キオクシアホールディングス 東証プライムへ上場 一度中止した募集の4年越しの組み直しと、公開価格1,455円での株式公開

更新:

時期 2024年11月
当時の社長 早坂伸夫
論点 PEオーナーの出口と資本基盤の拡充
何をなぜ決めたか
概要

2024年12月18日、キオクシアホールディングスが東京証券取引所プライム市場に上場した経営判断である。発行価格・売出価格は1株1,455円、公募は21,562,500株、総売出しは50,380,100株、オーバーアロットメントによる売出しは10,791,300株であった。公募の払込金総額は29,969,503,125円で、うち14,984,751,563円を資本金に組み入れ、上場時資本金は24,984,751,563円となった。

背景

2020年8月27日と9月17日の取締役会で決議した新株式発行および株式売出しは、9月28日の取締役会で中止が決まり、上場手続きは延期された。理由に挙げたのは、株式市場の動向と新型コロナウイルス感染の再拡大への懸念である。当時の銘柄コードは6600で、適切な上場時期を引き続き検討するとして、そこから4年が空いた。

内容

仮条件は1,390円から1,520円で、国内外の機関投資家を中心とするブックビルディングでは総需要株式数が公開株式数を上回った。引受価額は国内1,389.89円、海外1,396.80円。売出人は東芝が37,728,900株、BCPE Pangea Cayman, L.P.が12,651,200株で、新株の手取金は全額をキオクシア株式会社への投融資資金に充て、四日市工場と北上工場の第8世代フラッシュメモリ向け前工程設備と建屋に投じる。

含意

上場前に39.68%を保有していた東芝は2025年3月末に30.50%、2026年3月末には17.59%まで持分を落とし、ベインキャピタル系4社も51.11%から21.87%へ下げた。2025年10月16日には筆頭株主が東芝からBCPE Pangea Cayman, L.P.へ入れ替わっている。2026年3月期の売上収益は2兆3,376億円、営業利益は8,704億円で、上場前年の営業損失2,527億円から反転した。

いつ何が起きたか 7件
筆者の見解
筆者の見解

資金より持分を出した上場

この上場で会社の手に入った資金は、公募の払込金総額でおよそ300億円にとどまる。一方で市場に出た株式は8,273万株で、その大半は東芝とベインキャピタル系が売り出した持分だった。四年前に自ら取り下げた募集を組み直すにあたり、公募より売出しを厚くした設計は、事業の資金調達というより株主の持分整理を主眼にしたものだったと推察される。上場の日に動いたのは、事業の中身ではなく資本の名義である。

もっとも、その整理は上場の日で終わっていない。流通株式比率は2025年3月末で29.81%にとどまり、大規模な公募・売出しを伴う新規上場の特例で10%以上に緩められた基準の上に立っている。会社は5年以内に35%以上を実現する方針を掲げ、大株主へ追加の売却を要請すると書いた。上場は出口の扉を開けただけで、誰がどこまで降りるのかは、その後の株価が決める先の話として残された。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
上場と募集・売出しの条件

上場と募集・売出しの条件

科目 概要 備考
上場日 2024年12月18日 株式受渡期日。東京証券取引所プライム市場、銘柄コードは285A
発行価格・売出価格 1株につき1,455円 2024年12月9日決定。仮条件1,390円から1,520円の中値にあたる
引受価額 1株につき1,389.89円 国内募集・国内売出しの価額。海外売出しは1株1,396.80円
会社法上の払込金額 1株につき1,181.50円 総額25,476,093,750円。引受価額がこれを下回れば発行を中止する条件
募集株式数(公募) 21,562,500株 払込期日は2024年12月17日。発行済株式総数は539,062,500株になった
払込金総額 29,969,503,125円 引受価額1,389.89円に公募21,562,500株を乗じた額
増加する資本金 14,984,751,563円 資本準備金は14,984,751,562円。上場時資本金は24,984,751,563円
総売出株式数 50,380,100株 国内売出し17,286,500株と海外売出し33,093,600株の合計
東芝の売出株式数 37,728,900株 国内12,945,700株と海外24,783,200株。新株の発行は伴わない
ベイン系の売出株式数 12,651,200株 BCPE Pangea Cayman, L.P.。国内4,340,800株と海外8,310,400株
オーバーアロットメントによる売出し 10,791,300株 三菱UFJモルガン・スタンレー証券が東芝とベイン系から借り入れた株式
グリーンシューオプション 2025年1月10日まで 借入株の返却のため10,791,300株を上限に追加取得できる権利
申込期間(国内) 2024年12月10日から13日まで ブックビルディングでは総需要株式数が公開株式数を上回った
手取金の使途 キオクシア株式会社への投融資資金 四日市・北上両工場の第8世代BiCS FLASH向け前工程設備と建屋の費用
ロックアップ 2024年12月9日から2025年6月15日 上場日後180日。東芝・ベイン系4社・HOYAと新株予約権者16名が差し入れた
共同主幹事会社 三菱UFJモルガン・スタンレー証券ほか6社 モルガン・スタンレーMUFG、野村、BofA、SMBC日興、みずほ、大和
上場時の特例 大規模な公募又は売出しを伴う新規上場に係る特例 公募・売出しの規模が1,000億円以上のため流通株式比率は10%以上で足りる
上場時の流通株式比率 29.81% 2025年3月末。5年以内に上場維持基準の35%以上を実現する方針

出所:キオクシアホールディングス 適時開示「発行価格及び売出価格の決定、総売出株式数及び国内外の売出株式数の決定並びにオーバーアロットメントによる売出しの売出株式数の決定のお知らせ」(2024年12月9日)ほか

親会社の所有者に帰属する持分と資産合計の推移

キオクシアホールディングス:親会社の所有者に帰属する持分と資産合計の推移

(百万円) 親会社の所有者に帰属する持分資産合計 備考
2022年3月期 793,8553,068,263 親会社所有者帰属持分比率は25.9%
2023年3月期 658,0682,974,470 親会社所有者帰属持分比率は22.1%
2024年3月期 449,6352,864,941 親会社所有者帰属持分比率は15.7%。上場申請の前年にあたる
2025年3月期 737,5652,919,679 12月に上場。公募で資本金は10,000から24,985百万円へ増えた
2026年3月期 1,398,9293,690,071 親会社所有者帰属持分比率は37.9%
持分と資産合計
親会社の所有者に帰属する持分(百万円)持分以外の資産(百万円)親会社の所有者に帰属する持分率(%)

出所:キオクシアホールディングス 有価証券報告書 第7期(2025年3月期)・第8期(2026年3月期)【主要な経営指標等の推移】

主要株主の保有比率

キオクシアホールディングス:主要株主の保有比率

(%) 株式会社東芝ベインキャピタル系4社 備考
2024年11月8日(上場前) 39.6854.91 ベイン系はBCPE Pangea Cayman他4エンティティの合計
2025年3月31日 30.551.11 上場で東芝37,728,900株、ベイン系12,651,200株が売り出された
2026年3月31日 17.5921.87 うち14.17%はSKハイニックスが転換社債を持つエンティティの分

出所:キオクシアホールディングス 有価証券届出書(新規公開時、2024年11月8日)第四部【株主の状況】 / キオクシアホールディングス 有価証券報告書 第7期(2025年3月期)・第8期(2026年3月期)【事業等のリスク】

売上収益と営業利益の推移

キオクシアホールディングス:売上収益と営業利益の推移

(百万円) 売上収益営業利益 備考
2022年3月期 1,526,495216,228 上場を延期した翌期にあたる
2023年3月期 1,282,101△99,015 営業損失。メモリの需給が緩んだ期
2024年3月期 1,076,584△252,698 営業損失。設備投資を一部延期した期でもある
2025年3月期 1,706,460451,748 12月に上場。株価収益率は4.6倍
2026年3月期 2,337,628870,369 株価収益率は18.6倍
売上収益と営業利益率
売上収益(百万円)営業利益率(%)

出所:キオクシアホールディングス 有価証券報告書 第7期(2025年3月期)・第8期(2026年3月期)【主要な経営指標等の推移】

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参考文献
出典・参考

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