高木丈太郎社長が買収の理由に据えたのは配当や賃料ではなく、ロックフェラーセンターの地下街のつなぎ方や地区内のLAN網といった再開発のノウハウであった。株式の51%を握っても配当収入だけでプラスになる商売ではないと自ら述べており、収益で正当化しない投資であることは初めから明示されていた。それでも投資額は約2,200億円に達し、5年後に売却した所有権の簿価は約9億ドルにのぼる。学習という理由づけが、どの規模までなら許されるのかを問う買収であったと推察される。
ただ、外れたのは説明ではなく数字であった。1994年の契約更改で1スクエアフィート当たり60〜70ドルへ倍増すると見込んだ賃料は30〜40ドルにとどまり、空室率20%の市況が続いた。三菱地所は関係のまったくない機関に相手の素性を調べさせていたが、たたいたのは相手の素性であって、賃料の見通しではなかったのかもしれない。撤退後もロックフェラーグループ社は手元に残り、勉強の対象とされた丸の内の建て替えは1999年に着工している。