フジクラ光ファイバケーブルの課徴金納付:4年続いた独占禁止法違反の摘発に、課徴金の納付と法令遵守体制の立て直しで応じた

更新:

時期 2010年5月
当時の社長 長浜洋一
論点 独占禁止法違反の連続摘発への対応
概要

2010年5月21日、光ファイバケーブル等の取引について公正取引委員会から排除措置命令と課徴金納付命令を受けた。排除措置命令は違反行為を取りやめていることを取締役会で確認することなどを命じるもので、課徴金納付命令が命じた額は4,411百万円だった。2010年3月期には課徴金納付命令(案)の事前通知を受け、4,400百万円を課徴金引当金に計上している。

処分はこれ一つでは終わらなかった。2009年1月の電力ケーブルの立入調査に始まり、光ファイバケーブル、建設・電販向け電線、自動車用ワイヤハーネス、架空送電工事と、4年にわたって検査と命令が続いた。

背景

2009年1月29日、持分法適用会社のビスキャスが高圧・特別高圧電力ケーブルの国内外の取引で立入調査を受け、同時期にEU・米国及び豪州等の競争当局も調査を開始した。ビスキャスに譲渡・統合したのは2001年と2005年の事業で、摘発の対象となった期間には譲渡元としての関与が残っていた。

同年6月2日には電気通信事業者向け光ファイバケーブル及び同関連製品の販売で自社が立入検査を受ける。12月には連結子会社のフジクラ・ダイヤケーブル、翌2010年4月には西日本電線と米沢電線が、建設・電販向け電線・ケーブルの販売で検査を受けた。

内容

2010年5月21日の命令に対しては、処分を重大かつ厳粛に受け止めるとして、適正な営業活動の徹底と内部統制の向上を掲げた。フジクラ・ダイヤケーブルは同年11月18日に排除措置命令と課徴金納付命令を受け、納付している。

自動車用ワイヤハーネスでは、2010年2月の立入検査から2年後の2012年1月19日に排除措置命令と課徴金納付命令を受けた。米国については適用法令と事実関係等を総合的に勘案した結果、2012年4月23日(米国時間)に米国司法省との間で罰金20百万米ドルを支払う司法取引に合意し、同年6月21日にその内容が確定している。

含意

独占禁止法に関わる特別損失は、2010年3月期の課徴金引当金繰入額4,400百万円から2014年3月期の1,166百万円まで、5期で11,249百万円に達した。2013年3月期には2010年5月21日の行政処分に伴う取引先への損害賠償1,823百万円も計上している。

2014年4月2日、欧州委員会は電力ケーブルのカルテルでフジクラに8,152,000ユーロ、ビスキャスに34,992,000ユーロの制裁金を課した。事実認定や法令の適用に疑義があるとして同年6月16日に欧州普通裁判所へ提訴している。架空送電工事については、2013年12月20日の処分公表で関連なしという結論となった。

筆者の見解

摘発が映した営業の型

この4年間に問われたのは、一つの商材での不当な取引制限ではなく、電線・ケーブルという事業そのものに染みついた営業の型だったとみられる。摘発を受けたのは光ファイバケーブル、建設・電販向け電線、自動車用ワイヤハーネス、電力ケーブルで、製品も顧客も生産拠点も異なり、特定の部署の逸脱では説明がつかない。規程類の整備と従業員教育を徹底してきたとしながら、その直後に次の検査を受ける繰り返しが、体制の不備というより現場の慣行の根深さを映していた。

もっとも、支払った代償の重さは、そのまま切り替えの契機にもなった。5期で11,249百万円という独占禁止法関連の特別損失は、2012年3月期の当期純損失6,232百万円を上回る規模である。2016年3月期以降、この科目は特別損失から消え、残る記述も欧州普通裁判所への提訴だけになった。営業の型が変わったのか、それとも摘発の波が過ぎただけなのかは、この先の開示からしか分からないのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

経緯と対応

科目 概要 備考
電力ケーブルの立入調査 2009年1月29日 持分法適用会社ビスキャスの高圧・特別高圧電力ケーブル。EU・米国・豪州の当局も調査を開始
光ファイバケーブルの立入検査 2009年6月2日 電気通信事業者向け光ファイバケーブル及び同関連製品の販売に関する独占禁止法違反の疑い
光ファイバケーブルの排除措置命令 2010年5月21日 違反行為を取りやめていることを取締役会で確認することなどを命じるもの
光ファイバケーブルの課徴金 4,411百万円 同日付の課徴金納付命令。2010年3月期に課徴金引当金繰入額4,400百万円を計上した
フジクラ・ダイヤケーブルへの命令 2010年11月18日 建設・電販向け電線・ケーブルの販売。2009年12月に立入検査を受けていた
自動車用ワイヤハーネスの立入検査 2010年2月 同時期に米国の競争当局も調査を開始した
自動車用ワイヤハーネスの命令 2012年1月19日 排除措置命令及び課徴金納付命令。2012年3月期の課徴金引当金繰入額は1,180百万円
米国司法省との司法取引 罰金20百万米ドル 2012年4月23日(米国時間)に合意し、6月21日にその内容が確定した
架空送電工事の立入検査 2012年11月29日・12月5日 2013年12月20日の処分公表で、フジクラは関連なしという結論となった
欧州委員会の制裁金 8,152,000ユーロ 2014年4月2日決定。1999年2月から2001年9月が制裁金計算の対象期間
ビスキャスへの制裁金 34,992,000ユーロ 同一の決定による。2001年10月から2009年1月が対象期間
欧州普通裁判所への提訴 2014年6月16日 事実認定や法令の適用に疑義があるとして提訴。ビスキャスは6月11日付
北米の民事訴訟 2015年9月に一部の原告と和解 自動車用ワイヤハーネス及び同関連製品の競争法違反に関連した損害賠償請求
再発防止策 規程類の整備と従業員教育の徹底 あわせて適正な営業活動の徹底と内部統制の向上を掲げた

出所:フジクラ 有価証券報告書 第161〜168期(2009年3月期〜2016年3月期)【事業等のリスク】・連結損益計算書

フジクラ:独占禁止法に関わる特別損失と当期純利益

(百万円) 独占禁止法に関わる特別損失当期純利益 備考
2005年3月期 5,412 2009年3月期までは独占禁止法に関わる特別損失の計上がない
2006年3月期 24,989
2007年3月期 21,484
2008年3月期 4,503
2009年3月期 △19,020 銅価格の変動と需要の減少で当期純損失。翌期から摘発が続く
2010年3月期 4,4002,567 課徴金納付命令(案)の事前通知を受け、課徴金引当金繰入額4,400百万円を計上
2011年3月期 1,0009,383 課徴金引当金繰入額。11月18日にフジクラ・ダイヤケーブルが命令を受け納付
2012年3月期 2,860△6,232 課徴金引当金繰入額1,180と独占禁止法関連損失引当金繰入額1,680の合計
2013年3月期 1,8233,049 損害賠償金。2010年5月21日の行政処分に伴う取引先への損害賠償である
2014年3月期 1,1663,328 独占禁止法関連損失引当金繰入額。欧州委員会が課した制裁金に対応する
2015年3月期 12,201 独占禁止法に関わる特別損失の計上はない

出所:フジクラ 有価証券報告書 第161期・第167期(主要な経営指標等の推移) / フジクラ 有価証券報告書 第162〜167期(連結損益計算書)

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出典・参考
  • フジクラ 有価証券報告書「第161期(2009年3月期)【事業等のリスク】」
  • フジクラ 有価証券報告書「第162期(2010年3月期)【事業等のリスク】」
  • フジクラ 有価証券報告書「第163期(2011年3月期)【事業等のリスク】」
  • フジクラ 有価証券報告書「第164期(2012年3月期)【事業等のリスク】【重要な訴訟案件等】」
  • フジクラ 有価証券報告書「第166期(2014年3月期)【事業等のリスク】」
  • フジクラ 有価証券報告書「第168期(2016年3月期)【事業等のリスク】」

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