DACの完全子会社化(2018年・博報堂DYHDの決断)

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論点上場子会社を丸ごと取り込むべきか
博報堂DYHD:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
D.A.コンソーシアムホールディングスの公開買付けによる完全子会社化

何をなぜ決めたか:D.A.コンソーシアムホールディングスの公開買付けによる完全子会社化

概要

2018年8月6日、博報堂DYホールディングスが取締役会で、連結子会社D.A.コンソーシアムホールディングス(現Hakuhodo DY ONE)を完全子会社とするための公開買付けの開始を決議し、同年10月に完全子会社化した経営判断。買付価格は普通株式1株につき3,700円。企業結合日は公開買付けによる取得が9月26日、株式売渡請求による取得が10月31日で、取得原価は112,355百万円であった。

背景

2009年2月、博報堂がデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)の第三者割当増資を引き受け、グループの議決権比率は49.3%から53.7%に上がってDACは連結子会社となった。2016年10月にはDACとアイレップが株式移転でD.A.コンソーシアムホールディングスを設立した。公開買付けの開示は、テクノロジー投資が短期の利益に直結しない場合、上場会社である対象者の当期の利益最大化とグループ全体の中長期の競争力強化が両立しにくく、上場を維持したまま施策を迅速に実施することは困難だと説明している。2018年5月中旬に完全子会社化の検討を始めた。

内容

公開買付けの期間は2018年8月7日から9月18日までの30営業日。買付予定数30,820,168株、下限10,688,550株に対して応募は28,612,110株に達し、全部の買付けを行った。すでに連結子会社であったため共通支配下の取引等として処理され、資本剰余金87,523百万円と利益剰余金5,352百万円が減った。取得のための支出は113,140百万円で、同じ期に長期借入れで105,534百万円を得ている。

含意

翌期中に博報堂DYデジタルはDACへ吸収合併された。戸田裕一社長は2019年の新中期経営計画の説明で、D.A.コンソーシアムホールディングスグループの完全子会社化と、博報堂DYデジタルとDACの経営統合を、デジタル領域の戦略施策を進めるための取り組みと位置づけた。2024年4月にはDACとアイレップの機能とグループ各社のデジタルマーケティングのリソースを集めたHakuhodo DY ONEが発足し、2025年4月、DACとアイレップはHakuhodo DY ONEを存続会社とする吸収合併で消滅した。

いつ何が起きたか8件
考察:九年かけて締めた資本
考察

考察:九年かけて締めた資本

博報堂DYホールディングスは、DACへの支配を段階的に上げてきた。2009年に議決権を49.3%から53.7%へ、2016年に共同持株会社の設立を経て、2018年に100%へ至った。開示が挙げた理由は、上場子会社では当期の利益とグループの中長期の投資が両立しにくいという一点にある。専業の会社を外に残したまま、資本の側から締めていったやり方と読める。

もっとも、その仕上げには値段がついていた。取得原価112,355百万円の大半を同じ期の長期借入れで賄いながら、相手はすでに連結子会社であったから、のれんは立たず、資本剰余金87,523百万円が消え、足りない分は利益剰余金から引かれた。買い切ったあとも、博報堂DYデジタルとの合併、Hakuhodo DY ONEの発足、DACとアイレップの吸収合併と組み替えは続き、2025年4月にDACという会社はなくなった。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

博報堂DYHD:資本剰余金と株主資本の推移

資本剰余金(百万円)資本剰余金以外の株主資本(百万円)
博報堂DYHD:資本剰余金と株主資本の推移
(百万円)資本剰余金利益剰余金株主資本合計備考
2014年3月期88,894136,389230,203
2015年3月期88,894137,025224,550
2016年3月期89,655157,352245,637
2017年3月期88,885175,407262,922
2018年3月期87,742195,914282,439追加取得の直前期。この資本剰余金がそのまま買収の原資になった
2019年3月期0227,909226,862資本剰余金87,523と利益剰余金5,352が減り、資本剰余金は残高がなくなった
2020年3月期324261,698261,142
2021年3月期37276,884276,197
2022年3月期0319,758319,176
2023年3月期0336,720329,585以後の連結貸借対照表に資本剰余金の行はない。毎期、利益剰余金から振り替えて補っている
2024年3月期0347,977337,730
出所:博報堂DYホールディングス 有価証券報告書 第11〜21期(連結貸借対照表・連結株主資本等変動計算書。各期の当期欄から採録)
出所:博報堂DYホールディングス 有価証券報告書 第11〜21期(連結貸借対照表・連結株主資本等変動計算書。各期の当期欄から採録)

博報堂DYHD:売上総利益とのれんの推移

売上総利益(百万円)のれん(百万円)
博報堂DYHD:売上総利益とのれんの推移
(百万円)売上総利益のれん備考
2014年3月期190,1503,537
2015年3月期205,8677,177
2016年3月期232,49814,892
2017年3月期248,64017,689
2018年3月期272,33531,173
2019年3月期324,91630,730のれんは動いていない。DACは2009年からの連結子会社で、追加取得は資本取引にあたる
2020年3月期332,49927,905
2021年3月期313,21741,801
2022年3月期387,09345,097収益認識会計基準の適用で売上高は減ったが、売上総利益は継続して比べられる
2023年3月期403,56471,678
2024年3月期394,17465,075
出所:博報堂DYホールディングス 有価証券報告書 第11〜21期(連結損益計算書・連結貸借対照表。各期の当期欄から採録)
出所:博報堂DYホールディングス 有価証券報告書 第11〜21期(連結損益計算書・連結貸借対照表。各期の当期欄から採録)

買収の条件

買収の条件
科目概要備考
結合当事企業D.A.コンソーシアムホールディングス株式会社インターネット広告ビジネスを運営する子会社等の経営管理およびこれに附帯関連する事業
取引の区分共通支配下の取引等すでに連結子会社であり、非支配株主が保有する株式を追加取得した取引にあたる
企業結合日2018年9月26日公開買付けによる取得の日。株式売渡請求による取得は2018年10月31日
企業結合の法的形式現金を対価とした株式取得結合後企業の名称に変更はない
追加取得後の所有割合100%株券等所有割合。売渡請求の完了により非支配株主はいなくなった
取得原価112,355百万円対価の種類は現金のみ
のれん発生なし共通支配下の取引等のため、差額は資本剰余金と利益剰余金の減少として処理された
減少した資本剰余金87,523百万円非支配株主との取引による変動。2019年3月期末の資本剰余金は残高がなくなった
減少した利益剰余金5,352百万円資本剰余金で吸収しきれない分をあてた額
取得のための支出113,140百万円連結範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出。長期借入れによる収入は105,534百万円
取引の目的当社グループの経営体制及び経営基盤を強化するため「その他取引の概要に関する事項」の逐語
出所:博報堂DYホールディングス 有価証券報告書 第16期(2019年3月期)【企業結合等関係】・連結キャッシュ・フロー計算書
出所:博報堂DYホールディングス 有価証券報告書 第16期(2019年3月期)【企業結合等関係】・連結キャッシュ・フロー計算書
参考文献

参考文献

参考

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