オリックス銀行の全株取得(2026年・大和証券グループ本社の決断)

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論点 余る預金の運用先を買収で得るか
大和証券グループ本社:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
預金の貸出先となる融資機能の取得と市場運用型銀行からの脱却

何をなぜ決めたか:預金の貸出先となる融資機能の取得と市場運用型銀行からの脱却

概要

2026年4月27日、大和証券グループ本社の完全子会社である大和ネクスト銀行が、オリックスとの間でオリックス銀行の全株式を取得する株式譲渡契約を結んだ経営判断。取得価額は3,700億円で、最終額は契約に定める価格調整を経て決まる。対価は現金で、取得後の議決権比率は100%(すべて間接所有)となり、オリックス銀行は大和証券グループ本社の特定子会社に当たる。企業結合日は2026年10月までを予定し、実行には関係当局の許認可が要る。

背景

大和ネクスト銀行は2011年の開業以来、証券ビジネスへのゲートウェイ銀行として、ローコスト経営と市場運用型のモデルで業績を伸ばしてきた。ところが日銀当座預金の残高は2兆円規模に達し、集めた預金を効率よく運用できていない。大和証券の側でも証券担保ローン・不動産担保ローンや相続関連の融資・信託の需要が高まっていたが、いまの大和ネクスト銀行の機能では応えきれなかった。「金利ある世界」への移行で、負債を含む総資産を対象にした助言の需要が高まったことも、銀行機能の拡充を急がせた。

内容

オリックス銀行は不動産関連融資と信託関連業務を中核とする銀行で、資本金は450億円、2025年3月31日現在の純資産は270,399百万円、総資産は3,112,066百万円だった。2025年3月期の経常収益は70,356百万円、当期純利益は20,893百万円。大和証券グループとの間に資本・人的・取引のいずれの関係もなかった。オリックス銀行の融資・信託の機能と専門人材に、大和証券グループの顧客基盤を背景とした預金の獲得力を組み合わせ、預金拡大と融資拡大の循環をつくる。

含意

大和ネクスト銀行の預金残高(譲渡性預金を含む)は2026年3月期末に前年度末比17.5%増の5.0兆円、口座数は228万口座に達した。オリックス銀行の総資産3.1兆円に匹敵する預金を抱えながら、その運用先を持たなかったことになる。一方、取得の実行後は不動産関連融資が加わり、不動産関連融資の信用リスクや、特定の業種・資産への与信集中リスクが増す。将来は大和ネクスト銀行とオリックス銀行の合併による機能統合を予定している。

いつ何が起きたか 5件
当時の取締役 12名

当時の取締役(2025年6月株主総会決議)

考察:余った預金に行き先を買う
考察

考察:余った預金に行き先を買う

この買収は銀行業への新規参入ではなく、15年前に始めた銀行の設計を改める判断と読むべきだろう。大和ネクスト銀行は証券の顧客から預金を集めることには長けていたが、貸す相手を持たないまま、日銀当座預金に2兆円規模を寝かせていた。金利のない時代なら低コストの市場運用で足りたが、金利が付き始めると、集めた預金を貸出に回せないこと自体が損になる。3,700億円は、融資と信託の機能と人材をゼロから育てる時間を買う値段とみることができる。

もっとも、引き受けるのは機能だけではない。不動産関連融資を中核とする銀行を抱えれば、大和証券グループは自ら信用リスクと与信集中のリスクを負うことになる。市場運用型で身軽だった銀行が、不動産市況や金利の変動に業績を左右される銀行へ変わる。ウェルスマネジメント部門の経常利益率が37.9%まで上がった局面で、安定収益の柱を広げる狙いが実を結ぶかは、合併後に預金と融資の循環が本当に回るかにかかっていると思われる。

Yutaka Sugiura, 2026年10月
数字で見る 3表

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図と表

大和証券グループ本社:オリックス銀行の業績の推移

オリックス銀行経常収益(百万円)オリックス銀行当期純利益率(%)

経常収益は3期で633億円から704億円へ伸び、純利益率は30%前後を保つ

大和証券グループ本社:オリックス銀行の業績の推移
(百万円) オリックス銀行経常収益オリックス銀行経常利益オリックス銀行当期純利益
2023年3月期 63,33928,19919,503
2024年3月期 64,38428,26619,721
2025年3月期 70,35629,92820,893
出所:大和証券グループ本社 臨時報告書(2026年4月27日提出、子会社取得の決定・特定子会社の異動)
出所:大和証券グループ本社 臨時報告書(2026年4月27日提出、子会社取得の決定・特定子会社の異動)

大和証券グループ本社:ウェルスマネジメント部門の推移

ウェルスマネジメント部門純営業収益(百万円)ウェルスマネジメント部門経常利益率(%)

部門の経常利益率は2年で29.0%から37.9%へ上がっていた

大和証券グループ本社:ウェルスマネジメント部門の推移
(百万円) ウェルスマネジメント部門純営業収益ウェルスマネジメント部門経常利益 備考
2024年3月期 228,13166,213
2025年3月期 255,84180,664
2026年3月期 295,788112,033 大和ネクスト銀行の預金残高は5.0兆円、口座数は228万口座
出所:大和証券グループ本社 有価証券報告書 第88期・第89期(セグメント別の純営業収益及び経常利益)
出所:大和証券グループ本社 有価証券報告書 第88期・第89期(セグメント別の純営業収益及び経常利益)

大和証券グループ本社:連結貸借対照表の銀行業における預金

銀行業における預金(百万円)

預金は1年で7,443億円増えて5兆420億円に達し、運用先が要った

大和証券グループ本社:連結貸借対照表の銀行業における預金
(百万円) 銀行業における預金 備考
2024年3月期 4,511,603
2025年3月期 4,297,685
2026年3月期 5,042,025 前年度末比7,443億円(17.3%)増
出所:大和証券グループ本社 有価証券報告書 第88期・第89期(連結貸借対照表)
出所:大和証券グループ本社 有価証券報告書 第88期・第89期(連結貸借対照表)
当時の取締役 12名

当時の取締役(2025年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • 大和証券グループ本社 臨時報告書「臨時報告書(子会社取得の決定・特定子会社の異動、オリックス銀行株式会社)」
  • 大和証券グループ本社 有価証券報告書「第89期(2026年3月期)【重要な後発事象】」
  • 大和証券グループ本社 有価証券報告書「第89期(2026年3月期)【事業等のリスク】【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」
  • 大和証券グループ本社 有価証券報告書「第88期・第89期(連結貸借対照表、セグメント情報)」

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