BGRSの買収と撤退(2019年・リログループの決断) 更新:2026/09/12 論点 海外リロケーション大手を現金で買収するか リログループ:業績の推移 売上高(億円)営業利益率(%) グローバルリロケーション事業への参入と、5年での撤退 何をなぜ決めたか:グローバルリロケーション事業への参入と、5年での撤退 概要 2019年6月、リログループがグローバルリロケーション大手のBGRS Limitedを255億35百万円の現金で100%取得し、海外モビリティ事業へ参入した。2022年に同業SIRVAと統合し、2024年に関連資産476億円を全額減損したうえで2024年8月に持分を手放した。 背景 国内では借上社宅管理・福利厚生の二本柱がすでに首位級に達し、人口減による市場の縮小が見えていた。中期経営計画"第三次オリンピック作戦"は国内シェアの確保と並んで世界市場へリーチする土台づくりを掲げていた。 内容 2019年4月25日の取締役会で決議し、6月28日に株式取得を完了した。のれん127億29百万円と顧客関連資産112億36百万円が計上され、取得資金は長期借入461億18百万円などで賄われた。長期借入金は122億38百万円から494億47百万円へ、短期借入金は55億68百万円から198億19百万円へ増えた。 含意 買収の翌年にコロナ禍で赴任需要が消え、2020年3月期にBGRSののれん減損92億42百万円を計上した。統合先SIRVAが抱えた約600ミリオン米ドルの借入金と米国の金利上昇が重なり、2024年3月に格付CCCへの低下を受けて関連資産476億円を全額減損した。 いつ何が起きたか 7件 考察:取得した資産と、買えなかった時間 考察 考察:取得した資産と、買えなかった時間 この投資で買ったものは、世界8カ国14カ所の拠点と、フォーチュン・グローバル500企業を含む顧客名簿であった。国内で借上社宅管理と福利厚生を積み上げてきた手つきからすれば、赴任という同じ事象の川下を海外まで延ばす選択には筋が通っている。ただし国内の事業が会費や管理戸数という月次の積み上げで成り立っていたのに対し、買った先の収益は赴任の発生件数と住宅の売買に連動するフロー型であった。門田CFOが撤退時に挙げた理由も、パンデミックへの脆弱さとフロー収益への依存であった。 減損の内訳を見ると、失ったのは買収代金255億円だけではない。統合後に積み上がった未収債権100億円と貸付金99億円が、優先株式276億円と並んで落ちている。持分を23%まで薄めながら債権では残り続けたことが、損失の総額を買収額の倍近くまで押し上げた。2024年3月期に476億円を落とし、翌期は日本ハウズイング株式の売却益187億円を得て当期利益433億円で終えている。海外で開いた穴を塞いだのは、2009年から持っていた国内の持分であった。 Yutaka Sugiura, 2026年7月 数字で見る 3表 数字で見る 図と表 リログループ:当期利益とBGRS関連の減損損失の推移 当期利益(百万円) 表を見る リログループ:当期利益とBGRS関連の減損損失の推移 × (百万円) 当期利益BGRS関連の減損損失 備考 2015年3月期 6,085− 2021年3月期までは日本基準。2022年3月期からIFRSを適用している 2016年3月期 7,158− 2017年3月期 9,151− 2018年3月期 10,782− 2019年3月期 13,005− 2020年3月期 3,8189,242 BGRSののれん減損9,242を計上。連結の減損損失計上額は9,502 2021年3月期 9,354450 海外戦略事業でオフィス退去に伴う有形固定資産の減損450を計上 2022年3月期 15,644− IFRSへ移行。BGRSグループを非継続事業に分類した期 2023年3月期 20,887− 2024年3月期 △27,80747,599 SIRVA-BGRSへの投資27,653と金融債権19,946を減損 2025年3月期 43,317− 優先株式等の放棄で持分法適用から除外。日本ハウズイング株の売却益を計上 出所:リログループ 有価証券報告書 第52期・第54期・第58期(主要な経営指標等の推移) / リログループ 有価証券報告書 第54期(固定資産の減損損失)・第57期(連結財務諸表注記) 出所:リログループ 有価証券報告書 第52期・第54期・第58期(主要な経営指標等の推移) / リログループ 有価証券報告書 第54期(固定資産の減損損失)・第57期(連結財務諸表注記) リログループ:海外戦略事業の売上高とセグメント損益 外部顧客への売上高(百万円) 表を見る リログループ:海外戦略事業の売上高とセグメント損益 × (百万円) 外部顧客への売上高セグメント損益 備考 2020年3月期 39,0879 翌期有報の組替後の区分。当期有報は海外事業として46,187・203を開示 2021年3月期 48,828△2,519 BGRSを通期で連結した唯一の期 出所:リログループ 有価証券報告書 第53期・第54期(セグメント情報等) 出所:リログループ 有価証券報告書 第53期・第54期(セグメント情報等) 買収の条件 被取得企業の名称と事業 Brookfield RPS Limited 企業結合の法的形式 株式取得 取締役会決議と契約締結 2019年4月25日 企業結合日 2019年6月28日 取得した議決権比率 100% 取得原価と対価の種類 現金25,535百万円 主要な取得関連費用 564百万円 のれんの金額 12,729百万円 表を見る 買収の条件 × 科目 概要 備考 被取得企業の名称と事業 Brookfield RPS Limited カナダ・トロントに本社。赴任管理サービスとシステムの提供、リロケーションのコンサルティング 企業結合の法的形式 株式取得 設立したRelo Group Ontario Inc.を通じて取得。結合後の名称はBGRS Limited 取締役会決議と契約締結 2019年4月25日 取締役会で子会社化を決議し、同日付で株式譲渡契約を締結した 企業結合日 2019年6月28日 連結損益計算書に含めた業績の期間は2019年7月1日から2020年3月31日まで 取得した議決権比率 100% 取得企業を決定した根拠は、現金を対価として株式を取得したことによる 取得原価と対価の種類 現金25,535百万円 対価は全額が現金で、取得原価も同額。取得原価の内訳は開示されていない 主要な取得関連費用 564百万円 アドバイザリーに対する報酬・手数料等として計上している のれんの金額 12,729百万円 発生原因は今後の事業展開で期待される超過収益力。18年6ヵ月の均等償却 のれん以外の無形固定資産 顧客関連資産11,236百万円 加重平均償却期間は18年6ヵ月。のれんと同じ期間で償却する 受け入れた資産の額 63,018百万円 流動資産46,458と固定資産16,559。引き受けた負債合計は50,776 業績に与える影響 売上高48,795百万円 期首に企業結合が完了したと仮定した概算。経常利益への影響額は321百万円 取得資金の調達 長期借入46,118百万円 駅前不動産ホールディングスの取得と合わせた額。短期借入金の純増額は10,615百万円 取得した期に計上した減損 のれん9,242百万円 事業計画の見直しで回収可能価額まで減額。使用価値は割引率11.3%で算定 出所:リログループ 有価証券報告書 第53期(2020年3月期)【企業結合等関係】・第54期(2021年3月期)【固定資産の減損損失】 出所:リログループ 有価証券報告書 第53期(2020年3月期)【企業結合等関係】・第54期(2021年3月期)【固定資産の減損損失】 参考文献 参考文献 参考リログループ 有価証券報告書(2020年3月期・連結)リログループ 有価証券報告書(2023年3月期)リログループ 有価証券報告書(2024年3月期)リログループ 有価証券報告書(2025年3月期)リログループ 2024年3月期 決算説明会(2024年5月9日)リログループ 2025年3月期 決算説明会(2025年5月8日) 次に読む決断 リログループの意思決定1993年リログループリログループ「福利厚生倶楽部」開始企業の福利厚生を代行する新事業による、第二の収益源づくり1993年2002年リログループリログループリロケーション・ジャパン転貸開始借上社宅の転貸事業への進出2002年同じ問い:海外撤退2026年NISSHANISSHAベトナムUSMの株式譲渡取得から約4か月での全株譲渡と、のれん減損6,759百万円の計上2026年2011年住友金属鉱山住友金属鉱山シエラゴルダ鉱山を譲渡チリでの権益取得から、二度の減損を経た全持分の売却までの撤退2011年2015年デンカデンカDuPont事業の譲受三井物産との共同出資によるクロロプレンゴム事業の取り込みと、米国合弁会社の設立2015年2015年日本郵政日本郵政豪トールを買収国際物流への進出と、そのつまずきとしての巨額減損2015年2014年豊田合成豊田合成独メテオール社の資産譲受シーリング事業の欧州拡張と、5年後の連結除外2014年 × 出所