佐藤恒治氏が社長就任(2023年・トヨタ自動車の決断)

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論点 BEVの台数目標をどこまで積み増すか
トヨタ自動車:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
非創業家の技術者への継承とBEV台数目標の積み増し

何をなぜ決めたか:非創業家の技術者への継承とBEV台数目標の積み増し

概要

2023年1月26日、執行役員でChief Branding Officerの佐藤恒治氏(53)を4月付で社長・Chief Executive Officerに充てる人事を発表した。2009年6月から14年にわたり社長を務めた豊田章男氏は代表権のある取締役会長へ移り、豊田家出身者から非創業家の社長へトップが引き継がれた。

6月14日の定時株主総会で佐藤恒治氏は取締役に選ばれ、取締役会は10名(うち社外取締役4名)、副社長2名・執行役員5名の体制となった。取締役の任期は1年である。

背景

後継の議論が動いたのは2022年12月で、内山田竹志会長と豊田章男社長から後任に佐藤恒治氏をとの提案があり、社外取締役が過半を占める役員人事案策定会議のメンバーが発表までに5回議論を重ねた。同会議は2023年3月期に8回、社外取締役のみの事前検討ミーティングを5回開いている。

社外取締役の菅原郁郎氏は 『豊田社長から昨年12月に退任の意向を聞きました』 と、交代が前社長自身の申し出から動いたことを示している。社外取締役・監査役6名による議論は2020年・2021年が各7回、2022年は11回に増えており、カンパニー制で社内にトップの経験を積む場を設けたことが選任の土台にあった。

内容

「継承と進化」が新体制の標語である。執行役員は、商品と地域それぞれを軸に経営を担うチームという位置づけに改めた。 『フルラインアップの商品とグローバルな事業基盤を活かしたトヨタらしい持続的成長の土台が整いつつあります』 という認識から、BEVの品ぞろえを増やす作業に入るが、電動化の軸はマルチパスウェイのまま動かさない。

新たに投入するBEVは2026年までに10モデルとし、年間150万台を基準に販売のペースを決めるとした。航続距離を2倍にする次世代BEVも2026年の投入を想定し、2023年5月には専任組織のBEVファクトリーを設けて、2030年までにBEVと電池へ約5兆円を投じる計画を公表した。2030年の販売目標は年間350万台で、うち次世代BEVが170万台を占める。

含意

規模でも収益でも頂点にあるなかでの交代であった。2023年3月期の営業収益は37兆1,542億円、連結販売台数は882万2千台に達しており、危機に追われた承継ではない。

引き継いだのは、全方位の電動化を続けながらBEVの台数目標を積み上げるという二兎である。2025年3月期には欧米などでBEVの販売が低迷する事象も認識され、2026年150万台という基準台数はその後の開示から姿を消した。創業家出身の前社長が代表権のある会長として残る構図のなかで、非創業家の技術者が経営を率い、その二兎を追う。

いつ何が起きたか 8件
当時の取締役 9名

当時の取締役(2022年6月株主総会決議)

  • 内山田竹志:会長
  • 早川茂:副会長
  • 豊田章男:社長
  • 菅原郁郎:取締役
  • SirPhilipCraven:取締役
  • 工藤禎子:取締役
  • JamesKuffner:取締役
  • 近健太:取締役
  • 前田昌彦:取締役
考察:「豊田」を超える課題
考察

考察:「豊田」を超える課題

この交代の眼目は、世界一へ育て上げた当人が、自らを"クルマ屋"と規定してその限界を自ら認めたところにある。営業収益37兆円、連結販売台数882万台という頂点にありながら、あえて非創業家の技術者にトップを譲り、業態転換と電動化という次の課題を託した。好調なうちに交代を決めるという意味では、危機に追われての交代とは異なる緊張感を帯びた承継であっただろう。

もっとも、代表権を持つ会長として豊田章男氏が残り、取締役の任期が1年に置かれた構図は、佐藤体制の自立をどこまで許すかという問いを残した。2026年に年間150万台という基準台数は、掲げた2年後には開示から姿を消している。全方位とBEVファーストの二兎を抱えたまま、この体制がいつ"豊田"の後見を離れて独り立ちするのかは、なお見通せないとみられる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る 4表

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図と表

トヨタ自動車:取締役会の構成

社内取締役(人)社外取締役(人)
トヨタ自動車:取締役会の構成
(人) 取締役社内取締役社外取締役 備考
2018年3月期 963
2019年3月期 963
2020年3月期 963
2021年3月期 963
2022年3月期 963
2023年3月期 1064 佐藤恒治氏ら6名が加わり内山田竹志氏ら5名が退任。社外取締役は3名から4名へ
2024年3月期 1064
2025年3月期 1055 2025年6月12日に監査等委員会設置会社へ移行し、社外取締役が5名になった
出所:トヨタ自動車 有価証券報告書 第114〜121期(役員の状況・コーポレート・ガバナンスの状況等)
出所:トヨタ自動車 有価証券報告書 第114〜121期(役員の状況・コーポレート・ガバナンスの状況等)

トヨタ自動車:連結販売台数の推移

連結販売台数(千台)
トヨタ自動車:連結販売台数の推移
(千台) 連結販売台数 備考
2018年3月期 8,964
2019年3月期 8,977
2020年3月期 8,958
2021年3月期 7,646
2022年3月期 8,230
2023年3月期 8,822 BEVは2026年に年間150万台、2030年に年間350万台を基準台数として公表
2024年3月期 9,443
2025年3月期 9,362
出所:トヨタ自動車 有価証券報告書 第114〜121期(経営成績等の状況の概要)
出所:トヨタ自動車 有価証券報告書 第114〜121期(経営成績等の状況の概要)

トヨタ自動車:営業収益と営業利益の推移

営業収益(百万円)営業利益率(%)
トヨタ自動車:営業収益と営業利益の推移
(百万円) 営業収益営業利益 備考
2020年3月期 29,866,5472,399,232 IFRS移行に伴う遡及値。第117期の前期欄から採った
2021年3月期 27,214,5942,197,748
2022年3月期 31,379,5072,995,697
2023年3月期 37,154,2982,725,025
2024年3月期 45,095,3255,352,934
2025年3月期 48,036,7044,795,586
出所:トヨタ自動車 有価証券報告書 第117〜121期(連結損益計算書・IFRS)
出所:トヨタ自動車 有価証券報告書 第117〜121期(連結損益計算書・IFRS)

社長交代の経緯と対応

社長交代の経緯と対応
科目 概要 備考
交代の提案 2022年12月 内山田竹志会長と豊田章男社長から、後任を佐藤恒治氏にしたいとの提案が出た
策定会議での議論 5回 提案から発表まで、役員人事案策定会議のメンバーで議論を重ねた
選任の決議 役員人事案策定会議の審議を経て取締役会で決議 同会議は2023年3月期に8回、社外取締役のみの事前検討ミーティングを5回開催
交代の発表 2023年1月26日
役員人事案策定会議の構成 5名(うち社外取締役3名) 交代を審議した時点。2023年6月時点は6名(うち社外取締役4名)で議長は代表取締役
新社長の就任 2023年4月 執行役員・社長およびChief Executive Officer。取締役への選任は6月14日の定時株主総会
佐藤恒治氏の前職 執行役員・Chief Branding Officer Lexus International Co.とGAZOO Racing CompanyのPresidentを歴任
豊田章男氏の異動 取締役社長から取締役会長へ 代表取締役として代表権は保持。2009年6月の社長就任から14年
取締役の任期 1年 2023年6月14日の定時株主総会終結の時から2024年3月期に係る定時株主総会終結の時まで
新体制の取締役 10名(うち社外取締役4名) 2023年6月時点。前期は9名(うち社外取締役3名)
新体制の副社長 2名 2023年4月時点。執行役員は2023年6月時点で5名
BEVの新モデル投入 2026年までに10モデル 2023年4月に公表した目標
BEVの販売台数目標 2026年に年間150万台 2023年4月に基準台数として公表。2021年公表の2030年350万台に上乗せする形
2030年のBEV販売目標 年間350万台 2021年に公表。次世代BEVは2030年時点で170万台
次世代BEVの投入 2026年 電池の効率を高め航続距離を2倍に。専任組織のBEVファクトリーを2023年5月に設置
BEVへの投資 2030年までに約5兆円 電池を含む。2023年に公表
車載用電池の生産能力 日米で最大40GWh増強 2022年に取締役会で投資を決定
出所:トヨタ自動車 有価証券報告書 第119期(2023年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】【役員の状況】【対処すべき課題等】・第120期(2024年3月期)【対処すべき課題等】、統合報告書2023
出所:トヨタ自動車 有価証券報告書 第119期(2023年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】【役員の状況】【対処すべき課題等】・第120期(2024年3月期)【対処すべき課題等】、統合報告書2023
当時の取締役 9名

当時の取締役(2022年6月株主総会決議)

  • 内山田竹志:会長
  • 早川茂:副会長
  • 豊田章男:社長
  • 菅原郁郎:取締役
  • SirPhilipCraven:取締役
  • 工藤禎子:取締役
  • JamesKuffner:取締役
  • 近健太:取締役
  • 前田昌彦:取締役
参考文献

参考文献

参考
  • トヨタ自動車 説明会資料「新体制方針説明会」
  • トヨタ自動車 統合報告書「統合報告書2023」
  • トヨタ自動車 有価証券報告書「第118期(2022年3月期)【対処すべき課題等】【役員の状況】」
  • トヨタ自動車 有価証券報告書「第119期(2023年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】【役員の状況】【対処すべき課題等】」
  • トヨタ自動車 有価証券報告書「第120期(2024年3月期)【対処すべき課題等】」
  • トヨタ自動車 有価証券報告書「第121期(2025年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】【事業等のリスク】」

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