サイゼリヤの直近の動向と展望

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サイゼリヤの直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。

セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。

直近の動向と展望

海外5カ国・地域への同時新設と朝サイゼの実験

2025年はサイゼリヤにとって海外展開の新たな段階を刻む年となった。5月にベトナムでVIETNAM SAIZERIYA CO., LTD.を設立、6月にはオーストラリアでSAIZERIYA AUSTRALIA RISTORANTE PTY LTD、7月には広東省薩莉亜餐飲管理有限公司と武漢薩莉亜餐飲有限公司を相次いで設立、10月にはマレーシアでSAIZERIYA MALAYSIA SDN.BHDを設立と、半年のあいだに5カ国・地域に新会社を立ち上げる集中展開となった。海外店舗数は2023年11月に500店舗を突破しており、国内の1053店舗と合わせてグループ全体で1500店舗規模の運営体制に入っている。創業期に首都圏を起点として面で塗り広げたドミナント戦略を、東南アジア・南半球・華南内陸という新しい白地図のうえで再現する試みでもある。食材調達網の広がりと連動しながら、現地化と本部標準化をどう両立させるかが次の課題として浮かび上がっている。

2025年8月には「大島ピーコックストア前店」で朝サイゼの運営が始まった。朝食時間帯の店舗活用を試みる取り組みで、既存の昼・夜の営業に加えて朝の利用シーンを取り込み、店舗の稼働時間を一日単位で広げる狙いがある。2024年8月には全店にセルフレジを導入するなど、店舗オペレーションの省人化も並行して進めている。徳島県(2024年10月)、愛媛県(2024年11月)、大分県(2024年12月)と四国・九州の空白県への出店も続いており、47都道府県への完全進出を目指す国内の面的な出店と、東南アジアを軸とする海外の面的な展開とが、同時並行で進む時期に入った。創業期に確立した一店当たり投資リターンの数理基準を、新規市場と新規時間帯の両方へ拡張する構図と読める。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • 日本経済新聞 2024/4/9
  • 各種プレスリリース

円安長期化下の食材原価と松谷社長の「値上げしない」方針

2020年7月に全メニューの税込価格末尾を00円または50円にそろえて以降、サイゼリヤの価格政策は円安局面の食材原価上昇にどこまで耐えられるかという試練に直面している。同社が競争力の源泉としてきた海外からの食材直接輸入は、1970年代の創業期には円安が参入障壁として働いた。だが2020年代の円安は原価を直接押し上げる要因に転じた。広州薩莉亜食品有限公司や福島の自社農場、吉川・千葉・兵庫・神奈川・福島の国内5工場を軸とする食材製造・物流体制の整備は、原価構造を部分的に内製化する緩衝役を果たす基盤となっている。2022年9月就任の松谷秀治社長は「値上げしない」(日本経済新聞 2024/4/9)方針を掲げ、低価格を維持したうえでの利益確保を経営課題に据えている。

2022年5月に設立された株式会社CSsTは当社技術の販売を目的としていたが、2023年9月にサイゼリヤグループから独立した。同社の独立は、サイゼリヤが長年蓄積してきたオペレーション技術や店舗運営ノウハウが、外食産業全体にとって移転可能な経営資産であることを示す動きでもある。1967年の本八幡での個人店舗開業に始まり、1975年頃の全メニュー6〜7割引の断行、1994年の広告費抑制方針の確立、2003年の中国本土進出、2022年のプライム市場移行、2025年の海外5カ国新拠点設立へと連なるサイゼリヤの経営史は、理系創業者の定量的な発想を商品・価格・立地・調達の全領域に貫く実験の連続だった。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • 日本経済新聞 2024/4/9
  • 各種プレスリリース

参考文献・出所

有価証券報告書
週刊東洋経済 2017/10/28
日経金融新聞 2001/12/18
日本経済新聞 2024/4/9
各種プレスリリース
日本経済新聞