ソニー:VAIO譲渡からソニーフィナンシャルHDの完全子会社化まで
2014年〜VAIOの譲渡とテレビの分社、モバイルの減損1,760億円と売上高8兆5,000億円の未達
平井一夫氏が就任後に掲げた第一次中期経営計画は、2014年度に売上高8兆5,000億円、営業利益率5%以上、ROE10%を上げる目標を置いた。最終年度の実績は売上高8兆2,159億円、営業利益率0.8%、ROEはマイナス5.5%にとどまり、配当も見送った。この年度の構造改革費用は906億8,900万円に達した。十時裕樹氏はCFOとして2019年に、この時期の出発点を『ソニーは過去、業績のボラティリティが高いという、経営上の課題がありました』と振り返っている。第一次中計以降の改革は、売上の大きさではなく利益の質を変えることに向けられ、継続して入るリカーリング収益を軸に据えた。規模の目標が外れた時点で、物差しそのものを替える必要が生じていたとみられる。
- ソニー『コーポレートレポート 2019』
- [1]第一次中期経営計画(2012〜2014年度)の経営数値目標 売上高8兆5,000億円、営業利益率5%以上、ROE10%
- [2]2014年度実績 売上高8兆2,159億円、営業利益率0.8%、ROE△5.5%。最終年度の決算で配当の実施を見送った
- ソニー 有価証券報告書(2015年3月期)連結財務諸表注記「構造改革にかかる費用」
- [3]2015年3月期の構造改革費用90,689百万円(2011年3月期〜2019年3月期で最大)
- ソニー『コーポレートレポート 2019』CFOメッセージ(十時裕樹)
- [4]業績のボラティリティの高さという課題に対し、第一次中期経営計画以降は各事業の構造改革で利益の質を変えることに注力し、リカーリング収益に軸足を置いたビジネスモデルへの変革を目指した
2014年2月6日、ソニーはPC事業の収束とテレビ事業の分社化を同じ取締役会で決めた。PC事業は日本産業パートナーズ側へ譲り、7月1日にVAIO株式会社への引き渡しを終えた。PC事業では2013年度に長期性資産を128億1,700万円減損し、部品在庫も評価減していた。同じ日にテレビ事業は、ソニービジュアルプロダクツとして本体を離れた。2015年5月のIR Dayで、ソニービジュアルプロダクツ社長の高木一郎氏はテレビが前年度に黒字化したと報告した。その支えには規律ある費用計画とROIC重視のサプライチェーン管理を挙げ、売上計画も堅実な水準を前提に組むとした。PCとテレビのうち、採算を立て直す道筋が描けた方だけを分社で手元に残したのだろう。
- ソニー 有価証券報告書(2014年3月期)【対処すべき課題】
- [5]2014年2月6日 PC事業の収束とテレビ事業の分社化を決議・発表
- ソニー 有価証券報告書(2015年3月期)連結財務諸表注記「事業売却」
- [6]日本産業パートナーズ傘下の法人が設立した会社への譲渡で、2014年7月1日にVAIO株式会社への譲渡が完了
- ソニー 有価証券報告書(2014年3月期)連結財務諸表注記「構造改革にかかる費用及び資産の減損」
- [7]2013年度 PC事業の長期性資産の減損12,817百万円、余剰となった手元部品在庫の評価減など17,391百万円
- ソニー『コーポレートレポート 2019』
- [8]2014年7月1日 テレビ事業を分社化し、ソニービジュアルプロダクツ株式会社が発足
- ソニー IR Day 2015 説明資料「ホームエンタテインメント&サウンド分野」(2015年5月27日)
- [9]テレビ事業の方針として「前年度黒字化の3つの原動力」をさらに深化させ、安定的収益基盤を完成するとした。説明者はソニービジュアルプロダクツ代表取締役社長 高木一郎
- [10]黒字化の原動力としてコスト競争力(堅実な売上計画を前提に規律ある費用計画を策定済み)とオペレーション力(ROIC重視のサプライチェーンマネジメントの継続強化)を挙げる
スマートフォンは2014年度に2,204億円の営業損失を出し、そのうち1,760億円は営業権の減損だった。ソニーモバイルコミュニケーションズ社長の十時氏は2015年5月のIR Dayで、2016年度の黒字化に向けて構造改革をやり遂げる方針を示した。商品モデルの数を絞って経営資源を寄せ、中国は縮めた体制のまま最小限の費用で続け、米州は高付加価値の機種に限って赤字を抑えるとした。13あった営業組織は5つの地域にまとめ、地域ごとに投資効率と収益を管理する形へ改めた。2014年度には、エレクトロニクスを中心に連結の人員が約9,200名減っていた。台数の回復より、損失の出口をふさぐことを先に置いた再建策と推察される。
- ソニー IR Day 2015 説明資料「モバイル・コミュニケーション分野」(2015年5月27日)
- [11]モバイル・コミュニケーション分野の2014年度営業損益は△2,204億円。営業権の減損1,760億円が主な減益要因
- [12]2015年度経営方針「2016年度に黒字化を実現するための構造改革完遂」。説明者はソニーモバイルコミュニケーションズ代表取締役社長兼CEO 十時裕樹
- [13]商品モデル数の削減による経営資源の集中化。中国は事業規模を大幅に縮小し最小限の費用で展開、米州はオペレーターを集中し高付加価値帯商品のみで赤字を最小限化
- [14]13の営業組織を5つの地域に分け、地域毎に最適なセールスマーケティング戦略を構築し、投資効率を高め収益管理を強化する
- ソニー 有価証券報告書(2015年3月期)【従業員の状況】
- [15]2014年度に構造改革でエレクトロニクスを中心に約9,200名減、連結従業員数は約131,700名
参考文献[1]-[15]
- ソニー『コーポレートレポート 2019』
- [1]第一次中期経営計画(2012〜2014年度)の経営数値目標 売上高8兆5,000億円、営業利益率5%以上、ROE10%
- [2]2014年度実績 売上高8兆2,159億円、営業利益率0.8%、ROE△5.5%。最終年度の決算で配当の実施を見送った
- [8]2014年7月1日 テレビ事業を分社化し、ソニービジュアルプロダクツ株式会社が発足
- ソニー 有価証券報告書(2015年3月期)連結財務諸表注記「構造改革にかかる費用」
- [3]2015年3月期の構造改革費用90,689百万円(2011年3月期〜2019年3月期で最大)
- ソニー『コーポレートレポート 2019』CFOメッセージ(十時裕樹)
- [4]業績のボラティリティの高さという課題に対し、第一次中期経営計画以降は各事業の構造改革で利益の質を変えることに注力し、リカーリング収益に軸足を置いたビジネスモデルへの変革を目指した
- ソニー 有価証券報告書(2014年3月期)【対処すべき課題】
- [5]2014年2月6日 PC事業の収束とテレビ事業の分社化を決議・発表
- ソニー 有価証券報告書(2015年3月期)連結財務諸表注記「事業売却」
- [6]日本産業パートナーズ傘下の法人が設立した会社への譲渡で、2014年7月1日にVAIO株式会社への譲渡が完了
- ソニー 有価証券報告書(2014年3月期)連結財務諸表注記「構造改革にかかる費用及び資産の減損」
- [7]2013年度 PC事業の長期性資産の減損12,817百万円、余剰となった手元部品在庫の評価減など17,391百万円
- ソニー IR Day 2015 説明資料「ホームエンタテインメント&サウンド分野」(2015年5月27日)
- [9]テレビ事業の方針として「前年度黒字化の3つの原動力」をさらに深化させ、安定的収益基盤を完成するとした。説明者はソニービジュアルプロダクツ代表取締役社長 高木一郎
- [10]黒字化の原動力としてコスト競争力(堅実な売上計画を前提に規律ある費用計画を策定済み)とオペレーション力(ROIC重視のサプライチェーンマネジメントの継続強化)を挙げる
- ソニー IR Day 2015 説明資料「モバイル・コミュニケーション分野」(2015年5月27日)
- [11]モバイル・コミュニケーション分野の2014年度営業損益は△2,204億円。営業権の減損1,760億円が主な減益要因
- [12]2015年度経営方針「2016年度に黒字化を実現するための構造改革完遂」。説明者はソニーモバイルコミュニケーションズ代表取締役社長兼CEO 十時裕樹
- [13]商品モデル数の削減による経営資源の集中化。中国は事業規模を大幅に縮小し最小限の費用で展開、米州はオペレーターを集中し高付加価値帯商品のみで赤字を最小限化
- [14]13の営業組織を5つの地域に分け、地域毎に最適なセールスマーケティング戦略を構築し、投資効率を高め収益管理を強化する
- ソニー 有価証券報告書(2015年3月期)【従業員の状況】
- [15]2014年度に構造改革でエレクトロニクスを中心に約9,200名減、連結従業員数は約131,700名
2015年〜ROE10%の第二次中計と月産8万7,000枚への増強、電池の譲渡と7,349億円の営業利益
2015年2月18日の中期経営方針は、ROEを最も重視する指標とし、2017年度にROE10%以上、営業利益5,000億円以上を目標に据えた。事業は成長牽引・安定収益・事業変動リスクコントロールの3領域に分け、テレビとスマートフォンは投下資本を抑える側に回した。各事業には、グループのROE目標とつながるROICの目標値を持たせた。十時氏はのちに、ROICで事業を管理した理由として、投下資本の効率を上げることと、数年単位の現金創出を単年度の損益より優先することを挙げた。分社を進める目的も、事業ごとの結果責任を明確にし、判断を速めることに置いた。資本の使い方を事業単位で問える形へ組み替える計画だったと思われる。
- ソニー ニュースリリース「2015~2017年度中期経営方針」(2015年2月18日)
- [16]2015年2月18日 2015〜2017年度の中期経営方針を発表。ROEを最も重視する経営指標とし、2017年度にグループ連結でROE10%以上、営業利益5,000億円以上を目標とする
- [17]各事業を成長牽引・安定収益・事業変動リスクコントロールの3領域に分類し、テレビとモバイル・コミュニケーションは事業変動リスクコントロール領域で投下資本を抑える
- [18]グループ全体のROE目標に紐づく事業ごとの投下資本利益率(ROIC)の目標値を設定
- [20]分社化の目的は①結果責任・説明責任の明確化 ②持続的な利益創出を念頭に置いた経営 ③意思決定の迅速化と事業競争力の強化
- ソニー『コーポレートレポート 2019』CFOメッセージ(十時裕樹)
- [19]各事業の投下資本効率を高めるためにROICによる管理を行い、短期的なP/L上の収益ではなく中期的なキャッシュ・フローを重視することとした
成長牽引領域に位置づけたデバイス分野では、イメージセンサーの増産に資本を振り向けた。2015年2月には、長崎・熊本・山形の3拠点で約1,050億円の設備投資を発表した。5月のIR Dayでは、2014年11月に月6万枚だったウェーハ生産能力を2016年9月に8万7,000枚へ上げる計画を示した。担当副社長の鈴木智行氏は、効率的な投資でROICを改善させる方針を添えた。2016年4月には半導体事業をソニーセミコンダクタソリューションズとして分社し、同年度に東芝から半導体事業を取得した。反対に電池事業は村田製作所グループへ譲り、2017年9月1日に引き渡した。投下資本を回収できる見込みで、残す事業と手放す事業を分けた配置だっただろう。
- ソニー ニュースリリース「2015~2017年度中期経営方針」(2015年2月18日)
- [21]デバイス・ゲーム&ネットワークサービス・映画・音楽は成長牽引領域で積極的に資本投下
- ソニー IR Day 2015 説明資料「デバイス分野」(2015年5月27日)
- [22]2015年2月発表 長崎・熊本・山形テクノロジーセンターで約1,050億円の設備投資
- [23]イメージセンサーのウェーハ生産能力(300mm換算・千枚/月)は2014年11月60、2015年8月68(計画)、2016年9月87(計画)
- [24]顧客のニーズに応えるため積極的なキャパシティ増強を実行し、効率的な投資を行いROICを改善させていく。説明者は執行役副社長 鈴木智行
- ソニー 有価証券報告書 第103期(2020年3月期)【沿革】
- [25]2016年4月 半導体事業を分社化し、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社が営業を開始
- ソニー 有価証券報告書 第100期(2017年3月期)【従業員の状況】
- [26]東芝からの半導体事業の買収などにより連結従業員数が約3,100名増加
- ソニー 有価証券報告書 第101期(2018年3月期)連結財務諸表注記「事業売却」
- [27]2016年10月31日に電池事業の村田製作所グループへの譲渡の確定契約を締結し、2017年9月1日に譲渡を完了
2017年度の営業利益は7,349億円、ROEは18%となり、第二次中計の2つの目標をともに上回った。ただし映画は2016年度に営業権1,120億6,900万円を減損し、モバイルとともに分野別の計画に届かなかった。翌2018年度も最高益を更新し、大型買収をした音楽を除く全事業で、営業と投資のキャッシュ・フローの合計が黒字になった。十時氏はこれを受けて『過去、最高益を達成した翌年に大きな減益を計上することが多かったソニーにとって、この持続性の意味は大きいととらえています』と記した。そのうえで、ここまでの利益を一連の改革の成果と位置づけた。利益の高さそのものより、好業績が翌年に崩れないことを改革の到達点として数えたのである。
- ソニー『コーポレートレポート 2019』
- [28]第二次中期経営計画の目標(営業利益5,000億円以上・ROE10%以上)に対し、2017年度実績は営業利益7,349億円・ROE18%
- [30]分野別では映画・モバイル・コミュニケーション分野が計画未達
- ソニー 有価証券報告書 第100期(2017年3月期)【セグメント情報】
- [29]2017年3月期 映画分野は営業損失80,521百万円。営業権の減損損失112,069百万円を計上
- ソニー『コーポレートレポート 2019』CFOメッセージ(十時裕樹)
- [31]2018年度は大型M&Aを行った音楽事業を除き、全事業で営業キャッシュ・フローと投資キャッシュ・フローの合計がプラス
- [32]2018年度は2期連続の最高益を計上
- [33]これまでの改革の成果として、構造的に利益創出の力がついてきたと評価
参考文献[16]-[33]
- ソニー ニュースリリース「2015~2017年度中期経営方針」(2015年2月18日)
- [16]2015年2月18日 2015〜2017年度の中期経営方針を発表。ROEを最も重視する経営指標とし、2017年度にグループ連結でROE10%以上、営業利益5,000億円以上を目標とする
- [17]各事業を成長牽引・安定収益・事業変動リスクコントロールの3領域に分類し、テレビとモバイル・コミュニケーションは事業変動リスクコントロール領域で投下資本を抑える
- [18]グループ全体のROE目標に紐づく事業ごとの投下資本利益率(ROIC)の目標値を設定
- [20]分社化の目的は①結果責任・説明責任の明確化 ②持続的な利益創出を念頭に置いた経営 ③意思決定の迅速化と事業競争力の強化
- [21]デバイス・ゲーム&ネットワークサービス・映画・音楽は成長牽引領域で積極的に資本投下
- ソニー『コーポレートレポート 2019』CFOメッセージ(十時裕樹)
- [19]各事業の投下資本効率を高めるためにROICによる管理を行い、短期的なP/L上の収益ではなく中期的なキャッシュ・フローを重視することとした
- [31]2018年度は大型M&Aを行った音楽事業を除き、全事業で営業キャッシュ・フローと投資キャッシュ・フローの合計がプラス
- [32]2018年度は2期連続の最高益を計上
- [33]これまでの改革の成果として、構造的に利益創出の力がついてきたと評価
- ソニー IR Day 2015 説明資料「デバイス分野」(2015年5月27日)
- [22]2015年2月発表 長崎・熊本・山形テクノロジーセンターで約1,050億円の設備投資
- [23]イメージセンサーのウェーハ生産能力(300mm換算・千枚/月)は2014年11月60、2015年8月68(計画)、2016年9月87(計画)
- [24]顧客のニーズに応えるため積極的なキャパシティ増強を実行し、効率的な投資を行いROICを改善させていく。説明者は執行役副社長 鈴木智行
- ソニー 有価証券報告書 第103期(2020年3月期)【沿革】
- [25]2016年4月 半導体事業を分社化し、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社が営業を開始
- ソニー 有価証券報告書 第100期(2017年3月期)【従業員の状況】
- [26]東芝からの半導体事業の買収などにより連結従業員数が約3,100名増加
- ソニー 有価証券報告書 第101期(2018年3月期)連結財務諸表注記「事業売却」
- [27]2016年10月31日に電池事業の村田製作所グループへの譲渡の確定契約を締結し、2017年9月1日に譲渡を完了
- ソニー『コーポレートレポート 2019』
- [28]第二次中期経営計画の目標(営業利益5,000億円以上・ROE10%以上)に対し、2017年度実績は営業利益7,349億円・ROE18%
- [30]分野別では映画・モバイル・コミュニケーション分野が計画未達
- ソニー 有価証券報告書 第100期(2017年3月期)【セグメント情報】
- [29]2017年3月期 映画分野は営業損失80,521百万円。営業権の減損損失112,069百万円を計上
2018年〜営業キャッシュ・フロー2兆円の第三次中計、半導体分離要求の拒否とソニーFHの完全子会社化3,967億円
2018年4月に吉田憲一郎氏が社長兼CEOに就き、5月22日の第三次中期経営計画は3年累計の営業キャッシュ・フローを最も重い指標に据えた。利益は特殊要因や会計処理で振れるので、数年分の現金の出入りで事業を測る、というのが十時氏の説明だった。テレビ、カメラ、スマートフォンはブランデッドハードウェアと括られ、規模を追わずに現金を生む役を負った。2019年10月の説明会でソニーは、スマートフォンで短期に上振れを追うのは危ういとした。そのうえで『まずは体質を筋肉質に変えてその上で自分達のポジショニングをきちんと見出していくということに注力するのが戦略の方向性かなと思っています』と答えた。損益分岐点は当初の目論見より下げられるとも述べた。台数の回復を待たず、固定費の側から採算を作り直す答えと読める。
- ソニー 有価証券報告書 第102期(2019年3月期)【役員の状況】
- [34]2018年4月 吉田憲一郎氏が代表執行役社長兼CEOに就任(前任は平井一夫氏)
- ソニー ニュースリリース「2018~2020年度中期経営方針」(2018年5月22日)
- [35]2018年5月22日 第三次中期経営計画を発表。営業キャッシュフローを最も重視する経営指標とし、3年間累計の指標を用いる
- [37]HE&S・IP&S・MCの3セグメントをブランデッドハードウェアと定義し、規模を追わずキャッシュカウと位置づける
- ソニー『コーポレートレポート 2019』CFOメッセージ(十時裕樹)
- [36]3年間累計の営業キャッシュ・フロー目標は、一時的な要因や会計上の処理に左右されない複数年にわたるキャッシュ創出力を重視することを表す
- ソニー 2019年度第2四半期連結業績説明会 アナリスト・投資家向けセッション Q&A(要旨)(2019年10月30日)
- [38]スマートフォン(というフォーンファクター)で短期的にアップサイドを追いかけるのは企業リスクも大きく難しいと回答
- [39]体質を筋肉質に変え、そのうえで自社のポジショニングを見出すことに注力するのが戦略の方向性と回答
- [40]モバイルの構造改革は予定より早く進み、ブレークイーブンは当初の目論見より引き下げられる見込み。翌期の黒字化は十分達成できると回答
2019年7月30日の説明会でソニーは、半導体の分離と金融事業の売却を投資家から提案されていると認めた。そのうえで『提案を具体的に受けているのは事実ですから、これについては我々は今深く検討しておりますし、考えているという状況です』と答え、それ以上の言及は控えた。同じ場では、ソニーフィナンシャルホールディングス傘下の会社の経営に深く関わり、取締役会を通じて価値を高めたいとも述べた。9月17日、吉田氏は株主宛ての書簡で半導体を成長の中核と位置づけて分離も上場もしないと表明し、オリンパス株の売却を打ち出した。10月には、イメージセンサーの3年7,000億円の設備投資が需要に応じて数百億円増える可能性も示した。求められた2事業はどちらも手放さず、周辺の持分を現金に換える形で応じた。
- ソニー 2019年度第1四半期連結業績説明会 アナリスト・投資家向けセッション Q&A(要旨)(2019年7月30日)
- [41]投資家から半導体のスピンオフと金融事業の売却の提案を具体的に受けていることは事実と回答
- [42]提案は経営陣・取締役会として深く検討しているとし、これ以上の言及は控えると回答
- [43]SFH傘下の会社の経営に深く関与することで価値向上にやれることがあると考え、取締役会を通じてバリューアップに取り組む意思と回答
- ソニー IRニュース「Letter from the CEO to Sony's Shareholders and All Stakeholders」(2019年9月17日)
- [44]半導体事業を成長をけん引する重要な事業と位置づけ、分離・上場を行わないと表明
- [45]保有するオリンパス株式の売却をあわせて表明
- ソニー 2019年度第2四半期連結業績説明会 アナリスト・投資家向けセッション Q&A(要旨)(2019年10月30日)
- [46]2018〜2020年度の3年間で7,000億円としてきたイメージセンサーの設備投資は、需要に応えるため次の中期分を前倒しし数百億円程度増加する可能性がある
2020年5月19日、取締役会は約65%を持つソニーフィナンシャルホールディングスの完全子会社化を決め、翌日に1株2,600円の公開買付けを始めた。同日の経営方針説明会でソニーは、『35%の少数株主は我々にとってはコア事業の価値の流出と認識していた』と説明した。少数株主へ流れた純利益は過去3年平均で年約400億円あり、取り込めばEPSが8%ほど上がると試算した。同じ金額の自社株買いより1株利益を押し上げるという比較も示した。吉田氏は、上場子会社のまま独自に資金を調達させるより、判断の速さと柔軟さを取ったと位置づけた。9月に手続きを終え、取得の対価は3,967億円となった。
- ソニー 有価証券報告書 第103期(2020年3月期)【重要な後発事象】
- [47]2020年5月19日の取締役会で決議し、5月20日から公開買付けを開始。公開買付け前の所有は283,050,000株(所有割合約65%)、買付価格は普通株式1株につき2,600円
- ソニー 2020年度経営方針説明会 アナリスト・投資家向けセッション Q&A(要旨)(2020年5月19日)
- [48]SFHの完全子会社化の意義の1点目として、コア事業であり35%の少数株主はコア事業の価値の流出と認識していたと説明
- [49]過去3年平均で年間約400億円の少数株主持分による純利益の流出がある
- [50]少数株主に帰属する利益の取り込みにより、2021年度からEPSが8%程度上がると試算
- [51]少数株主持分の取り込みと税務上のメリットで400億〜500億円の純利益増となり、自社株買いを行うよりも同じ金額でよりEPSの増加に資すると説明
- ソニー『コーポレートレポート 2020』CEOメッセージ(吉田憲一郎)
- [52]上場子会社という一定の制約のもとに独自の資金調達手段を保持させるよりも、迅速かつ柔軟な経営判断を優先し経営のオプショナリティを上げることを完全子会社化の理由とする
- ソニーグループ 有価証券報告書 第104期(2021年3月期)【資本勘定】
- [53]2020年9月に完全子会社化。普通株式及び新株予約権の全ての取得にかかる対価は396,698百万円
参考文献[34]-[53]
- ソニー 有価証券報告書 第102期(2019年3月期)【役員の状況】
- [34]2018年4月 吉田憲一郎氏が代表執行役社長兼CEOに就任(前任は平井一夫氏)
- ソニー ニュースリリース「2018~2020年度中期経営方針」(2018年5月22日)
- [35]2018年5月22日 第三次中期経営計画を発表。営業キャッシュフローを最も重視する経営指標とし、3年間累計の指標を用いる
- [37]HE&S・IP&S・MCの3セグメントをブランデッドハードウェアと定義し、規模を追わずキャッシュカウと位置づける
- ソニー『コーポレートレポート 2019』CFOメッセージ(十時裕樹)
- [36]3年間累計の営業キャッシュ・フロー目標は、一時的な要因や会計上の処理に左右されない複数年にわたるキャッシュ創出力を重視することを表す
- ソニー 2019年度第2四半期連結業績説明会 アナリスト・投資家向けセッション Q&A(要旨)(2019年10月30日)
- [38]スマートフォン(というフォーンファクター)で短期的にアップサイドを追いかけるのは企業リスクも大きく難しいと回答
- [39]体質を筋肉質に変え、そのうえで自社のポジショニングを見出すことに注力するのが戦略の方向性と回答
- [40]モバイルの構造改革は予定より早く進み、ブレークイーブンは当初の目論見より引き下げられる見込み。翌期の黒字化は十分達成できると回答
- [46]2018〜2020年度の3年間で7,000億円としてきたイメージセンサーの設備投資は、需要に応えるため次の中期分を前倒しし数百億円程度増加する可能性がある
- ソニー 2019年度第1四半期連結業績説明会 アナリスト・投資家向けセッション Q&A(要旨)(2019年7月30日)
- [41]投資家から半導体のスピンオフと金融事業の売却の提案を具体的に受けていることは事実と回答
- [42]提案は経営陣・取締役会として深く検討しているとし、これ以上の言及は控えると回答
- [43]SFH傘下の会社の経営に深く関与することで価値向上にやれることがあると考え、取締役会を通じてバリューアップに取り組む意思と回答
- ソニー IRニュース「Letter from the CEO to Sony's Shareholders and All Stakeholders」(2019年9月17日)
- [44]半導体事業を成長をけん引する重要な事業と位置づけ、分離・上場を行わないと表明
- [45]保有するオリンパス株式の売却をあわせて表明
- ソニー 有価証券報告書 第103期(2020年3月期)【重要な後発事象】
- [47]2020年5月19日の取締役会で決議し、5月20日から公開買付けを開始。公開買付け前の所有は283,050,000株(所有割合約65%)、買付価格は普通株式1株につき2,600円
- ソニー 2020年度経営方針説明会 アナリスト・投資家向けセッション Q&A(要旨)(2020年5月19日)
- [48]SFHの完全子会社化の意義の1点目として、コア事業であり35%の少数株主はコア事業の価値の流出と認識していたと説明
- [49]過去3年平均で年間約400億円の少数株主持分による純利益の流出がある
- [50]少数株主に帰属する利益の取り込みにより、2021年度からEPSが8%程度上がると試算
- [51]少数株主持分の取り込みと税務上のメリットで400億〜500億円の純利益増となり、自社株買いを行うよりも同じ金額でよりEPSの増加に資すると説明
- ソニー『コーポレートレポート 2020』CEOメッセージ(吉田憲一郎)
- [52]上場子会社という一定の制約のもとに独自の資金調達手段を保持させるよりも、迅速かつ柔軟な経営判断を優先し経営のオプショナリティを上げることを完全子会社化の理由とする
- ソニーグループ 有価証券報告書 第104期(2021年3月期)【資本勘定】
- [53]2020年9月に完全子会社化。普通株式及び新株予約権の全ての取得にかかる対価は396,698百万円
筆者考察
この7年間にソニーは中期経営計画を3度立て、そのたびに最も重く見る物差しを替えた。2012年の計画は売上高8兆5,000億円を掲げて届かず、2015年の計画はROEと営業利益に絞って2017年度に7,349億円、ROE18%で超えた。2018年の計画は3年累計の営業キャッシュ・フローを据えている。十時裕樹氏が出発点に置いたのは業績の振れの大きさで、物差しが規模から資本効率、さらに現金へ移る間に、事業は次々と子会社へ切り出された。目標が達成できるようになったのは、事業ごとに資本の使い方を問える組織へ作り替えた後だった。
2014年〜2020年の業績
| 決算期 | 区分 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 | 主な投資 | ||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 億円 | YoY | 億円 | 億円 | 利益率 | |||
| 2014年03月期 | 連結 | 77,672 | n/a | 257 | ▲1,283 | ▲1.7% | n/a |
| 2015年03月期 | 連結 | 82,158 | +5.8% | 397 | ▲1,259 | ▲1.5% | n/a |
| 2016年03月期 | 連結 | 81,057 | ▲1.3% | 3,045 | 1,477 | 1.8% | n/a |
| 2017年03月期 | 連結 | 76,032 | ▲6.2% | 2,516 | 732 | 1.0% | n/a |
| 2018年03月期 | 連結 | 85,439 | +12.4% | 6,990 | 4,907 | 5.7% | n/a |
| 2019年03月期 | 連結 | 86,656 | +1.4% | 10,116 | 9,162 | 10.6% | n/a |
| 2020年03月期 | 連結 | 82,598 | ▲4.7% | 7,994 | 5,821 | 7.0% | n/a |
出所:有価証券報告書
出典・参考
24件
- ソニー 有価証券報告書(2014年3月期)【対処すべき課題】
- ソニー 有価証券報告書(2014年3月期)連結財務諸表注記「構造改革にかかる費用及び資産の減損」
- ソニー 有価証券報告書(2015年3月期)連結財務諸表注記「構造改革にかかる費用」
- ソニー 有価証券報告書(2015年3月期)連結財務諸表注記「事業売却」
- ソニー 有価証券報告書(2015年3月期)【従業員の状況】
- ソニー ニュースリリース「2015~2017年度中期経営方針」(2015年2月18日)
- ソニー 有価証券報告書 第100期(2017年3月期)【従業員の状況】
- ソニー 有価証券報告書 第100期(2017年3月期)【セグメント情報】
- ソニー 有価証券報告書 第101期(2018年3月期)連結財務諸表注記「事業売却」
- ソニー ニュースリリース「2018~2020年度中期経営方針」(2018年5月22日)
- ソニー 有価証券報告書 第102期(2019年3月期)【役員の状況】
- ソニー 有価証券報告書 第103期(2020年3月期)【沿革】
- ソニー 有価証券報告書 第103期(2020年3月期)【重要な後発事象】
- ソニーグループ 有価証券報告書 第104期(2021年3月期)【資本勘定】
- ソニー IR Day 2015 説明資料「ホームエンタテインメント&サウンド分野」(2015年5月27日)
- ソニー IR Day 2015 説明資料「モバイル・コミュニケーション分野」(2015年5月27日)
- ソニー IR Day 2015 説明資料「デバイス分野」(2015年5月27日)
- ソニー『コーポレートレポート 2019』
- ソニー『コーポレートレポート 2019』CFOメッセージ(十時裕樹)
- ソニー 2019年度第2四半期連結業績説明会 アナリスト・投資家向けセッション Q&A(要旨)(2019年10月30日)
- ソニー 2019年度第1四半期連結業績説明会 アナリスト・投資家向けセッション Q&A(要旨)(2019年7月30日)
- ソニー IRニュース「Letter from the CEO to Sony's Shareholders and All Stakeholders」(2019年9月17日)
- ソニー 2020年度経営方針説明会 アナリスト・投資家向けセッション Q&A(要旨)(2020年5月19日)
- ソニー『コーポレートレポート 2020』CEOメッセージ(吉田憲一郎)