この移行でサイゼリヤが初めて手にしたのは、取締役会で票を投じる社外の目であった。移行前の取締役6名はいずれも社内の人間で、社外の監視は取締役会の外にいる監査役2名が担っていた。興味深いのは、体制を採用する理由の説明が移行の前後でほとんど変わっていないことである。迅速な意思決定と取締役会の活性による効率的な経営システムの実現、そして客観的・中立的監視による透明性と適法性の確保という二つの柱は同じ言葉のまま置かれ、後者の担い手だけが社外監査役から監査等委員である取締役へ入れ替わった。統治の思想を改めたというより、同じ思想を新しい機関設計へ移す作業だったとみられる。
もっとも、機関設計を替えたことの効き目は、その後の人数の動きに表れている。移行から3期後の2019年8月期、監査等委員でない取締役は7名から4名へ絞られ、取締役会は10名から7名に戻った。社外3名の枠は動かなかったので、取締役会に占める社外の比率は3割から4割余りへ上がっている。創業者の正垣泰彦氏が代表取締役会長として席を保つなかで減少したのは社内取締役であり、監督の密度を上げたのは社外を増やす足し算ではなく社内を減らす引き算だった、ともいえるだろう。