三菱ケミカルグループ 三菱樹脂の完全子会社化 株式交換による取り込みと、機能商品の持株会社直下への集約

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時期 2007年4月
当時の社長 小林喜光
論点 機能商品事業の位置づけとグループ再編
何をなぜ決めたか
概要

2007年2月から3月にかけての三菱化学による公開買付け、同年9月20日の株式の現物配当、10月1日の株式交換という3段の手続きで、三菱ケミカルホールディングスは三菱化学の子会社であった上場企業・三菱樹脂を完全子会社とした。株式交換比率は三菱ケミカルホールディングス1対三菱樹脂0.41、交付株式数は7,333,260株で、すべて持株会社の自己株式を充当した。

背景

2006年3月期のセグメント別営業利益は、外部売上高1兆539億円で最大の石化が308億円にとどまり、機能化学466億円と機能材料227億円の合計693億円に届かなかった。市況で振れる石化の利益を機能商品が補う構図にありながら、機能材料の中核である三菱樹脂は石化を担う三菱化学の子会社の位置にとどまっていた。

内容

三菱化学が公開買付けで三菱樹脂株を買い増して344億円を支出し、保有する196,856,043株のすべてを剰余金の配当として持株会社へ移したうえで株式交換を実施した。取得原価は7,395百万円、のれんは2,036百万円で10年の均等償却とした。翌2008年4月には三菱化学の機能材料事業とポリエステルフィルムなど3社を三菱樹脂へ集め、統合新会社として発足させた。

含意

基礎化学品・機能商品・医薬の3事業会社を持株会社が横並びに統括する体制ができた。ただしこの構えは9年で終わり、2017年4月に三菱樹脂三菱化学三菱レイヨンと合併して法人としては消滅した。

いつ何が起きたか 9件
筆者の見解
筆者の見解

子会社の子会社であることをやめさせた再配置

三菱樹脂は2006年3月期に営業利益227億円を挙げた機能材料の中核にありながら、石化を担う三菱化学の子会社という位置にとどまっていた。同じ期の石化の営業利益は308億円で、外部売上高が1兆539億円と全体の4割を超える規模でありながら、機能化学と機能材料の合計693億円に届いていない。株式交換の意味は上場廃止よりも、機能材料を石化の傘下から引き上げ、持株会社が直に投資を決められる位置へ移した点にあったとみられる。取得原価7,395百万円に対しのれんは2,036百万円にとどまり、対価そのものは大きな負担ではなかった。

ただし、引き上げた先で機能材料が独り立ちしたわけではない。2008年4月に4社を合流させた新生・三菱樹脂は、9年後の2017年に三菱化学三菱レイヨンとの合併で法人ごと消え、機能材料は1社のなかの部門へ戻っている。会社を分けて自律させるか、1社にまとめて連携させるか。三菱ケミカルグループはこの10年で両方を試しており、2007年の株式交換はその振り子の一方の端にあたる判断であったといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
株式交換の条件

株式交換の条件

科目 概要 備考
対象会社 三菱樹脂㈱ 合成樹脂製品の製造及び販売。資本金21,503百万円、従業員3,746名(連結)
企業結合の法的形式 共通支配下の取引 持株会社側は簡易株式交換、三菱樹脂は略式株式交換。株主総会の承認を経ていない
取引の目的 機能材料事業の一層の強化 有報の記載は「機能材料事業の一層の強化を図るため」
取締役会の決議日 2007年4月23日 同日に株式交換契約を締結。2月8日に子会社5社と再編・統合の基本合意書
現物配当による株式の受入れ 2007年9月20日 三菱化学が保有する196,856,043株を剰余金の配当として受領した
効力発生日 2007年10月1日 三菱樹脂は上場を退き、持株会社の直接出資子会社となった
株式交換比率 三菱ケミカルHD1:三菱樹脂0.41 持株会社側は日興シティグループ証券、三菱樹脂は三菱UFJ証券が算定
交付株式数 7,333,260株 全株を持株会社の自己株式で充当したため、資本金に変更はない
取得原価 7,395百万円 対価は持株会社の普通株式7,303百万円、アドバイザリー費用等91百万円
のれん 2,036百万円 発生時から10年間の均等償却。将来の収益力から生じた差額
公開買付け前の所有割合 53.0% 2005年3月期末。三菱化学を通じた間接所有
公開買付け後の所有割合 91.9% 2007年3月期末。三菱化学が2月から3月にかけて買い増し344億円を支出
株式交換後の所有割合 100% 現物配当と株式交換により持株会社の全額出資子会社となった
抱合せ株式消滅差益 28,097百万円 現物配当による持株会社単体の特別利益。連結財務諸表上は相殺消去

出所:三菱ケミカルホールディングス 有価証券報告書 第2期(2007年3月期)【重要な後発事象】・第3期(2008年3月期)【企業結合等に関する注記】

のれんと総資産の推移

三菱ケミカルグループ:のれんと総資産の推移

(百万円) のれん総資産 備考
2005年3月期 12,1201,970,528 第1期有報の前連結会計年度欄。当時の科目名は連結調整勘定
2006年3月期 6,6512,126,612
2007年3月期 18,0432,318,832 三菱化学が三菱樹脂株を公開買付けで買い増し、344億円を支出した期
2008年3月期 98,7462,765,837 株式交換分は2,036。増加の大半は田辺製薬との合併で生じた85,040
2009年3月期 89,3282,740,876
2010年3月期 171,6993,355,097 三菱レイヨンの子会社化により77,122を暫定計上した
2011年3月期 154,8443,294,014
2012年3月期 141,8003,173,970
2013年3月期 179,9373,307,758
のれんと総資産に占める比率
のれん(百万円)のれん率(%)

出所:三菱ケミカルホールディングス 有価証券報告書 第1期〜第8期(連結貸借対照表)

同じ問いに直面した会社

同じ問いに直面した会社

高付加価値への転換2014年住友ベークライト川澄化学工業の子会社化と併せた医療機器・航空機部品事業の構築半導体依存の収益構造と第三領域の構築
2016年アサヒグループHD欧州プレミアムビール4社の取り込みと、高価格帯ブランドの獲得成熟した国内ビール市場の外に、安定した収益基盤をどう築くか
2025年住友ゴム工業グッドイヤーからの欧州・北米・オセアニアの権利の買い戻しと、基幹ブランドのFALKENからの入れ替えブランド戦略と資本配分
2007年オンキヨーパソコン事業への参入と、量販店向け販売からの撤退音響専業からの隣接領域への多角化
2008年タダノ移動機能付き抗重力・空間作業機械への事業領域の絞り込みと、多角化の不採用事業領域の定義と多角化の可否
上場廃止2018年博報堂DYホールディングスD.A.コンソーシアムホールディングスの公開買付けによる完全子会社化デジタル領域の資本政策と親子上場の解消
2006年SBIホールディングス傘下のネット証券と対面証券の一社への統合と、上場子会社の解消グループ証券事業の集約とブランド統一
2005年セブン&アイHD3社共同株式移転による持株会社化と親子上場の解消親子上場の解消とグループ統治
2002年ジャパンエナジー共同持株会社・新日鉱ホールディングスの傘下入りと、自社株式の上場廃止親子上場の解消とグループ統括機能
2013年東急不動産ホールディングス持株会社体制への移行と、東急コミュニティーを含む三社の一斉上場廃止グループ経営体制の再編と資本の集約
参考文献
出典・参考
  • 三菱ケミカルグループ 有価証券報告書【沿革】
  • 三菱ケミカルホールディングス 有価証券報告書 第1期〜第8期
  • 三菱ケミカルホールディングス 有価証券報告書「第2期(2007年3月期)【重要な後発事象】【関係会社の状況】【経理の状況】」
  • 三菱ケミカルホールディングス 有価証券報告書「第3期(2008年3月期)【企業結合等に関する注記】【企業結合等関係】」
  • 三菱ケミカルホールディングス 有価証券報告書「第1期(2006年3月期)【関係会社の状況】【連結貸借対照表】」
  • 三菱ケミカルホールディングス 有価証券報告書「第1期〜第8期(連結貸借対照表、事業の種類別セグメント情報)」

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