三井住友フィナンシャルグループ 米ジェフリーズと資本提携 海外投資銀行の機能を自前ではなく提携で補うという選択
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何をなぜ決めたか
- 概要
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2021年7月、SMBCグループが米独立系投資銀行ジェフリーズと戦略的資本・業務提携を締結した経営判断。三井住友銀行が普通株式10,500,000株を資本・業務提携目的で取得し、コーポレート&インベストメントバンキング分野で協業を始めた。
2022年3月期末の貸借対照表計上額は422億円。以後、協業領域と持分を段階的に広げ、2025年3月期末の普通株式の計上額は741億円まで増えている。
- 背景
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3メガバンクの一角ながら、SMBCグループは海外の投資銀行業務で米欧勢に見劣りしていた。2020年度からの中期経営計画は海外CIBビジネスの高度化を最優先に掲げたが、M&A助言や株式引受、レバレッジドファイナンスの実績を自前で一から積むには、長い時間と多額の資本を要する。
- 内容
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当局認可を前提にジェフリーズ株を市場取得し、米国の非投資適格企業向けレバレッジドファイナンス、日本関連クロスボーダーM&A、米国ヘルスケアの3分野で協働を開始した。買収でも純粋な業務提携でもない、資本を絡めた提携である。
2024年3月期には普通株式の全てを無議決権優先株式へ転換し、非上場株式が1,144億円増えた。2025年3月期には取得価額1,396億円の普通株式を取得し直し、うち571億円を再び優先株式へ替えている。議決権を伴わない形で経済持分だけを厚くする組み立てである。
- 含意
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提携は2023年に米国の投資適格企業向けM&A・株式引受へ広がり、経済持分は希薄化後ベースで最大15%、2025年には最大20.0%まで引き上げる方針に至った。議決権を伴わない優先株式で経済持分だけを厚くする組み立てで、経営への関与は抑えられている。
グローバル事業部門の連結業務純益は提携時の4,312億円から2024年3月期に6,449億円まで伸びた。自前主義でなく他社の実績を借りて海外投資銀行を補う路線を、SMBCは定着させた。
いつ何が起きたか 6件
筆者の見解
機能を借りるという選び方
この判断の核心は、海外の投資銀行の機能を、自前で築くのでも丸ごと買うのでもなく、他社に少数出資して借りた点にある。3メガバンクは長く米欧の投資銀行業務で存在感を欠き、リーマン危機の後には日本勢が海外拠点を広げては退く例も相次いだ。太田純氏はその轍を避け、実績あるジェフリーズと資本で結びつきながら、まず業務の協働で果実を確かめ、成果に応じて持ち分を4.9%、15%、20%と刻んで上げていく道を選んだ。全株を取得する買収より危険は軽く、資本を伴わない提携より結びつきは固い。
もっとも、借りた機能は自分のものではない。SMBCは無議決権の株式で持ち分を積み、議決権は5%を超えないよう抑えている。経営権を握らないぶんジェフリーズの独立は保たれ、両社の利害がいつまで重なるかは相手の戦略にもかかっている。提携を描いた太田純氏の死後も路線が続いたことは、これが個人の思いつきでなく組織の選択だったことを示す。他社の実績を借りて海外投資銀行の弱みを補うこのやり方が、自前にこだわった時代の反省をどこまで超えられるか。段階を踏む設計は、その問いへの答えを急がずに測るための仕掛けでもある。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
資本提携の条件
資本提携の条件
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 相手方 | Jefferies Financial Group Inc. | 米国最大手の独立系投資銀行の一つ。ニューヨーク証券取引所上場 |
| 保有の主体 | 三井住友銀行 | 純投資目的以外の目的である投資株式として計上している |
| 契約の性格 | 戦略的資本・業務提携契約 | コーポレート&インベストメント分野での協業のために株式を保有する |
| 取得した株式数 | 10,500,000株 | 2022年3月期に資本・業務提携目的の株式取得により増加した |
| 2022年3月期末の計上額 | 42,222百万円 | 前事業年度末は保有していない |
| 2023年3月期末の計上額 | 44,504百万円 | 株式数は10,500,000株のまま変わっていない |
| 相手方による当社株式の保有 | 2023年3月期末まで無 | 2025年3月期末は「有」に変わっている |
| 2024年3月期の転換 | 普通株式を無議決権優先株式へ | 非上場株式が114,373百万円増え、上場株式は106,414百万円の売却価額で減少 |
| 2025年3月期の普通株式取得 | 139,572百万円 | 協業体制の拡充を目的とする取得価額。期末の保有株式数は9,247,081株 |
| 2025年3月期の転換 | 57,108百万円 | 優先株式への転換による非上場株式の増加額。減少側の売却価額は45,217百万円 |
| 2025年3月期末の計上額 | 74,072百万円 | 普通株式ぶん。無議決権優先株式は非上場株式として別に計上される |
出所:三井住友フィナンシャルグループ 有価証券報告書 第20期(2022年3月期)〜第23期(2025年3月期)【株式の保有状況】(株式会社三井住友銀行が保有する株式)
グローバル事業部門の業績
三井住友フィナンシャルグループ:グローバル事業部門の業績
| (億円) | 連結粗利益 | 連結業務純益 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2017年3月期 | 5,661 | 3,634 | この期の名称は国際事業部門 |
| 2018年3月期 | 6,320 | 3,982 | |
| 2019年3月期 | 6,896 | 3,951 | 国際事業部門としての最後の期 |
| 2020年3月期 | 6,671 | 3,712 | グローバル事業部門へ改め、区分を組み替えた期。前期からは連続しない |
| 2021年3月期 | 7,237 | 3,667 | |
| 2022年3月期 | 8,720 | 4,312 | ジェフリーズとの提携を締結した期 |
| 2023年3月期 | 12,052 | 6,122 | |
| 2024年3月期 | 13,759 | 6,449 | 航空機リースの保険金受領を含む。提携の寄与だけを取り出せない |
| 2025年3月期 | 13,449 | 5,920 |
出所:三井住友フィナンシャルグループ 有価証券報告書 第16〜23期(セグメントの業績)
ジェフリーズ普通株式の貸借対照表計上額
三井住友フィナンシャルグループ:ジェフリーズ普通株式の貸借対照表計上額
| (百万円) | 貸借対照表計上額 | 備考 |
|---|---|---|
| 2022年3月期 | 42,222 | 資本・業務提携目的で普通株式10,500,000株を取得した期 |
| 2023年3月期 | 44,504 | |
| 2025年3月期 | 74,072 | 普通株式9,247,081株を取得し直した。優先株式は非上場株式として別掲 |
出所:三井住友フィナンシャルグループ 有価証券報告書 第20〜23期(株式の保有状況)
同じ問いに直面した会社
参考文献
- 三井住友フィナンシャルグループ・三井住友銀行・SMBC日興証券 ニュースリリース「米国総合証券会社Jefferiesとの戦略的資本・業務提携について」
- 三井住友フィナンシャルグループ・三井住友銀行・SMBC日興証券 ニュースリリース「米国総合証券会社Jefferiesとの戦略的資本・業務提携の強化について」
- 三井住友フィナンシャルグループ・三井住友銀行・SMBC日興証券 ニュースリリース「米国総合証券会社Jefferiesとのホールセール日本株事業の統合を核とする戦略的資本・業務提携の強化について」
- 三井住友フィナンシャルグループ 有価証券報告書「第20〜23期(2022年3月期〜2025年3月期)【株式の保有状況】」
- 三井住友フィナンシャルグループ 決算説明会質疑応答「2023年3月期決算(2023年5月16日)・2025年3月期決算(2025年5月16日)」