監査等委員会設置会社へ移行(2017年・フジクラの決断)

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論点機動的な執行と監督を両立させる機関設計
フジクラ:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
カンパニーへの権限委任と社外取締役4名の監督の一本化2017年6月29日開催の定時株主総会で定款の変更が決議され、同日付で監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行した。取締役会は監査等委員でない取締役9名と監査等委員である取締役5名で構成され、監査等委員のうち4名が社外取締役である。

何をなぜ決めたか:カンパニーへの権限委任と社外取締役4名の監督の一本化

概要

2017年6月29日開催の定時株主総会で定款の変更が決議され、同日付で監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行した。取締役会は監査等委員でない取締役9名と監査等委員である取締役5名で構成され、監査等委員のうち4名が社外取締役である。

移行前は取締役10名と監査役4名で、社外取締役は1名だった。監査の担い手が取締役会の外から内側へ移り、議決権を持つ立場になった。

背景

事業運営は主要な事業を3つのカンパニー(エネルギー・情報通信、エレクトロニクス、自動車電装)として組織し、それぞれに統括する業務執行取締役を配置している。各カンパニーが所管する事業は取扱製品が幅広く、顧客や競争環境もそれぞれ大きく異なるため、統括する業務執行取締役が迅速果断な意思決定を行える機動的な体制の構築が必要とされた。

他方で、年度及び中期の経営計画や規模の大きいM&Aなど全社の成長に係る重要な事項は、社外取締役の多様な知見や客観的な意見を反映し、十分な審議をもって決定する体制が要る。この機動性と客観性の両方を満たす経営体制として、監査等委員会設置会社が最も適していると判断された。

内容

取締役会は決定事項を経営計画等の重要な事項に絞り込んで審議事項を減らし、迅速な決定を可能とする一方、個別の事業に係る決定は各事業責任者である業務執行取締役へ委任した。社外取締役4名の属性は、企業経営経験者(金融、製造業)、弁護士、公認会計士である。

取締役の指名及び報酬の決定に係る客観性及び透明性を確保するため、取締役会の諮問機関として指名諮問委員会と報酬諮問委員会を設置した。監査等委員会を支援する監査等委員会室には専任者を置き、業務執行側からの独立性を持たせている。

含意

同じ株主総会では取締役の報酬制度も組み替えられた。基本報酬・短期業績連動報酬・株式報酬の3区分とし、業績や株価によって変動する報酬は最大で概ね4割強となる見込みとされた。短期業績連動報酬は営業利益率・株主資本利益率(ROE)・投下資本利益率(ROIC)に基づき、役位別の基礎額の0%〜200%の範囲で支給する。

株式報酬は信託を通じて交付する制度で、受益者は監査等委員及び社外取締役を除く取締役、交付は原則として退任時である。定款には監査等委員でない取締役を12名以内、監査等委員である取締役を5名以内と定めた。

いつ何が起きたか7件
考察:監督を内側へ入れた交換
考察

考察:監督を内側へ入れた交換

この移行で変わったのは監査機関の名だけではない。監査役は取締役会の外から適法性を見る立場だったが、監査等委員は議決権を持つ取締役として取締役会の内側へ入った。社外取締役が1名から4名へ増加したのも、監査等委員5名のうち4名が社外だったからである。カンパニーへ個別事業の決定を委ね、取締役会には経営計画と規模の大きいM&Aだけを残すという設計は、執行を速める代わりに、残した少数の議題を社外の目で厚く審議させる交換だっただろう。

もっとも、この形がそのまま定着したわけではない。2021年3月期には監査等委員でない取締役が4名まで絞られ、取締役会は14名から10名になった。監督する取締役が6名で執行する取締役を上回る構成は、機動性と客観性の両立という当初の設計が、なお調整の途中にあったことを示しているのだろう。取締役会の議長を業務執行から切り離すのは、さらに5年先のことになる。

Yutaka Sugiura, 2026年9月
数字で見る2表

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図と表

フジクラ:取締役会と監査機関の員数

取締役会(名)社外取締役率(%)
フジクラ:取締役会と監査機関の員数
(名)取締役会監査役会・監査等委員会社外取締役備考
2012年3月期840社外取締役は選任していない。監査役4名のうち2名が社外監査役
2013年3月期941
2014年3月期941
2015年3月期941
2016年3月期1041移行前の最後の期。監査役は取締役会の構成員ではない
2017年3月期14546月29日に移行。監査等委員5名が取締役会に加わり、社外取締役は4名となった
2018年3月期1454
2019年3月期1454
2020年3月期1465監査等委員が6名となり、うち5名が社外取締役
2021年3月期1065監査等委員でない取締役を4名に絞り、取締役会は10名となった
2022年3月期1165
出所:フジクラ 有価証券報告書 第164〜168期(役員の状況) / フジクラ 有価証券報告書 第169〜174期(コーポレート・ガバナンスの状況等)
出所:フジクラ 有価証券報告書 第164〜168期(役員の状況) / フジクラ 有価証券報告書 第169〜174期(コーポレート・ガバナンスの状況等)

経緯と対応

経緯と対応
科目概要備考
移行の決議2017年6月29日定時株主総会で定款の変更が決議され、同日付で移行した
移行前の体制監査役会設置会社取締役10名と監査役4名(常勤2名・社外2名)。社外取締役は1名だった
移行後の取締役会14名監査等委員でない取締役9名と監査等委員である取締役5名で構成する
社外取締役4名属性は企業経営経験者(金融、製造業)、弁護士、公認会計士
常勤の監査等委員小田康之氏監査等委員会の活動の実効性を確保するため、互選により選定している
採用した理由機動性と客観的な意見の両立迅速果断な意思決定と、社外取締役の多様な知見の反映をともに満たすため
取締役会の決定事項経営計画等の重要な事項決定事項を絞り込んで審議事項を減らし、迅速な決定を可能とした
個別の事業に係る決定業務執行取締役へ委任各事業責任者である業務執行取締役による機動的な運営を可能とした
諮問機関指名諮問委員会・報酬諮問委員会取締役の指名及び報酬の決定に係る客観性及び透明性の確保を目的とする
監査等委員会室専任者を配置業務執行側からの独立性を有し、監査等委員会の直接の指示・命令の下で支援する
定款の員数枠監査等委員でない取締役は12名以内監査等委員である取締役は5名以内と定めている
報酬の構成基本報酬・短期業績連動報酬・株式報酬変動する報酬は最大で概ね4割強。業務執行取締役以外は基本報酬のみとする
短期業績連動報酬の指標営業利益率・ROE・ROIC役位別の基礎額を設定し、その0%〜200%の範囲で支給する
株式報酬の信託2017年8月から2022年8月受益者は監査等委員及び社外取締役を除く取締役。交付は原則として退任時
出所:フジクラ 有価証券報告書 第169期(2017年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】【役員の状況】【従業員株式所有制度の内容】
出所:フジクラ 有価証券報告書 第169期(2017年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】【役員の状況】【従業員株式所有制度の内容】
参考文献

参考文献

参考
  • フジクラ 有価証券報告書「第169期(2017年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • フジクラ 有価証券報告書「第169期(2017年3月期)【従業員株式所有制度の内容】」
  • フジクラ 有価証券報告書「第169期(2017年3月期)【役員の状況】」
  • フジクラ 有価証券報告書「第168期(2016年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況】」
  • フジクラ 有価証券報告書「第173期(2021年3月期)【コーポレート・ガバナンスの概要】」

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