独メテオール社の資産譲受(2014年・豊田合成の決断)

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論点 欧州のシーリング事業を譲り受けるか
豊田合成:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
シーリング事業の欧州拡張と、5年後の連結除外

何をなぜ決めたか:シーリング事業の欧州拡張と、5年後の連結除外

概要

2014年、豊田合成がドイツのゴム部品メーカー、メテオール社の自動車用シーリング事業資産を譲り受け、欧州の完成車メーカー向け基盤を得ようとした判断。5年後の2019年12月に全株式を手放し、連結から外した。

背景

1999年の英国、2000年のベルギー統括会社と拠点は置いていたものの、欧州の生産規模は薄かった。第91期の有報は譲受の狙いを「欧州カーメーカーとのビジネス拡大と収益基盤の強化」と記しており、現地の完成車メーカーとの取引を厚くすることが課題であった。

内容

2014年4月、資産の受け皿としてドイツ・ボッケネム市に豊田合成メテオール有限会社(資本金3百万ユーロ・議決権比率100%)を、米国にその子会社メテオールシーリングシステム有限会社を設立した。第92期から両社を連結の範囲に含め、負ののれん発生益320百万円を計上している。

含意

欧州事業は苦戦が続き、2019年12月30日に独米2社の全株式をドイツのプライベートエクイティファンド傘下企業へ譲渡した。現金による受取対価は0で、支配喪失に伴う事業整理損失21,615百万円をその他の費用に計上している。

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考察:顧客を買収で得ることと、顧客に選ばれること
考察

考察:顧客を買収で得ることと、顧客に選ばれること

この取引が示しているのは、製品で世界首位級であることと、その製品を別の商習慣のもとで売り切れることが別だという事実であった。ウェザストリップの設計・生産で高い水準を持つ会社が、同じ製品を作るドイツの会社を引き受けた——技術の重なりだけを見れば無理のない組み合わせで、資産譲受という慎重なスキームまで選んでいる。それでも欧州事業は苦戦が続いた。買えたのは工場と人と顧客名簿までで、現地の完成車メーカーが日本発の系列サプライヤーへ仕事を託す理由までは、資産に含まれていなかったのだろう。

手放し方には、この会社の性格が出ている。損失を先送りせず、事業ファンドへ現金の受取なしで譲り渡し、21,615百万円を一期で処理した。支配を喪失した時点で連れて行かれた現金は11,428百万円にのぼり、譲渡はキャッシュ・フローの上でも同額の支出として立っている。同じ時期にLED事業も縮小へ向かっており、2018年の"2025事業計画"以降は、地域を足していく拡張から既存事業の収益性へと判断の基準が移っている。2025年の芦森工業の買収が、地域ではなく製品の隣接領域を埋める取引であったことも、この転換の延長線上にある。買収で何を買えるのかを、この5年間はかなり具体的に教えたといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

豊田合成:欧州・アフリカセグメントの売上高とセグメント利益

売上高(百万円)
豊田合成:欧州・アフリカセグメントの売上高とセグメント利益
(百万円) 売上高セグメント利益 備考
2018年3月期 44,838△4,113 報告セグメントを地域別に組み替えた最初の期
2019年3月期 43,942△4,756
2020年3月期 35,372△4,240 12月に豊田合成メテオールを手放した期。翌期は売上25,520・損失△3,926
出所:豊田合成 有価証券報告書 第95期〜第97期(セグメント情報、報告セグメントごとの売上高および利益)
出所:豊田合成 有価証券報告書 第95期〜第97期(セグメント情報、報告セグメントごとの売上高および利益)

豊田合成:のれんと無形資産、総資産の推移

のれん(百万円)無形資産(百万円)
豊田合成:のれんと無形資産、総資産の推移
(百万円) のれん無形資産総資産 備考
2015年3月期 4392,819608,172 メテオール社の資産譲受では負ののれん320を計上しており、この残高に含まれない
2016年3月期 3262,401587,373
2017年3月期 2172,324620,699
2018年3月期 372,316662,388
2019年3月期 02,327710,114 のれんの残高がなくなった期
2020年3月期 03,741709,185
出所:豊田合成 有価証券報告書 第89期〜第97期(連結貸借対照表・連結財政状態計算書)
出所:豊田合成 有価証券報告書 第89期〜第97期(連結貸借対照表・連結財政状態計算書)

資産譲受の条件

資産譲受の条件
科目 概要 備考
譲渡側 メテオール社(ドイツ) 正式名称はMeteor Gummiwerke K. H. Baedje GmbH & Co, KG
取得の法的形式 ゴム事業の資産譲受 譲り受けた資産を持つ新会社をドイツと米国に設立している
譲受を行った主な理由 欧州カーメーカーとのビジネス拡大と収益基盤の強化 第91期【事業の状況】の記述をそのまま採った
新会社の設立 2014年4月 ドイツ・ボッケネム市に豊田合成メテオール有限会社を設立した
豊田合成メテオールの資本金 3百万ユーロ 議決権比率は100%。自動車部品事業に区分している
米国に設けた子会社 メテオールシーリングシステム有限会社 豊田合成メテオールの子会社として連結の範囲に含めた
持分法適用とした会社 エルエムアイカスタムミキシング有限会社 資産譲受に伴い、第92期から持分法適用の範囲に含めた
連結に含めた期 第92期(2015年3月期) 自動車部品事業の売上高は6,772億円と前期比9.2%増えた
負ののれん発生益 320百万円 自動車部品事業セグメント。セグメント利益には含めていない
取得原価 記載なし 【企業結合等関係】の注記はなく、取得原価と受入資産の額に開示がない
全株式の譲渡日 2019年12月30日 豊田合成メテオールと子会社メテオールシーリングシステムの全株式
譲渡先 ドイツのプライベートエクイティファンドの傘下企業 譲渡により両社に対する支配を喪失した
現金による受取対価 0百万円 支配喪失時の現金11,428百万円が流出し、同額が投資CFの支出となった
支配喪失時の資産 24,686百万円 流動資産21,331、非流動資産3,355
支配喪失時の負債 16,924百万円 流動負債4,327、非流動負債12,597
事業整理損失 21,615百万円 支配の喪失に伴って認識し、その他の費用に計上した
出所:豊田合成 有価証券報告書 第91期(2014年3月期)【事業の状況】・第92期(2015年3月期)【沿革】【関係会社の状況】【報告セグメントごとの負ののれん発生益に関する情報】・第97期(2020年3月期)【連結財務諸表注記 33.企業結合】
出所:豊田合成 有価証券報告書 第91期(2014年3月期)【事業の状況】・第92期(2015年3月期)【沿革】【関係会社の状況】【報告セグメントごとの負ののれん発生益に関する情報】・第97期(2020年3月期)【連結財務諸表注記 33.企業結合】
参考文献

参考文献

参考
  • 豊田合成 有価証券報告書 第91期(2014年3月期・連結)
  • 豊田合成 有価証券報告書 第92期(2015年3月期・連結・IFRS)【沿革】【関係会社の状況】
  • 豊田合成 有価証券報告書 第95期〜第97期(2018年3月期〜2020年3月期・連結・IFRS)
  • 豊田合成 中長期経営計画「2025事業計画」
  • 豊田合成 有価証券報告書「第91期(2013年4月1日〜2014年3月31日)有価証券報告書」
  • 豊田合成 有価証券報告書「第92期(2014年4月1日〜2015年3月31日)有価証券報告書」
  • 豊田合成 有価証券報告書「第97期(2019年4月1日〜2020年3月31日)有価証券報告書」

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