2014年の譲受と2015年の承継は、方向が逆に見えて一つの選択の表と裏にあたる。買ったのは緑内障・高眼圧症治療剤という眼科の中核と、それを各国で売るための権利であった。手放したのは抗リウマチ薬事業で、対価の450億円はそのまま眼科への投資余力になった。2年のあいだに参天製薬は、眼科以外の売上をゼロにし、眼科の売上を欧州とアジアへ広げている。買う判断と売る判断は別々の稟議を通ったはずだが、外から見れば同じ一つの線の上に並んでいる。
この取引が速く効いたのは、買ったものが既に売れている薬と、それを売る許可だったからと考えられる。会計上も企業結合ではなく資産の譲り受けであり、のれんは1円も立っていない。載ったのは特許権や製造販売承認権という、償却年数の決まった無形資産だけである。承認の移管が終わるまでの利益の一部まで契約で取り込み、2015年3月期はその収入が51億円あった。譲り受けた無形資産は減損されることなく毎期償却で減り、2020年3月期には重要な無形資産として個別に挙げられなくなっている。買収の巧拙は、金額よりも何を買ったかに表れている。