アサヒグループHD Peroni・Grolsch取得 欧州プレミアムビール4社の取り込みと、高価格帯ブランドの獲得
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何をなぜ決めたか
- 概要
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2016年2月10日、アサヒはAB InBevに対し、AB InBevによるSABMiller買収の実行を条件として、SABMillerのイタリア・オランダ・英国事業を取得するための法的拘束力のある最終提案を行った。同年10月11日にBirra Peroni、Royal Grolsch、Meantime Brewing、Asahi UK(旧Miller Brands (UK))ほか25社を子会社化し、取得対価は297,020百万円であった。
- 背景
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スーパードライで国内首位を争ったアサヒも、人口減と酒税で国内の数量成長は限られ、海外の足場はアジア・オセアニアに偏っていた。有価証券報告書は、長期ビジョンに掲げる「日本発の『強み』を活かすグローバルプレイヤー」の確立と、中期経営方針の重点課題である国際事業の成長エンジン化を、この取得の理由に挙げている。
- 内容
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買収実行の先行条件は、AB InBevによるSABMiller買収が実行されること、そしてアサヒが対象事業の買主として欧州委員会から承認されることであった。提案時の取得原価は2,550百万ユーロで、キャッシュフリー・デットフリー企業価値ベースの概算である。Grolschは400年、Peroniは150年以上の歴史を持つ定番ブランドで、Meantimeは英国クラフトビールの先駆的なブランドである。
- 含意
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取得時ののれんは143,680百万円の暫定計上であったが、翌期に取得原価の配分が確定して123,000百万円へ20,679百万円減った。減った分は主に無形資産へ移り、商標権は38年の定額法で償却される。ゼロから作らず定番ブランドを買い取る手法は、翌年の中東欧5か国(899,077百万円)、2020年の豪州CUB(1,168,241百万円)へ続く最初の一手となった。
いつ何が起きたか 5件
筆者の見解
独禁売却が生んだ「買える定番」という機会
この取得の面白さは、他社の巨大な統合が生んだ副産物を機会に変えた点にある。有価証券報告書は、買収実行の先行条件として、AB InBevによるSABMiller買収が実行されること、そしてアサヒが対象事業の買主として欧州委員会から承認されることの二つを挙げている。つまりこの取引は、買い手が単独で決められるものではなく、他社の統合審査に組み込まれた受け皿として成立していた。400年や150年の歴史を持つ定番ブランドが、通常なら市場に出てこない。それが一括して買える状態になり、アサヒがその受け皿となった。
国内でスーパードライを武器に成熟市場を勝ち抜いた発想を、欧州の定番ブランドで再現しようとした判断だったとみられる。取得対価297,020百万円は、翌年に899,077百万円を投じた中東欧の取得に比べれば小さい。それでも、のれん123,000百万円と38年で償却する商標権という形で、成熟市場のブランドに長期の回収を託した点は変わらない。成熟した市場でポジションを取り、プレミアムで稼ぐという国内での戦い方を、そのまま海外へ移す試みが、ここから本格的に動き出した。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
買収の条件
買収の条件
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 被取得企業 | Birra Peroni S.r.l. ほか28社 | Royal Grolsch NV、Meantime Brewing、Asahi UK Ltd と他25社 |
| 事業の内容 | ビールの製造販売・輸入販売 | Asahi UK Ltd は旧Miller Brands (UK) Ltd.で、ビールの輸入販売を営む |
| 最終提案の日 | 2016年2月10日 | 法的拘束力のある最終提案。協議手続の期間中は独占交渉権を得た |
| 買収実行の先行条件 | 欧州委員会からの承認 | AB InBevによるSABMiller買収が実行されることも先行条件であった |
| 提案時の取得原価 | 2,550百万ユーロ | キャッシュフリー・デットフリー企業価値ベースの概算額 |
| 取得日(企業結合日) | 2016年10月11日 | 最終提案から8か月後。連結は10月から |
| 企業結合の法的形式 | 現金を対価とする株式の取得 | |
| 取得した議決権比率 | 100% | 主要4社はいずれも100%。他25社も議決権比率は主として100% |
| 取得対価 | 297,020百万円 | 全額を現金で支払った |
| 取得関連費用 | 3,626百万円 | 販売費及び一般管理費で費用処理した |
| 受け入れた資産合計 | 247,625百万円 | 有形固定資産56,613百万円、無形資産151,297百万円を含む |
| 引き受けた負債合計 | 73,450百万円 | 非支配持分は155百万円。暫定的な処理では負債合計65,968百万円 |
| のれん | 123,000百万円 | 取得時は暫定で143,680百万円。翌期の確定で20,679百万円減った |
| 商標権の償却 | 38年の定額法 | Birra Peroniの買収で認識した商標権は2018年12月期末で64,734百万円 |
| 取得日以降の売上収益 | 26,384百万円 | 当期利益は858百万円。連結は10月からの3か月弱にとどまる |
| 期首結合と仮定した売上収益 | 1,800,773百万円 | 当期利益94,519百万円。この概算は監査証明を受けていない |
出所:アサヒグループホールディングス 有価証券報告書 第92期(2015年12月期)【重要な後発事象】、第93期(2016年12月期)・第94期(2017年12月期)【企業結合】
のれんと無形資産の推移
アサヒグループHD:のれんと無形資産の推移
| (百万円) | のれん | のれん及び無形資産 | 総資産 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2015年12月期 | 125,008 | 223,485 | 1,804,673 | IFRSへ組み替えた比較年度。移行日ののれんは133,705百万円 |
| 2016年12月期 | 247,322 | 499,489 | 2,094,332 | 西欧4社ほかを10月に連結。のれんは暫定269,290が確定で247,322へ |
| 2017年12月期 | 737,947 | 1,538,679 | 3,346,822 | 中東欧5か国を3月に連結し、のれんが427,995百万円増えた |
| 2018年12月期 | 705,087 | 1,428,543 | 3,079,315 | |
| 2019年12月期 | 702,930 | 1,398,422 | 3,140,788 | |
| 2020年12月期 | 1,723,943 | 2,701,985 | 4,439,378 | 豪州のCUB事業を6月に連結し、のれんが933,142百万円増えた |
| 2021年12月期 | 1,816,862 | 2,819,634 | 4,547,748 | 欧州(インターナショナル)事業でのれん11,141百万円の減損を計上 |
出所:アサヒグループホールディングス 有価証券報告書 第93〜98期(連結財政状態計算書、のれん及び無形資産)
国際セグメントの推移
アサヒグループHD:国際セグメントの推移
| (百万円) | 国際セグメントの対外部売上収益 | 国際セグメント利益 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2016年12月期 | 247,760 | △8 | 西欧4社ほかの寄与は10月からの26,384百万円にとどまる |
| 2017年12月期 | 618,526 | 34,837 | 中東欧5か国が3月から加わった最初の期 |
| 2018年12月期 | 710,227 | 77,365 | |
| 2019年12月期 | 698,274 | 75,923 | |
| 2020年12月期 | 792,865 | 52,089 | CUB事業が6月から加わる一方、新型コロナで業務用が減少した |
| 2021年12月期 | 1,017,447 | 111,076 | 2022年12月期から日本・欧州・オセアニア・東南アジアへ区分が変わる |
出所:アサヒグループホールディングス 有価証券報告書 第93〜98期(事業セグメント)
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参考文献
- アサヒグループホールディングス 有価証券報告書「第92期(2015年12月期)【重要な後発事象】」
- アサヒグループホールディングス 有価証券報告書「第93期(2016年12月期)【企業結合】【のれん及び無形資産】」
- アサヒグループホールディングス 有価証券報告書「第94期(2017年12月期)【企業結合】」
- アサヒグループホールディングス 有価証券報告書「第95期(2018年12月期)【のれん及び無形資産】」
- アサヒグループホールディングス 有価証券報告書「第93〜98期(連結財政状態計算書、のれん及び無形資産、事業セグメント)」