ソフトバンクとの共同出資によるフィンランドSupercell買収と1年後の売却

グローバルゲーム市場への参入か、資本の独立性か——ソフトバンクと組んだ1,500億円投資の顛末

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時期 2013年10月
意思決定者 森下一喜 代表取締役社長CEO
論点 グローバル案件への参画と資本の独立性
概要
2013年10月、パズドラの急成長で親会社となったソフトバンクと共同で、ガンホーはフィンランドのスマホゲーム大手Supercell Oyの株式51%を約1,515億円で取得した。だが2014年8月、取得からわずか10カ月でこの持分をソフトバンクに売却し、キャッシュ化して撤退した経営判断である。
背景
パズドラのヒットで企業価値が急騰したガンホーは、2013年4月にソフトバンクの連結子会社となった。「Clash of Clans」「Hay Day」等のヒットタイトルを持つSupercellへの投資は、親会社ソフトバンクのグローバルゲーム投資戦略にガンホーが組み込まれる形で持ち上がった案件である。
内容
両社はフィンランドに共同出資会社を設立し、Supercell株式の51%を総額15.3億ドル(約1,515億円)で取得した。出資比率はソフトバンク80%(約12.24億ドル)・ガンホー20%(約3.06億ドル)で、ガンホー単独では踏み込めない規模のグローバルM&Aに、親会社の資金力を介して参画した。
含意
2014年8月、ガンホーはSupercell株保有子会社の全株式を357億円でソフトバンクへ譲渡し、75億円の特別利益を計上して撤退した。グローバル案件への参画経験を得た一方、事業規模の拡大という当初目標には届かず、経営資源を新興国市場へ振り向ける選択と集中を優先した。
筆者の見解

親会社の投資戦略に組み込まれた1年

この一件の意味は、ガンホーが単独の意思では手が届かない規模のグローバル投資を経験した一方で、その意思決定の主導権が親会社ソフトバンク側にあったことをうかがわせる点にある。出資比率でガンホーは20%にとどまり、株式取得から売却までの判断速度も、パズドラ一作で急成長した中堅企業が単独で下せる範囲を超えていたとみることができる。10カ月という短い保有期間は、この案件がガンホー自身の事業戦略というより、親会社の投資ポートフォリオの一部として扱われていたことを示している。

実際、ソフトバンクとの資本関係はこの後も流動的に推移した。2015年6月に親会社から「その他の関係会社」へ、2016年8月には資本関係が完全に解消され、ガンホーは独立企業として再出発することになる。Supercell出資と急速な撤退は、その意味で、親会社の傘下に入ることで得られる機会と、資本の独立性を保つことの間で揺れたガンホーの一時期を映す出来事であったといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

背景

パズドラの資金力とソフトバンク傘下入り

パズドラのヒットでガンホーの企業価値は2013年前半に急騰し、株式時価総額は一時1兆円を超える水準に達した。この時期、創業時の出資元であったソフトバンク株式会社(現ソフトバンクグループ)は2013年4月に株式を追加取得し、ガンホーを連結子会社とした。ガンホーにとっては、豊富な手元資金を持つ親会社の傘下に入ることで、単独では難しい規模の投資機会に接する立場を得た[1]

ソフトバンクが目を付けたのが、フィンランドのモバイルゲーム会社Supercell Oyであった。同社は「Clash of Clans」「Hay Day」等のタイトルで欧米市場を中心にヒットを飛ばすグローバルゲーム大手で、ソフトバンクはこの会社への出資に、傘下に入ったばかりのガンホーを共同出資者として組み込んだ。パズドラの実績を持つガンホーの経営陣が、Supercellとの協業やゲーム事業への知見の面で参画する意味を持つ座組みであった[2]

決断

SPC経由で51%を取得、出資比率はソフトバンク80%・ガンホー20%

2013年10月15日、ソフトバンクとガンホーはフィンランドに共同出資の特別目的会社(SPC)を設立し、このSPCを通じてSupercellの議決権付き株式51%を取得すると発表した。買収総額は15.3億ドル(当時約1,515億円)で、出資比率はソフトバンクが80%(約12.24億ドル)、ガンホーが20%(約3.06億ドル)であった。ガンホー単独の企業規模では実現し得ない金額のグローバルM&Aに、親会社の資金力を介して参画する形になった[3]

買収後もSupercellはヘルシンキの本社を維持し、CEOのイルッカ・パーナネン氏が経営を続投した。ガンホー創業者でこの時点で取締役会長を務めていた孫泰蔵氏は、買収後のSupercell取締役会にも名を連ねた。単独では自社IPの運営にとどまっていた会社が、親会社のグローバル投資戦略の一翼を担う経験を積んだ判断であった[4]

結果

10カ月での売却、特別利益76億円

2014年8月21日、ガンホーはSupercell株を間接保有する特定子会社GGF B.V.の全株式を357億1,900万円でソフトバンクへ譲渡すると発表した。この売却により、関係会社売却益75億9,100万円を特別利益として2014年12月期の連結決算に計上した。株式取得の発表から10カ月に満たない期間での撤退であった[5]

売却の理由についてガンホーは、「目標としている規模への拡大に向けては想定以上の期間を要していること、ゲーム業界を取り巻く環境変化などを鑑み、さらなる成長戦略を実現する必要がある」と説明した。欧米市場でのゲーム内相互送客などパズドラの認知向上には一定の効果があったが、ソフトバンクとガンホーが期待した事業規模には届かず、経営資源を中国・東南アジア・南米など成長が見込まれる新興国市場へ振り向ける選択と集中を優先する結論に至った[6]

出典・参考