キオクシアホールディングス 東証プライムへ上場 一度中止した募集の4年越しの組み直しと、公開価格1,455円での株式公開
更新:
何をなぜ決めたか
- 概要
-
2024年12月18日、キオクシアホールディングスが東京証券取引所プライム市場に上場した経営判断である。発行価格・売出価格は1株1,455円、公募は21,562,500株、総売出しは50,380,100株、オーバーアロットメントによる売出しは10,791,300株であった。公募の払込金総額は29,969,503,125円で、うち14,984,751,563円を資本金に組み入れ、上場時資本金は24,984,751,563円となった。
- 背景
-
2020年8月27日と9月17日の取締役会で決議した新株式発行および株式売出しは、9月28日の取締役会で中止が決まり、上場手続きは延期された。理由に挙げたのは、株式市場の動向と新型コロナウイルス感染の再拡大への懸念である。当時の銘柄コードは6600で、適切な上場時期を引き続き検討するとして、そこから4年が空いた。
- 内容
-
仮条件は1,390円から1,520円で、国内外の機関投資家を中心とするブックビルディングでは総需要株式数が公開株式数を上回った。引受価額は国内1,389.89円、海外1,396.80円。売出人は東芝が37,728,900株、BCPE Pangea Cayman, L.P.が12,651,200株で、新株の手取金は全額をキオクシア株式会社への投融資資金に充て、四日市工場と北上工場の第8世代フラッシュメモリ向け前工程設備と建屋に投じる。
いつ何が起きたか 7件
筆者の見解
資金より持分を出した上場
この上場で会社の手に入った資金は、公募の払込金総額でおよそ300億円にとどまる。一方で市場に出た株式は8,273万株で、その大半は東芝とベインキャピタル系が売り出した持分だった。四年前に自ら取り下げた募集を組み直すにあたり、公募より売出しを厚くした設計は、事業の資金調達というより株主の持分整理を主眼にしたものだったと推察される。上場の日に動いたのは、事業の中身ではなく資本の名義である。
もっとも、その整理は上場の日で終わっていない。流通株式比率は2025年3月末で29.81%にとどまり、大規模な公募・売出しを伴う新規上場の特例で10%以上に緩められた基準の上に立っている。会社は5年以内に35%以上を実現する方針を掲げ、大株主へ追加の売却を要請すると書いた。上場は出口の扉を開けただけで、誰がどこまで降りるのかは、その後の株価が決める先の話として残された。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
上場と募集・売出しの条件
上場と募集・売出しの条件
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 上場日 | 2024年12月18日 | 株式受渡期日。東京証券取引所プライム市場、銘柄コードは285A |
| 発行価格・売出価格 | 1株につき1,455円 | 2024年12月9日決定。仮条件1,390円から1,520円の中値にあたる |
| 引受価額 | 1株につき1,389.89円 | 国内募集・国内売出しの価額。海外売出しは1株1,396.80円 |
| 会社法上の払込金額 | 1株につき1,181.50円 | 総額25,476,093,750円。引受価額がこれを下回れば発行を中止する条件 |
| 募集株式数(公募) | 21,562,500株 | 払込期日は2024年12月17日。発行済株式総数は539,062,500株になった |
| 払込金総額 | 29,969,503,125円 | 引受価額1,389.89円に公募21,562,500株を乗じた額 |
| 増加する資本金 | 14,984,751,563円 | 資本準備金は14,984,751,562円。上場時資本金は24,984,751,563円 |
| 総売出株式数 | 50,380,100株 | 国内売出し17,286,500株と海外売出し33,093,600株の合計 |
| 東芝の売出株式数 | 37,728,900株 | 国内12,945,700株と海外24,783,200株。新株の発行は伴わない |
| ベイン系の売出株式数 | 12,651,200株 | BCPE Pangea Cayman, L.P.。国内4,340,800株と海外8,310,400株 |
| オーバーアロットメントによる売出し | 10,791,300株 | 三菱UFJモルガン・スタンレー証券が東芝とベイン系から借り入れた株式 |
| グリーンシューオプション | 2025年1月10日まで | 借入株の返却のため10,791,300株を上限に追加取得できる権利 |
| 申込期間(国内) | 2024年12月10日から13日まで | ブックビルディングでは総需要株式数が公開株式数を上回った |
| 手取金の使途 | キオクシア株式会社への投融資資金 | 四日市・北上両工場の第8世代BiCS FLASH向け前工程設備と建屋の費用 |
| ロックアップ | 2024年12月9日から2025年6月15日 | 上場日後180日。東芝・ベイン系4社・HOYAと新株予約権者16名が差し入れた |
| 共同主幹事会社 | 三菱UFJモルガン・スタンレー証券ほか6社 | モルガン・スタンレーMUFG、野村、BofA、SMBC日興、みずほ、大和 |
| 上場時の特例 | 大規模な公募又は売出しを伴う新規上場に係る特例 | 公募・売出しの規模が1,000億円以上のため流通株式比率は10%以上で足りる |
| 上場時の流通株式比率 | 29.81% | 2025年3月末。5年以内に上場維持基準の35%以上を実現する方針 |
親会社の所有者に帰属する持分と資産合計の推移
キオクシアホールディングス:親会社の所有者に帰属する持分と資産合計の推移
| (百万円) | 親会社の所有者に帰属する持分 | 資産合計 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2022年3月期 | 793,855 | 3,068,263 | 親会社所有者帰属持分比率は25.9% |
| 2023年3月期 | 658,068 | 2,974,470 | 親会社所有者帰属持分比率は22.1% |
| 2024年3月期 | 449,635 | 2,864,941 | 親会社所有者帰属持分比率は15.7%。上場申請の前年にあたる |
| 2025年3月期 | 737,565 | 2,919,679 | 12月に上場。公募で資本金は10,000から24,985百万円へ増えた |
| 2026年3月期 | 1,398,929 | 3,690,071 | 親会社所有者帰属持分比率は37.9% |
出所:キオクシアホールディングス 有価証券報告書 第7期(2025年3月期)・第8期(2026年3月期)【主要な経営指標等の推移】
主要株主の保有比率
キオクシアホールディングス:主要株主の保有比率
| (%) | 株式会社東芝 | ベインキャピタル系4社 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2024年11月8日(上場前) | 39.68 | 54.91 | ベイン系はBCPE Pangea Cayman他4エンティティの合計 |
| 2025年3月31日 | 30.5 | 51.11 | 上場で東芝37,728,900株、ベイン系12,651,200株が売り出された |
| 2026年3月31日 | 17.59 | 21.87 | うち14.17%はSKハイニックスが転換社債を持つエンティティの分 |
出所:キオクシアホールディングス 有価証券届出書(新規公開時、2024年11月8日)第四部【株主の状況】 / キオクシアホールディングス 有価証券報告書 第7期(2025年3月期)・第8期(2026年3月期)【事業等のリスク】
売上収益と営業利益の推移
キオクシアホールディングス:売上収益と営業利益の推移
| (百万円) | 売上収益 | 営業利益 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2022年3月期 | 1,526,495 | 216,228 | 上場を延期した翌期にあたる |
| 2023年3月期 | 1,282,101 | △99,015 | 営業損失。メモリの需給が緩んだ期 |
| 2024年3月期 | 1,076,584 | △252,698 | 営業損失。設備投資を一部延期した期でもある |
| 2025年3月期 | 1,706,460 | 451,748 | 12月に上場。株価収益率は4.6倍 |
| 2026年3月期 | 2,337,628 | 870,369 | 株価収益率は18.6倍 |
出所:キオクシアホールディングス 有価証券報告書 第7期(2025年3月期)・第8期(2026年3月期)【主要な経営指標等の推移】
同じ問いに直面した会社
同じ問いに直面した会社
参考文献
- キオクシアホールディングス 適時開示「新株式発行及び株式売出しの中止と、それに伴う上場手続きの延期に関する取締役会決議のお知らせ」(2020年9月28日)
- キオクシアホールディングス 有価証券届出書(新規公開時、2024年11月8日)第四部【株式公開情報】【株主の状況】
- キオクシアホールディングス 適時開示「募集株式発行及び株式売出しに関する取締役会決議のお知らせ」(2024年11月22日)
- キオクシアホールディングス 適時開示「募集株式の払込金額及びブックビルディングの仮条件決定のお知らせ」(2024年12月2日)
- キオクシアホールディングス 適時開示「発行価格及び売出価格の決定、総売出株式数及び国内外の売出株式数の決定並びにオーバーアロットメントによる売出しの売出株式数の決定のお知らせ」(2024年12月9日)
- キオクシアホールディングス 有価証券報告書 第7期(2025年3月期)【発行済株式総数、資本金等の推移】
- キオクシアホールディングス 有価証券届出書(新規公開時、2024年11月8日)【新規発行による手取金の使途】
- キオクシアホールディングス 有価証券報告書 第7期(2025年3月期)【事業等のリスク】
- キオクシアホールディングス 適時開示「主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」(2025年10月27日)
- キオクシアホールディングス 有価証券報告書 第8期(2026年3月期)【事業等のリスク】
- キオクシアホールディングス 有価証券報告書 第8期(2026年3月期)【主要な経営指標等の推移】
- キオクシアホールディングス 適時開示「新株式発行及び株式売出しの中止と、それに伴う上場手続きの延期に関する取締役会決議のお知らせ」
- キオクシアホールディングス 有価証券届出書(新規公開時)「有価証券届出書(EDINET S100UOKQ)」
- キオクシアホールディングス 適時開示「募集株式発行及び株式売出しに関する取締役会決議のお知らせ」
- キオクシアホールディングス 適時開示「募集株式の払込金額及びブックビルディングの仮条件決定のお知らせ」
- キオクシアホールディングス 適時開示「発行価格及び売出価格の決定、総売出株式数及び国内外の売出株式数の決定並びにオーバーアロットメントによる売出しの売出株式数の決定のお知らせ」
- キオクシアホールディングス 有価証券報告書「第7期(2025年3月期)」
- キオクシアホールディングス 適時開示「主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」
- キオクシアホールディングス 有価証券報告書「第8期(2026年3月期)」