買収の判断そのものは、当時の材料から見れば無理のないものであったと思われる。国内のATM網は全国を覆い終え、伸びはコンビニの出店数に縛られていた。米国はATM運営として世界最大の市場で、グループのセブン-イレブンも存在した。有価証券報告書がFCTIの特徴として挙げたのは、ATMを自社で所有することで手数料設定を主体的に管理できるという点である。日本で成り立っていたのは、提携金融機関から受け取る手数料であり、自前のATMを減らしたい金融機関との関係に支えられた収益であった。買ったのは、それとは逆向きの型であった。
自社所有・自己設定という型は、利用者から直接手数料を取る以上、現金を使う人が減れば正面から影響を受ける。米国セブン-イレブンへの設置を約8,000台まで積み増した先で、2019年3月期に減損損失14,830百万円を計上した順序は、規模を先に作れば収益が追いつくという前提が働かなかったことを示している。海外事業セグメントの経常損益は2017年3月期から3期続けて赤字で、買収で載せたのれん88百万米ドルは10年の償却を終える前に残高を失った。もっとも、この買収がなければセブン銀行は連結財務諸表すら作っていない会社のままであり、2013年3月期に949億円だった連結経常収益は6期後に1,472億円へ増えている。減損で消えたのは買った超過収益力の帳簿価額であって、米国に置いた足場そのものではない。移植できなかったのは日本固有の収益の型であり、移植できたのは市場に居続けるための体制であったのだろう。