ポーラ・オルビスホールディングス 豪ジュリークの買収 化粧品会社の取り込みによる、初の本格的な海外M&Aへの踏み出し

更新:

時期 2011年11月
当時の社長 鈴木郷史
論点 海外展開とブランドポートフォリオ
何をなぜ決めたか
概要

2011年11月30日の取締役会で決議し、2012年2月3日に完了した、豪州のオーガニック化粧品Jurlique International Pty Ltdの全株式取得。取得原価は244億84百万円で、のれん151億77百万円を20年の均等償却で計上した。2006年の持株会社化と2010年の上場で得た機動力を初の本格的な海外M&Aへ振り向けた、鈴木郷史社長のもとでの決断。

背景

国内化粧品市場の成熟と、手薄な海外事業。持株会社化と上場で資本と機動力を得たグループは、長期ビジョンに掲げた「高収益グローバル企業」の実現へ、自前で海外の収益源を育てる時間を買う手立てとして、確立したブランドの買収を選んだ。

内容

買収のための特別目的会社2社を豪州に設立したうえで、JJHP, LLCら主要株主から全株式を取得して完全子会社とした。ジュリークは世界20の国と地域で販売を展開し、5カ国に11の連結子会社を持つ。取得原価の配分では商標権1億200万豪ドル(非償却)と顧客関連無形固定資産3,900万豪ドル(加重平均償却期間12年)が計上された。

含意

買収後の業績は当初計画から乖離し、2016年12月期にのれん104億36百万円、2018年12月期には工場・事業用資産108億80百万円の減損を計上して、151億77百万円ののれんは消えた。ブランド自体は2025年12月期まで100%子会社として残り、構造改革と黒字化が課題であり続けている。

いつ何が起きたか 7件
筆者の見解
筆者の見解

多ブランド経営と、減損の反復

この買収の底にあったのは、持株会社という構造がもたらした機動力であった。上場で得た資本を元手に、自前では時間のかかる海外の柱を、確立したブランドごと一度に抱える——この構造の論理からすれば、ジュリークの買収は理にかなった選択であったとみられる。ただ、取得原価244億84百万円のうち151億77百万円がのれん、さらに商標権1億200万豪ドルが無形固定資産に載ったことは、買ったものの大半がブランドの将来性そのものであったことを意味する。その前提が崩れれば、資産は減損で消える。

実際、業績は当初計画から乖離し続けた。2016年12月期に104億36百万円ののれんを、2018年12月期には商標権を含む豪州の工場・事業用資産108億80百万円を減損して、買収で積んだのれんは6年で消えた。ジュリークの減損は、単発の失敗では終わらなかった。その後もAmplitudeやITRIMの撤退、買収したFUJIMIののれん減損と、持株会社の下で抱えた事業が減損で畳まれる場面は繰り返された。多くのブランドを機動的に出し入れできる強みは、抱えた数だけ減損の芽を抱えることと、表と裏の関係にある。ジュリーク自体は2025年12月期時点でも100%子会社として残り、有価証券報告書には「構造改革・黒字化」がブランドの課題として掲げられたままである。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
買収の条件

買収の条件

科目 概要 備考
被取得企業の名称 Jurlique International Pty Ltd 本社は豪州サウスオーストラリア州。資本金は72,133千豪ドル(2012年2月3日時点)
被取得企業の事業の内容 化粧品の製造・販売 世界20の国と地域で販売展開し、5カ国に11の連結子会社を有していた
持分取得の相手会社 JJHP, LLC ほか3者 ほかにCPH Products、Ulrike Klein Investmentsの2社と役員等
企業結合を行った主な理由 更なる海外事業基盤の強化 長期ビジョンである「高収益グローバル企業」の実現に向けた取得
取締役会決議と契約 2011年11月30日 全株式の取得を決議し、同日付で株式譲渡契約を締結した
特別目的会社の設立 2011年12月19日 豪州に持株会社2社を設立し、2012年1月31日に出資を完了した
企業結合日 2012年2月3日 同日に取得手続きを完了。特定子会社に該当することとなった
企業結合の法的方式 現金による株式取得 取得した議決権比率は100%。ジュリーク他11社の議決権を保有した
取得の対価 現金23,763百万円 特別目的会社Pola Orbis Jurlique Holdingsの取得価額は339,300千豪ドル
取得に直接要した費用 721百万円 アドバイザリー費用等
取得原価 24,484百万円
受け入れた資産 376,489千豪ドル 流動資産36,027千豪ドルと固定資産340,461千豪ドル
引き受けた負債 75,013千豪ドル 流動負債40,439千豪ドルと固定負債34,574千豪ドル
無形固定資産への配分 商標権102,000千豪ドル 非償却。ほかに顧客関連無形固定資産39,008千豪ドル(加重平均償却期間12年)
のれん 15,177百万円 今後の事業展開によって期待されるシナジーを含む将来の超過収益力
のれんの償却方法と期間 20年間で均等償却
連結に含めた業績の期間 2012年2月4日から12月31日 期首に完了と仮定した場合の影響は売上高821百万円、営業損失70百万円
2016年12月期の減損 10,436百万円 のれんの減損。会計方針の変更により当初計上額9,386百万円から遡及修正
2018年12月期の減損 10,880百万円 工場及び事業用資産。豪州等の店舗375百万円を含むと11,255百万円

出所:ポーラ・オルビスホールディングス 有価証券報告書 第6期(2011年12月期)【重要な後発事象】・第7期(2012年12月期)【企業結合等関係】

のれんと無形固定資産、総資産の推移

ポーラ・オルビスホールディングス:のれんと無形固定資産、総資産の推移

(百万円) のれん無形固定資産総資産 備考
2008年12月期 −−180,664
2009年12月期 −−181,909
2010年12月期 −4,140187,771 のれんは該当事項なし
2011年12月期 3,58312,137193,027 H2O PLUSの取得でのれんを初めて計上した期
2012年12月期 18,25639,677209,140 ジュリークののれん15,177と商標権・顧客関連無形固定資産が加わった
2013年12月期 15,85638,025218,005
2014年12月期 14,09232,131224,536
2015年12月期 11,89432,745235,734
2016年12月期 90516,337228,845 ジュリークののれんを減損し、残高が10分の1以下になった
2017年12月期 88316,303252,567 翌2018年12月期に商標権を含む豪州資産を減損し、のれんは残高ゼロ
のれんと無形固定資産
のれん(百万円)のれん以外の無形固定資産(百万円)

出所:ポーラ・オルビスホールディングス 有価証券報告書 第5期〜第12期(連結貸借対照表)

売上高と利益の推移

ポーラ・オルビスホールディングス:売上高と利益の推移

(百万円) 売上高営業利益親会社株主に帰属する当期純利益 備考
2008年12月期 170,838−6,559
2009年12月期 162,3329,7064,059
2010年12月期 165,25312,2707,086
2011年12月期 166,65712,8538,039
2012年12月期 180,87313,5206,681 ジュリークは2012年2月4日から連結。売上高が前期比8.5%増えた
2013年12月期 191,35516,0177,318
2014年12月期 198,09417,68310,382
2015年12月期 214,78822,51114,095
2016年12月期 218,48226,83916,328 減損損失14,957を計上したが、固定資産の売却益10,182が相殺した
2017年12月期 244,33538,88127,137 翌2018年12月期は純利益が8,388へ69.1%減。減損11,426と事業整理損10,327
売上高と営業利益
売上高(百万円)営業利益(百万円)

出所:ポーラ・オルビスホールディングス 有価証券報告書 第5期〜第12期(連結損益計算書、主要な経営指標等の推移)

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参考文献
出典・参考
  • ポーラ・オルビスホールディングス 有価証券報告書 第6期・第7期【企業結合等関係】【重要な後発事象】
  • ポーラ・オルビスホールディングス 有価証券報告書 第11期・第13期(連結損益計算書関係・減損損失)
  • ポーラ・オルビスホールディングス 有価証券報告書 第5期〜第20期(連結財務諸表、関係会社の状況)
  • ポーラ・オルビスホールディングス 有価証券報告書「第6期(2011年12月期)【重要な後発事象】【経営上の重要な契約等】」
  • ポーラ・オルビスホールディングス 有価証券報告書「第7期(2012年12月期)【企業結合等関係】」
  • ポーラ・オルビスホールディングス 有価証券報告書「第11期(2016年12月期)【連結損益計算書関係】減損損失」
  • ポーラ・オルビスホールディングス 有価証券報告書「第13期(2018年12月期)【連結損益計算書関係】減損損失」
  • ポーラ・オルビスホールディングス 有価証券報告書「第20期(2025年12月期)【関係会社の状況】」

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