監査等委員会設置会社への移行(2016年・ニコンの決断)

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論点監督の強化と執行への委任の両立
ニコン:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
監査役会の廃止と重要な業務執行の一部の執行側への委任2016年6月29日、第152期定時株主総会の決議に基づき、同総会の終結の時をもって監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行した。掲げたのは、取締役会が実効性の高い監督を行うとともに、重要な業務執行の一部を業務執行取締役に委任することを可能とする体制である。

何をなぜ決めたか:監査役会の廃止と重要な業務執行の一部の執行側への委任

概要

2016年6月29日、第152期定時株主総会の決議に基づき、同総会の終結の時をもって監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行した。掲げたのは、取締役会が実効性の高い監督を行うとともに、重要な業務執行の一部を業務執行取締役に委任することを可能とする体制である。

移行前は取締役10名(うち社外2名)と監査役4名(うち社外2名)に分かれていたが、移行後は取締役14名に一本化され、うち5名が監査等委員、社外取締役は4名となった。監査等委員会は定款に定める5名以内の範囲で員数を維持し、過半数を独立性を有する社外取締役で構成する。

背景

コーポレート・ガバナンスを経営上の重要な課題と位置付け、経営のさらなる効率化と透明性の向上、業務執行の監督機能の一層の強化により、グループの持続的成長と中長期的な企業価値の向上を図る──これが移行の土台に置かれた考え方である。

移行前の体制では、取締役会と監査役会が分かれ、役員報酬については社外取締役と外部有識者を加えた報酬審議委員会の審議結果に基づいて、取締役の報酬等は取締役会が、監査役の報酬等は監査役の協議が決めていた。監査役は取締役会で議決権を持たず、監督は取締役会の外から行われる体制であった。

内容

定款の員数枠は、監査等委員以外の取締役を15名以内、監査等委員である取締役を5名以内と定めた。移行前の定めは取締役15名以内である。任期は監査等委員以外が1年、監査等委員が2年で、監査等委員には財務および会計に関する適切な知見を有する者を1名以上選任することとし、常勤の監査等委員2名を置いた。

委任の範囲は取締役会付議報告基準で具体的に定め、経営の基本方針、中期経営計画、年度計画、内部統制システムの基本方針、一定の金額水準を超える投融資等は取締役会で決定する。同じ総会では、監査等委員である取締役の報酬額を年額1億5,000万円以内とすることも承認された。

含意

移行の5か月後にあたる2016年11月に発表した構造改革の実施に伴い、「中期経営計画2015年度版」は取り下げられ、第151期・第152期の定時株主総会で承認された業績連動型株式報酬は支給しないこととなった。移行を決議した総会で整えた報酬の枠組みが、同じ年度のうちに支給の根拠を失っている。

移行の年度である2017年3月期の役員報酬は、監査等委員以外の取締役(社外取締役を除く)398百万円、監査等委員である取締役(社外取締役を除く)38百万円、6月29日以前に係る監査役13百万円、社外役員43百万円であった。翌2017年6月の第153期定時株主総会では監査等委員以外の取締役5名と監査等委員である取締役1名が退任し、取締役は11名となっている。

いつ何が起きたか6件
考察:監督する側の席が動いた
考察

考察:監督する側の席が動いた

この移行で実際に動いたのは、監督する取締役が座る席の位置であったとみられる。監査役4名は取締役会の外から意見を述べる立場にあったが、監査等委員5名は取締役として議決権を持つ。社外役員の数は移行の前後で4名のまま変わっていないのに、そのうち3名が票を投じる側へ移った。日常の業務執行を執行側へ降ろし、その結果、取締役会は監督に時間を使う──取締役会付議報告基準で委任の範囲を線引きした設計は、監督と執行を同じ会議体のなかで役割として分ける試みだったといえる。

もっとも、席を移せば監督が働くとは限らない。移行の5か月後に打ち出された構造改革は、それ自体が中期経営計画の取り下げを伴うものであり、移行を決議した同じ総会で承認された業績連動型株式報酬は、支給されないまま終わっている。新しい取締役会が最初に向き合ったのは、自らが半年前に承認した計画の撤回だったことになる。機関設計の組み替えが監督の実質を伴ったかどうかは、その後の投資判断の当否からしか読めないのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年9月
数字で見る2表

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図と表

ニコン:役員区分ごとの報酬等の総額

ニコン:役員区分ごとの報酬等の総額
(百万円)取締役(社外を除く)監査等委員である取締役(社外を除く)監査役(社外を除く)社外役員備考
2012年3月期651−50491列目は2017年3月期以降、監査等委員以外の取締役の報酬等の総額
2013年3月期490−5051
2014年3月期467−5051
2015年3月期511−5043
2016年3月期473−5040
2017年3月期398381343監査役分は2016年6月29日以前、監査等委員分は同日以後に係る支給額
2018年3月期46251−43第153期総会で退任した監査等委員以外5名・監査等委員1名の支給額を含む
2019年3月期45853−53
2020年3月期48859−71
2021年3月期29459−75対象は監査等委員以外6名・監査等委員2名・社外役員8名(退任者を含む)
2022年3月期40459−75対象は監査等委員以外4名・監査等委員3名・社外役員5名(退任者を含む)
出所:ニコン 有価証券報告書 第148〜158期【役員の報酬等】
出所:ニコン 有価証券報告書 第148〜158期【役員の報酬等】

移行の経緯と体制

移行の経緯と体制
科目概要備考
移行日2016年6月29日第152期定時株主総会の決議に基づき、同総会の終結の時をもって移行した
移行前の機関監査役会設置会社取締役10名(うち社外2名)と監査役4名(うち社外2名)。2015年3月31日現在
移行の理由取締役会による実効性の高い監督重要な業務執行の一部を業務執行取締役に委任することを可能とするため
掲げた目的経営の効率化・透明性の向上と監督機能の強化グループの持続的成長と中長期的な企業価値の向上を図るとした
移行後の取締役会取締役14名(うち社外4名)監査等委員以外9名と監査等委員5名。監査役は置かない
監査等委員会の構成5名(うち社外3名)常勤の監査等委員2名を置き、過半数を独立性を有する社外取締役で構成する
財務・会計の知見監査等委員に1名以上常勤の監査等委員は経理担当役員としての経歴を有する
社外取締役の下限2名以上取締役会の監督機能をより強化するため、独立性を有する社外取締役を選任する
定款の員数枠監査等委員以外15名以内・監査等委員5名以内移行前の定めは取締役15名以内。選任決議は累積投票によらない
取締役の任期監査等委員以外1年・監査等委員2年第152期総会から、それぞれ第153期・第154期の総会終結の時まで
委任の範囲取締役会付議報告基準で定める経営の基本方針・中期経営計画・年度計画・一定額を超える投融資は取締役会で決定
監査等委員の報酬枠年額1億5,000万円以内第152期定時株主総会で承認された。決議時の員数は5名
監査等委員会の補助体制専任の監査等委員会スタッフ人事異動と人事考課は予め監査等委員会の同意を得る
業績連動型株式報酬支給しないこととした2016年11月の構造改革で「中期経営計画2015年度版」を取り下げたため
出所:ニコン 有価証券報告書 第152期(2016年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】【役員の状況】・第153期(2017年3月期)【役員の報酬等】・第157期(2021年3月期)【役員の報酬等に関する株主総会の決議】
出所:ニコン 有価証券報告書 第152期(2016年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】【役員の状況】・第153期(2017年3月期)【役員の報酬等】・第157期(2021年3月期)【役員の報酬等に関する株主総会の決議】
参考文献

参考文献

参考
  • ニコン 有価証券報告書「第152期(2016年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • ニコン 有価証券報告書「第152期(2016年3月期)【役員の状況】」
  • ニコン 有価証券報告書「第151期(2015年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • ニコン 有価証券報告書「第153期(2017年3月期)【役員の報酬等】」
  • ニコン 有価証券報告書「第157期(2021年3月期)【役員の報酬等に関する株主総会の決議】」
  • ニコン 有価証券報告書「第148〜158期【役員の報酬等】」

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