三井住友フィナンシャルグループ BTPNの子会社化 インドネシア——40%出資から現地二行統合までの6年
更新:
何をなぜ決めたか
- 概要
-
2013年5月、三井住友銀行がインドネシアの商業銀行BTPNの株式を取得し、2014年3月期から持分法適用の関連会社とした一連の経営判断。同期末の議決権比率は40.00%で、いずれも間接所有である。
2019年1月30日に57.92%を追加取得して議決権98.50%の連結子会社とし、翌2月1日には現地法人インドネシア三井住友銀行を吸収合併させた。SMBCグループがアジアの成長を取り込むマルチフランチャイズ戦略を最初に実行した案件となった。
- 背景
-
国内の貸出市場が成熟し残高の伸びが細るなか、SMBCグループは中長期でアジアの成長に収益の源を求めた。人口・資源に恵まれ個人消費の伸びるインドネシアで、リテールと中小企業向け金融に強いBTPNが、現地の顧客基盤ごと取り込む相手として選ばれた。
- 内容
-
TPG Nusantaraほかから買い増して2014年3月期末に40.00%とし、2016年3月期末は40.45%まで高めた。子会社化は2019年1月30日で、追加取得の対価は現金1,114億円、既保有分の時価を加えた取得原価は1,894億円である。
のれんは47億円と小さく、発生年度に全額を償却した。むしろ大きいのは、のれん以外の無形固定資産に配分した507億円で、うちコア預金が281億円を占める。ホールセールに強い現地法人と統合し、フルラインの商業銀行とした。
- 含意
-
過半に届かない40%から入り、6年かけて子会社化・統合へ運ぶ段階的な海外進出の型を示した。持分法の期間はグループの持分法投資損益を通じて損益に映り、2016年3月期には市場価格の下落でBTPNに係るのれんを減損して362億円の損失を計上している。
BTPNを第一号に、インド・ベトナム・フィリピンへ出資先を広げるアジア戦略の出発点となったが、収益化にはなお時間を要している。
いつ何が起きたか 6件
筆者の見解
40%という中途から始めた、慎重な海外進出
この判断の核心は、成熟した国内市場を抱える邦銀が、成長するアジアの個人・中小企業市場へ、銀行そのものへの出資を通じて入り込んだ点にある。40%という過半に届かない持分から始めたのは、現地の経営と顧客基盤を壊さず、段階を踏んで関与を深めるためであった。出資、持分法、追加取得、そして現地二行の統合による子会社化——6年をかけた漸進の各段は、規制と現地事情の許す速さに合わせて関与を強める、慎重な海外進出の一つの型を示している。
もっとも、成果が数字に表れるには時間がかかった。BTPNを第一号に、インド・ベトナム・フィリピンへと出資先を広げたマルチフランチャイズ戦略は、各国の景気や規制に左右され、想定した収益にはなお届いていない。それでも、退職者向け融資の地方銀行を大企業取引まで担う商業銀行へ組み替え、SMBCの名を冠する拠点に育てた事実は残る。国内で稼いだ資本をアジアの成長へ振り向ける長い賭けの当否は、これから十数年の各国事業の伸びが決める。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
出資と子会社化の条件
出資と子会社化の条件
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 出資先 | PT Bank Tabungan Pensiunan Nasional Tbk | インドネシア共和国ジャカルタ市。銀行業。資本金116,805百万インドネシアルピア |
| 持分法適用関連会社とした期 | 2014年3月期 | 三井住友銀行の株式取得による。取得額は会社の公表資料に記載がない |
| 出資比率 | 40.00% | 2014年3月期末。全て間接所有。2016年3月期末は40.45% |
| 子会社化の企業結合日 | 2019年1月30日 | 三井住友銀行が普通株式を追加取得し、同社と子会社1社を連結子会社とした |
| 企業結合の法的形式 | 株式取得 | 追加取得分の対価は現金 |
| 結合直前の議決権比率 | 40.58% | |
| 追加取得した議決権比率 | 57.92% | |
| 取得後の議決権比率 | 98.50% | |
| 取得原価 | 189,390百万円 | 既保有分の結合時の時価78,025百万円と、追加取得の現金対価111,365百万円 |
| 段階取得に係る差益 | 2,285百万円 | 取得原価と取引ごとの取得原価の合計額187,105百万円との差額 |
| 取得関連費用 | 776百万円 | アドバイザリー費用等 |
| のれん | 4,707百万円 | 金額に重要性が乏しいため発生年度に全額償却した |
| のれん以外の無形固定資産 | 50,653百万円 | 加重平均13年。市場関連9,706、顧客関連12,845、コア預金28,102百万円 |
| 受け入れた資産 | 837,523百万円 | うち貸出金522,918百万円 |
| 引き受けた負債 | 643,346百万円 | うち預金538,529百万円 |
| 連結した業績の期間 | 2019年1月1日〜3月31日 | 2018年4〜12月の損益は持分法による投資損益に計上している |
| 結合の理由 | フルラインの商業銀行の展開 | ホールセールとリテールを一つの銀行で手掛け、幅広い金融サービスを提供する |
| 現地二行の合併 | 2019年2月1日 | インドネシア三井住友銀行を吸収合併し、PT Bank BTPN Tbkへ商号変更した |
出所:三井住友フィナンシャルグループ 有価証券報告書 第12期(2014年3月期)・第14期(2016年3月期)【関係会社の状況】・第17期(2019年3月期)【企業結合等関係】
持分法による投資損益の推移
三井住友フィナンシャルグループ:持分法による投資損益の推移
| (億円) | 持分法による投資損益 | 備考 |
|---|---|---|
| 2009年3月期 | △948 | |
| 2010年3月期 | △215 | |
| 2011年3月期 | △133 | |
| 2012年3月期 | △311 | |
| 2013年3月期 | 53 | |
| 2014年3月期 | 102 | BTPNほか6社を持分法適用の関連会社に加えた期 |
| 2015年3月期 | △106 | |
| 2016年3月期 | △362 | 市場価格の下落でBTPNに係るのれんを減損したことが主因 |
| 2017年3月期 | 246 | |
| 2018年3月期 | 390 | |
| 2019年3月期 | 611 | BTPNの2018年4〜12月の損益はここに含まれる。1月から連結へ移った |
出所:三井住友フィナンシャルグループ 有価証券報告書 第7〜17期(連結粗利益の内訳)
連結従業員数の推移
三井住友フィナンシャルグループ:連結従業員数の推移
| (人) | 連結従業員数 | 備考 |
|---|---|---|
| 2009年3月期 | 48,079 | |
| 2010年3月期 | 57,888 | |
| 2011年3月期 | 61,555 | |
| 2012年3月期 | 64,225 | |
| 2013年3月期 | 64,635 | |
| 2014年3月期 | 66,475 | |
| 2015年3月期 | 68,739 | |
| 2016年3月期 | 73,652 | |
| 2017年3月期 | 77,205 | |
| 2018年3月期 | 72,978 | |
| 2019年3月期 | 86,659 | BTPNと子会社1社の従業員は国際事業部門に含めている |
出所:三井住友フィナンシャルグループ 有価証券報告書 第7〜17期(従業員の状況)
同じ問いに直面した会社
同じ問いに直面した会社
参考文献
- SMBCグループ二十年史「Bank BTPNの沿革」(三井住友フィナンシャルグループ)
- SMBCグループ二十年史「アジアにおけるマルチフランチャイズ戦略の展開」(三井住友フィナンシャルグループ)
- 三井住友フィナンシャルグループ 有価証券報告書「第12期(2014年3月期)【関係会社の状況】【連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項】」
- 三井住友フィナンシャルグループ 有価証券報告書「第14期(2016年3月期)【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」
- 三井住友フィナンシャルグループ 有価証券報告書「第17期(2019年3月期)【企業結合等関係】」
- 三井住友フィナンシャルグループ・三井住友銀行 ニュースリリース「三井住友銀行によるインドネシア・PT Bank Tabungan Pensiunan Nasional Tbk の株式追加取得及びインドネシア三井住友銀行との合併について」