資本市場と株主
戦後の財閥解体で放出された株式は、高度成長期に取引先と主力銀行の持ち合いで固定された。設備資金は主力銀行の融資で賄われ、株主総会の票は総会の前から決まっていた。資本市場の決断は、誰を株主に迎え、その株主に何を説明するかを問うてきた。
1950年代から、技術導入の対価となる出資と国内の持ち合いで資本提携と政策保有が積み上がった。1980年代には専売公社と国鉄が株式会社となり、民営化と政府株の放出が始まった。2000年代には資金需要のない会社の株式上場と、投資ファンドの資金を使ったMBOによる上場廃止が並んだ。2020年代には株主提案への対応が前に出て、2021年に東芝は取締役の再任を総会で否決された。
2015年以降、政策保有株式は保有目的と検証結果の開示を求められ、機関投資家は議決権行使の説明を求められている。提案の可否も、保有の継続も、資本配分の説明で決まるようになった。いま問われているのは、株主名簿に載った相手へ資本の使途を数値で示せるかである。
論点と年代
| 論点 | 事例 | 切り口 | 〜1940 | 1950 | 1960 | 1970 | 1980 | 1990 | 2000 | 2010 | 2020 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 株式上場 | 115 | 1 | 2 | 6 | 5 | 11 | 14 | 43 | 23 | 11 | |
| 株主提案への対応 | 87 | 2 | 1 | 1 | 11 | 14 | 60 | ||||
| 上場廃止 | 101 | 0 | 1 | 4 | 15 | 23 | 58 | ||||
| 資本提携と政策保有 | 172 | 0 | 5 | 7 | 8 | 6 | 7 | 11 | 43 | 33 | 52 |
| 民営化と政府株の放出 | 15 | 0 | 1 | 3 | 1 | 6 | 3 | 1 |
株式上場
持株会社ムニノバへ移行1982年からのアイフルの上場の終了と純粋持株会社への統制の移管テクセンドの東証上場半導体フォトマスク事業の分社化と、プライム市場への切り出し上場東証プライムへ上場売出しの縮小による募集の組み直しと、公開価格1,455円での株式公開日本郵政の第2次売出しと自己株取得自己株式取得による親会社持分の約89%から61%への引き下げスタンダード市場へ移行東証再編を機としたプライム市場の見送りという上場区分の選択プライム上場と資本独立富士通・パナソニック・日本政策投資銀行という親会社株主からの離脱株式10分割と自社株買い自己株式の消却と1株10株の分割による、投資単位の引き下げPDハウス展開へ上場パーキンソン病専門住宅の全国展開に向けた東証グロース市場への株式公開
創業家企業の上場
カーライルとの共同出資ファンドへの株式譲渡と、創業家持分約20%を残す方式での資本再編マザーズへ株式上場創業家が過半を持ち続けたままの株式公開と、支配権を譲らない資金調達東証マザーズへ上場PEファンドの出口として設計された、投資回収のための株式公開
15件を見る株主提案への対応
OASISの社外取締役選任提案を否決NTT出身7名への独立性批判と指名委員会の答申による反論英パリサーのABF要求株主が突きつけた「価値向上プラン」と、事業価値の顕在化を迫る圧力買収への対応方針の廃止提案を否決2件の株主提案と22.37%・38.38%での否決イオンとの資本提携解消創業家が主導した買収防衛策の導入と、独立経営への回帰坂井一也氏が社長就任アクティビストの圧力下で踏み切った森下一喜体制からの刷新ソニー・ミュージックとの資本業務提携孫泰蔵氏系の持分のソニー系への移転と独立性を残す提携シティインデックスイレブンスらの大量保有赤字決算での年間75円の配当維持と、自己株式取得・次期配当の保留ナナホシの中期経営計画提案を否決ROIC等の開示を定款に求める提案と17.08%での否決
株主提案後の取締役会改革
OASISの社外取締役選任提案を否決NTT出身7名への独立性批判と指名委員会の答申による反論買収への対応方針の廃止提案を否決2件の株主提案と22.37%・38.38%での否決ナナホシの中期経営計画提案を否決ROIC等の開示を定款に求める提案と17.08%での否決
21件を見る政策保有株への株主提案
イオンとの資本提携解消創業家が主導した買収防衛策の導入と、独立経営への回帰ソニー・ミュージックとの資本業務提携孫泰蔵氏系の持分のソニー系への移転と独立性を残す提携デジタルガレージへ出資DG株の追加取得で持分法適用関連会社化、半年後に評価損449億円
14件を見る上場廃止
LINEヤフーとの買収争奪戦非公開化の是非をめぐる対抗提案の応酬と、買い手の選択タカラバイオをTOB子会社化上場子会社を取り込んでの親子上場の解消と、意思決定の一本化壱番屋の非公開化検討ROE低迷下での過半保有子会社の見直しSFPホールディングスの吸収合併上場子会社の買収ではなく合併による持株会社2社の一本化ワールドとの経営統合単独の構造改革の途上での、共同株式移転による同業ワールドとの合流TSIホールディングスとの経営統合買収路線から、対等の精神による共同持株会社へベインキャピタルとのMBO創業者3氏の持株54.65%の譲渡と再出資による非公開化KKRによる非公開化多角化の主導者を株主が退けた末の、市場からの退出の受け入れ
上場廃止の101件を見る資本提携と政策保有
米Ontoと資本業務提携カーライル系ファンドが保有する株式27%の提携先への移管と、株主構成の入れ替え壱番屋の非公開化検討ROE低迷下での過半保有子会社の見直しイオンとの資本提携解消創業家が主導した買収防衛策の導入と、独立経営への回帰ソニー・ミュージックとの資本業務提携孫泰蔵氏系の持分のソニー系への移転と独立性を残す提携ハウス食品による非公開化検討親会社が議決権51.0%を保有したまま続いた上場の見直し日本製紙の売出しと自己株式取得上限300億円の買付けで需給への影響を緩和デジタルガレージへ出資DG株の追加取得で持分法適用関連会社化、半年後に評価損449億円池田泉州ホールディングスとの経営統合で基本合意総資産で上回る地銀の、相手持株会社の子会社への移行と上場の終了
資本提携と政策保有の172件を見る民営化と政府株の放出
日本郵政の第2次売出しと自己株取得自己株式取得による親会社持分の約89%から61%への引き下げ経営安定基金の取崩しと上場鉄道資産の一括減損を先に済ませ、自立を前提に踏み切った東証一部への株式公開ゆうちょ・かんぽ同時上場親子3社を一度に市場へ出す最後の大型民営化預金保険機構による民営化足利銀行全株式の取得と、東証一部への直接上場による再出発郵政民営化でのゆうちょ銀行開業国営の郵便貯金事業を条件付きの銀行免許で民間銀行へ移管した選択東証一部上場で完全民営化52年ぶりに国の後ろ盾を放棄し、市場の評価に身を置く体制への移行石油公団株の売り出しで上場東証一部上場の実現と、開発会社統合構想からの離脱株式売却で完全民営化三次にわたる株式売却と、JR会社法からの離脱
民営化と政府株の放出の15件を見る