利益 備考
2006年3月期 144,779△715 区分は環境装置・プラント部門。受注価格の下落により営業損失となった
2007年3月期 126,8322,431 この期から環境・プラント部門。前期の区分とは連続しない
2008年3月期 125,4743,404
2009年3月期 120,7312,186
2010年3月期 115,4415,488
2011年3月期 93,1375,737 この期から環境とプラントを分離。前期までの環境・プラント部門とは連続しない
2012年3月期 128,1328,437
2013年3月期 181,06010,559 この期に環境とプラントを再び環境・プラント部門へ統合した
2014年3月期 206,2989,889
2015年3月期 226,02113,592
2016年3月期 241,62914,819

出所:日立造船 有価証券報告書 第109〜119期(事業の種類別セグメント情報・セグメント情報)

同じ問いに直面した会社

不祥事後の信頼回復2010年古河電工相次ぐ独占禁止法違反の摘発に対する第三者調査委員会の設置と、各国当局への向き合い方繰り返し摘発される独占禁止法違反をどう断つか
2010年住友電工日欧中の当局の摘発と競争法コンプライアンス規程の制定主力事業で摘発された国際カルテルへの対応と競争法コンプライアンス体制
2010年フジクラ4年続いた独占禁止法違反の摘発に、課徴金の納付と法令遵守体制の立て直しで応じた独占禁止法違反の連続摘発への対応
2011年オリンパス損失飛ばしの粉飾決算と、それを追及した社長の排除会計不正の隠蔽と告発者の排除
2009年楽天グループ三年半に三度の行政処分を招いたシステム障害の再発と、子会社の管理体制の立て直し子会社のシステム障害と再発防止
出典・参考
  • 日立造船 有価証券報告書「第109期(2006年3月期)【事業等のリスク】【重要な後発事象】」
  • 日立造船 有価証券報告書「第110期(2007年3月期)【事業等のリスク】」
  • 日立造船 有価証券報告書「第114期(2011年3月期)【事業等のリスク】」
  • 日立造船 有価証券報告書「第117期(2014年3月期)【訴訟】」

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