ベトナム・FE CreditとVPBankへの出資——消費者金融49%取得から地場大手銀行15%出資へ
2023年実施国内の超低金利で利ざやが細る銀行が、なぜベトナムの消費者金融最大手の株式半分と、地場有力銀行の15%を続けて買ったのか
- 概要
- 2021年、三井住友フィナンシャルグループはベトナム消費者金融最大手FE Creditの株式49%を子会社SMBCコンシューマーファイナンスを通じて取得し、2023年には三井住友銀行がその親会社である地場有力銀行VPBankへ15%を出資した経営判断。国内の超低金利で利ざやが細るなか、成長するベトナムの個人金融へ二段構えで資本を入れた。
- 背景
- SMBCグループは2020年度からの中期経営計画で「アジアのフランチャイズ拡大とデジタル金融強化」を掲げ、インドネシアに続く周辺国への出資を検討していた。日本国内の低金利で稼ぐ場が狭まるなか、成長の速いベトナムは重要な出資先とみなされた。
- 内容
- 第一段は2021年4月、SMBCコンシューマーファイナンスが市場シェア約5割のFE Credit49%を取得(同年10月完了、持分法適用会社化)。第二段は2023年3月、三井住友銀行がVPBank普通株式15%を第三者割当増資で約1,831億円で引き受け、地場有力銀行を新たなパートナーとした。
- 含意
- 出資直後、ベトナムの消費者金融はコロナ後の不況で失速し、FE Creditは赤字に転じた。三井住友FGは2024年3月期にのれん減損460億円、2025年3月期にVPBank・FE Credit合わせて1,350億円を計上した。高成長市場での持分出資が、短い期間では減損という代償を伴った例となった。
高成長への出資が、まず費用を先に映した
この判断の核心は、国内で稼ぎにくくなった銀行が、成長するベトナムの個人金融へ二段構えで資本を入れた点にある。まず消費者金融最大手FE Creditの株式半分を押さえ、続いてその親銀行VPBankの一角に入る。融資の利ざやが薄い日本を離れ、銀行口座を持たない層が厚い新興国の個人金融に、経営を丸ごと抱えるのではなく持分という軽い形で足場を求めた。インドネシアからベトナムへと、地場の担い手に出資して成長を分け取るアジア展開の一手だった。
もっとも、成長を当て込んだ出資は、早々に代償を求められた。FE Creditはコロナ後の不況で赤字に沈み、三井住友フィナンシャルグループは二年続けて、合わせて1,800億円を超えるのれん減損を積んだ。太田純社長の急逝を挟み、後任の中島達のもとで海外の投資先は選別と整理の対象になった。高い成長率と高い株価の新興国銀行に出資益を見込む手法が、短い期間では減損という逆の結果をもたらすことを、この一件は映している。腰を据えて配当と協業の果実を待てるか——ベトナムでの判断の成否は、なお先の年月に委ねられている。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
背景
国内の低金利と、アジアへ傾く成長戦略
2010年代を通じて日本の政策金利はゼロ近傍に張りつき、2016年のマイナス金利導入で国内の貸出利ざやはいっそう薄くなった。預金と貸出の差で稼ぐ従来型の収益に頼りにくくなった三井住友フィナンシャルグループは、成長の速いアジアに第二・第三の収益源を求めた。2020年度からの中期経営計画は「アジアのフランチャイズ拡大とデジタル金融強化」を掲げ、インドネシアの事業基盤に続いて周辺国への出資を検討していた[1]。
ベトナム消費者金融最大手FE Credit
出資先のFE Creditは、ベトナムで個人消費者向けに無担保ローンやクレジットカードを提供する、市場シェア約50%の業界最大手のコンシューマーファイナンス会社である。VPBankの100%子会社として2015年にホーチミンで設立され、全国的なネットワークと先進的なモバイルアプリで幅広い層に貸し出していた。営業収入は2019年12月期に866億円、当期純利益は年150億円前後に達し、総資産は3,000億円台に育っていた[2]。
決断
2021年、FE Credit株式49%の取得
2021年4月28日、三井住友フィナンシャルグループは、連結子会社のSMBCコンシューマーファイナンスを通じて、VPBankの100%子会社であるFE Creditの持分49.0%を、関係当局の許認可を前提に取得すると公表した。決めたのは、前々年に就任した執行役社長グループCEOの太田純である。出資額を同社は公表しなかったが、日本経済新聞は最大約1,500億円と伝えている。国内の低金利で収益機会が細るなか、成長力の高いアジア市場へ資本を入れる判断だった[3][4]。
取得は同年10月28日に完了した。ベトナム国家銀行の認可を経てSMBCコンシューマーファイナンスが49.0%を握り、FE CreditはVPBank SMBC Finance Companyへ社名を改めた。株主構成はVPBankが50%、SMBCコンシューマーファイナンスが49%、その他1%となり、同社は三井住友フィナンシャルグループの持分法適用会社に加わった。FE Creditの先進的なデジタル手法を取り込み、アジアでの成長戦略を強める狙いだった[5]。
2023年、VPBank本体への15%出資
個人金融の会社に続いて、その親銀行そのものへ資本を入れた。2023年3月27日、三井住友フィナンシャルグループと三井住友銀行は、VPBankの普通株式15%を第三者割当増資で取得すると公表する。出資額は総額35.9兆ベトナムドン、約1,831億円で、出資主体は三井住友銀行。これによりVPBankは三井住友フィナンシャルグループと三井住友銀行の持分法適用会社となる予定とされた。決めたのは変わらず太田純社長、三井住友銀行は髙島誠頭取が担った[6]。
背景には二段の布石があった。2021年10月にFE Creditへの出資を終え、2022年5月には三井住友銀行がVPBankと業務提携契約を結んで、日系顧客の紹介や商品提供で協業を進めていた。今回の資本参加で、SMBCグループはリテールと中小企業金融に強いVPBankをベトナムでの新たなパートナー銀行と定め、関係当局の許認可を前提に、同行の成長を持分法で取り込む狙いを据えた[7]。
結果
消費者金融の失速と、のれん減損
出資の直後、当て込んだ成長は逆風に変わった。コロナ後のベトナムでは個人の返済が滞り、消費者金融の市況はこの十年で最も冷え込む。FE Creditは2022年から赤字に沈み、三井住友フィナンシャルグループは2024年3月期に、持分法適用会社FE Creditについてのれん減損460億円を計上した。同期の海外関連損失の主因となり、高成長を見込んで払った買収額の一部を、早くも取り崩す結果となった[8]。
整理は翌年に及んだ。2023年11月に太田純社長が在任のまま急逝し、12月に就いた中島達のもとで、海外の投資先は選別と見直しの対象になった。三井住友フィナンシャルグループは2025年3月期に、VPBankとFE Creditを合わせたのれん減損1,350億円を積み、米国貨車リース事業の売却損などとともに海外ポートフォリオを整理した。ベトナムでの二段の出資は、成長を取り込む前に、まず費用を先に計上させた[9]。
- 株式会社三井住友フィナンシャルグループ・SMBCコンシューマーファイナンス(2021年4月28日)「SMBCコンシューマーファイナンス株式会社によるベトナム・FE Credit出資について」
- 株式会社三井住友フィナンシャルグループ・SMBCコンシューマーファイナンス(2021年10月28日)「SMBCコンシューマーファイナンス株式会社によるベトナム・FE Credit出資完了について」
- 株式会社三井住友フィナンシャルグループ・株式会社三井住友銀行(2023年3月27日)「ベトナム商業銀行Vietnam Prosperity Joint Stock Commercial Bank 出資について」
- 日本経済新聞(2021年4月)「三井住友、最大1500億円出資」
- Vietnam News(2023年10月20日)「VPBank completes sale of 15% equity stake to strategic investor SMBC」
- 三井住友フィナンシャルグループ 2024年3月期 決算説明資料
- 三井住友フィナンシャルグループ 2025年3月期 決算説明資料
- FACTA(2026年7月)「決算「深読」三井住友FG/集団浅慮の海外M&A/「のれん減損」に四苦八苦」