ガンホー・オンライン・エンターテイメント Supercellの買収 ソフトバンクとの共同出資による取り込みと、10か月後の売却

更新:

時期 2013年10月
当時の社長 森下一喜
論点 グローバル案件への参画と資本の独立性
何をなぜ決めたか
概要

2013年10月31日、パズドラの急成長で親会社となったソフトバンクと共同で、フィンランドのスマホゲーム大手Supercell Oyの議決権付株式51%(希薄化後)を総額15.3億米ドル(1,507億円)で取得した。ガンホーの投資額は3.06億米ドル(出資比率20%)で、持株会社Kahon 3 Oyを持分法適用関連会社として取り込む形をとった。だが2014年8月26日、保有子会社の全株式をソフトバンクへ売却して撤退した。

背景

パズドラのヒットで企業価値が急騰したガンホーは、2013年4月にソフトバンクの連結子会社となった。有価証券報告書は取得の目的を、世界100カ国以上に事業を展開するSupercellの海外マーケティング力とAppStoreのゲームカテゴリにおけるポジショニングを生かし、グループの世界展開をさらに強化することと記している。

内容

両社は特別目的会社Kahon 3 Oyを通じてSupercell株式21,157,876株を取得した。ソフトバンクが12.24億米ドル(80%)、ガンホーが3.06億米ドル(20%)を間接的に出資し、ガンホーは全額出資子会社GGF B.V.を介してKahon 3 Oyの議決権19.97%を持った。Supercell自体は子会社ではなく、その損益を持分法で取り込む関係にとどまる。

含意

2014年8月26日、ガンホーはGGF B.V.の全株式を357億25百万円でソフトバンクへ売却し、関係会社株式売却益75億91百万円を計上した。保有期間中に取り込んだ持分法による投資損失は2013年12月期12億84百万円、2014年12月期10億21百万円で、10か月で投資は簿価ごと消えた。

いつ何が起きたか 6件
筆者の見解
筆者の見解

親会社の投資戦略に組み込まれた10か月

この一件の意味は、ガンホーが単独の意思では手が届かない規模のグローバル投資を経験した一方で、その意思決定の主導権が親会社ソフトバンク側にあったことをうかがわせる点にある。総額15.3億米ドルのうちガンホーの負担は3.06億米ドルにとどまり、Kahon 3 Oyへの議決権所有割合は19.97%であった。Supercellは子会社ではなく、損益を持分法で取り込むだけの相手であり、買ったのは事業そのものというより投資の一口であったのだろう。

10か月という短い保有期間は、この案件がガンホー自身の事業戦略というより、親会社の投資ポートフォリオの一部として扱われていたことを示している。売却の理由を有価証券報告書は記しておらず、残るのは357億25百万円という売却価額と75億91百万円の売却益だけである。実際、ソフトバンクとの資本関係はこの後も流動的に推移した。2015年6月に親会社から「その他の関係会社」へ、2016年8月にはその他の関係会社にも該当しないこととなり、ガンホーは独立企業として再出発する。Supercell出資と急速な撤退は、その意味で、親会社の傘下に入ることで得られる機会と、資本の独立性を保つことの間で揺れたガンホーの一時期を映す出来事であったといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
買収と売却の条件

買収と売却の条件

科目 概要 備考
被取得企業の名称 Supercell Oy フィンランドを拠点にモバイル端末向けのゲーム事業を展開。資本金2,500ユーロ
被取得企業の事業の内容 モバイル/ソーシャルインタラクティブ・エンターテイメント
株式取得の相手会社等 Accel London Investments Sarlほか ほかにMikko Kodisoja、Ilkka Paananen他
株式取得の目的 グループの世界展開の強化 世界100カ国以上に展開する同社の海外マーケティング力を生かす
取得に使った会社 特別目的会社Kahon 3 Oy ガンホーは全額出資子会社GGF B.V.を通じて間接的に出資した
株式取得の時期 2013年10月31日
Kahon 3 Oyの取得株式数 21,157,876株
Kahon 3 Oyの取得価額 15.3億米ドル 1米ドル98.5円で換算して1,507億円
取得後のSupercellの持分比率 51%(希薄化後) Kahon 3 Oyが保有する議決権付株式の比率
当社の投資額 3.06億米ドル Kahon 3 Oyへの出資比率は20%。ソフトバンクは12.24億米ドル(80%)
当社の議決権所有割合 19.97% Kahon 3 Oyに対する間接所有分。役員の兼任は2名
会計処理 持分法適用関連会社 Kahon 3 Oyを持分法適用とし、Supercellの損益を持分法で取り込んだ
関連会社に対する投資有価証券 31,562百万円 2013年12月31日現在。2014年12月31日現在は該当なし
持分法による投資損失 1,284百万円 2013年12月期。2014年12月期は1,021百万円
売却の日 2014年8月26日 みなし売却日は2014年7月1日。取得から約10か月
売却した対象 特定子会社GGF B.V.の全株式 これによりKahon 3 Oyは持分法の適用の範囲から除外された
売却の相手先 ソフトバンク株式会社 当時のガンホーの親会社
売却価額 35,725百万円 売却時の固定資産は29,346百万円、為替換算調整勘定は△1,223百万円
関係会社株式売却益 7,591百万円 連結。個別財務諸表では5,200百万円
売却の理由 有価証券報告書に記載なし 沿革と注記は売却の事実のみを記し、判断の理由を記載していない

出所:ガンホー・オンライン・エンターテイメント 有価証券報告書 第17期(2013年12月期)【関係会社の状況】【連結貸借対照表関係】・第18期(2014年12月期)【連結損益計算書関係】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】

売上高と利益の推移

ガンホー・オンライン・エンターテイメント:売上高と利益の推移

(百万円) 売上高営業利益親会社株主に帰属する当期純利益 備考
2008年12月期 11,2411,19972
2009年12月期 10,2941,74344
2010年12月期 9,2401,8451,936
2011年12月期 9,6081,1761,365
2012年12月期 25,8219,2988,209 パズル&ドラゴンズの配信開始により売上高が2.7倍になった期
2013年12月期 163,06091,22854,768 Supercell取得の期。持分法による投資損失1,284を営業外費用に計上
2014年12月期 173,06994,28362,038 関係会社株式売却益7,591を特別利益に計上した期
2015年12月期 154,32972,42543,432
2016年12月期 112,45746,08127,911
2017年12月期 92,30634,38422,397
2018年12月期 92,10126,57716,585
売上高と営業利益
売上高(百万円)営業利益(百万円)

出所:ガンホー・オンライン・エンターテイメント 有価証券報告書 第16期〜第22期(連結損益計算書、主要な経営指標等の推移)

関連会社への投資と総資産の推移

ガンホー・オンライン・エンターテイメント:関連会社への投資と総資産の推移

(百万円) 関連会社に対する投資有価証券総資産 備考
2008年12月期 −15,051 関連会社に対する投資有価証券の注記は2013年12月期のみ
2009年12月期 −12,049
2010年12月期 −13,346
2011年12月期 −14,201
2012年12月期 −25,085
2013年12月期 31,562125,390 Kahon 3 Oyへの投資。総資産の4分の1を占めた
2014年12月期 −161,081 8月の売却で投資有価証券が28,933減り、該当なしとなった
2015年12月期 −108,078
2016年12月期 −55,032
2017年12月期 −78,070
2018年12月期 −96,032
関連会社に対する投資有価証券
関連会社に対する投資有価証券(百万円)

出所:ガンホー・オンライン・エンターテイメント 有価証券報告書 第16期〜第22期(連結貸借対照表、連結貸借対照表関係)

同じ問いに直面した会社

同じ問いに直面した会社

海外撤退2014年豊田合成シーリング事業の欧州拡張と、5年後の連結除外欧州事業基盤の獲得と買収後統合
2012年ポーラ・オルビスホールディングス化粧品会社の取り込みによる、初の本格的な海外M&Aへの踏み出し海外展開とブランドポートフォリオ
2015年デンカ三井物産との共同出資によるクロロプレンゴム事業の取り込みと、米国合弁会社の設立クロロプレンゴムの生産拠点配置
2015年日本郵政国際物流への進出と、そのつまずきとしての巨額減損国内郵便の縮小に対する海外物流展開と、上場を控えた成長戦略の確保
2019年リログループグローバルリロケーション事業への参入と、5年での撤退海外展開と資本配分
海外企業の買収1990年三菱地所米国の象徴的物件への資本参加と、5年後の投資事業からの撤退対米不動産投資と、再開発ノウハウの取得
2011年住友金属鉱山チリでの権益取得から、二度の減損を経た全持分の売却までの撤退銅資源権益の取得と撤退
2026年NISSHA取得から約4か月での全株譲渡と、のれん減損6,759百万円の計上東南アジアの医療機器製造拠点の獲得と、短期での撤退
2013年LIXIL米アメリカンスタンダード北米事業の取得に続く欧州大手の取り込み海外事業の獲得と買収の財務スキーム
2013年伊藤忠商事加工食品事業とアジア青果事業をまとめて取り込む食料分野の拡大非資源戦略と食料バリューチェーンの上流取り込み
参考文献
出典・参考
  • ガンホー・オンライン・エンターテイメント 有価証券報告書 第17期・第18期【連結貸借対照表関係】【連結損益計算書関係】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】【関係会社の状況】
  • ガンホー・オンライン・エンターテイメント 有価証券報告書 第20期【沿革】
  • ガンホー・オンライン・エンターテイメント 有価証券報告書 第16期〜第22期(連結財務諸表)
  • ガンホー・オンライン・エンターテイメント 有価証券報告書「第17期(2013年12月期)【連結貸借対照表関係】Supercell Oyの株式の取得」
  • ガンホー・オンライン・エンターテイメント 有価証券報告書「第17期(2013年12月期)【関係会社の状況】」
  • ガンホー・オンライン・エンターテイメント 有価証券報告書「第18期(2014年12月期)【連結損益計算書関係】関係会社株式売却益」
  • ガンホー・オンライン・エンターテイメント 有価証券報告書「第18期(2014年12月期)【連結キャッシュ・フロー計算書関係】」
  • ガンホー・オンライン・エンターテイメント 有価証券報告書「第20期(2016年12月期)【沿革】」

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