大和証券内部者取引事案(2012年・大和証券グループ本社の決断)

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論点内部管理態勢をどう立て直すか
大和証券グループ本社:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
子会社の元社員の関与認定を受けた調査委員会の設置と内部管理態勢の立て直し2012年6月29日付で証券取引等監視委員会が課徴金納付命令勧告を行った内部者取引の事案において、子会社の大和証券株式会社の元社員の関与が認められるとの認定が当局から示された。大和証券は社外の弁護士等から成る調査委員会を設置し、改善策を策定・実行した。

何をなぜ決めたか:子会社の元社員の関与認定を受けた調査委員会の設置と内部管理態勢の立て直し

概要

2012年6月29日付で証券取引等監視委員会が課徴金納付命令勧告を行った内部者取引の事案において、子会社の大和証券株式会社の元社員の関与が認められるとの認定が当局から示された。大和証券は社外の弁護士等から成る調査委員会を設置し、改善策を策定・実行した。

認定が及んだのは元社員個人の関与であり、法人としての大和証券および持株会社への課徴金納付命令や業務改善命令は有価証券報告書に記載がない。持株会社である大和証券グループ本社は、内部管理態勢の強化・改善の継続と、本邦資本市場の信頼回復及び発展への貢献を掲げた。

背景

勧告の2か月前、2012年4月に大和証券株式会社は大和証券キャピタル・マーケッツ株式会社を吸収合併している。個人向けのリテールと法人向けのホールセールが1つの証券会社に同居する体制へ移行した直後であった。

ホールセール部門は、機関投資家等を対象に有価証券のセールス及びトレーディングを行うグローバル・マーケッツと、事業法人・金融法人等が発行する有価証券の引受けやM&Aのアドバイザリー業務を行うグローバル・インベストメント・バンキングで構成される。発行体の未公表情報、すなわち法人関係情報が集まるのは、この引受業務の現場である。

内容

調査委員会を設置したのは持株会社ではなく、元社員が籍を置いていた大和証券株式会社であった。社外の弁護士等から成る委員会が編成され、改善策が策定・実行に移された。

持株会社では2013年4月付で従来のコンプライアンス部を分割してコンプライアンス統括部を新設し、コンプライアンス全般に係る統制機能の専門性と効率性を高めている。2013年度の監査委員会監査では、安定収益の確保及び収益基盤の拡大に向けた取組みとリスク管理、グローバルビジネスの内部統制と並んで、法人関係情報等の管理態勢が重点課題に据えられた。

含意

有価証券報告書には、事案の対象となった銘柄も、課徴金の額も、改善策の中身も記されていない。開示されたのは勧告の日付と、元社員の関与が認定された事実と、調査委員会を設置したという一事である。

事案の年度である2013年3月期のホールセール部門は、純営業収益1,331億円・経常利益120億円。区分再編前の2012年3月期はグローバル・マーケッツ部門が544億円、グローバル・インベストメント・バンキング部門が142億円の経常損失を抱えており、部門は損失から浮上する途上にあった。翌2014年3月期には純営業収益1,753億円・経常利益474億円へ伸びている。

いつ何が起きたか6件
考察:処分を受けなかった会社が自ら調べた
考察

考察:処分を受けなかった会社が自ら調べた

調査委員会を設置したのは持株会社ではなく、元社員が籍を置いていた大和証券株式会社であった。法人としての処分を受けたわけでもない子会社が、社外の弁護士等を招いて自ら調べたという構図は、この事案が法令上の責任の所在をめぐる問題としてではなく、引受業務の現場に集まる法人関係情報をどう封じるかという実務の問題として扱われたことを示しているだろう。2012年4月にキャピタル・マーケッツを吸収合併し、リテールとホールセールが1つの会社に同居する体制へ移行した直後でもあった。情報の壁を引き直す必要は、統合の側からも生じていたはずである。

もっとも、何をどう改めたのかは外からは見えない。対象となった銘柄も、課徴金の額も、改善策の具体も開示されていない。持株会社で追えるのは、2013年4月のコンプライアンス統括部の新設と、2013年度の監査委員会監査が法人関係情報等の管理態勢を重点課題に据えたことの2つだけである。行政処分を免れた分だけ、再発防止の実効を外から測る物差しもまた置かれなかったのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年9月
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図と表

大和証券グループ本社:ホールセール部門の業績

ホールセール部門の純営業収益(億円)ホールセール部門の経常利益率(%)
大和証券グループ本社:ホールセール部門の業績
(億円)ホールセール部門の純営業収益ホールセール部門の経常利益備考
2013年3月期1,331120勧告は2012年6月29日。キャピタル・マーケッツの統合に伴い区分を再編した期
2014年3月期1,753474日本株の顧客フローの増加と債券販売の拡大により純営業収益は31.7%増
2015年3月期1,805528
2016年3月期1,780488投資銀行業務収益が減少し、純営業収益は1.4%減
2017年3月期1,828654
2018年3月期1,711453連結純営業収益に占める割合は33.9%、連結経常利益に占める割合は29.1%
出所:大和証券グループ本社 有価証券報告書 第76〜81期(セグメント別の業績)
出所:大和証券グループ本社 有価証券報告書 第76〜81期(セグメント別の業績)

経緯と対応

経緯と対応
科目概要備考
当局の勧告2012年6月29日証券取引等監視委員会が内部者取引の事案で課徴金納付命令勧告を行った
当局の認定元社員の関与子会社の大和証券株式会社の元社員の関与が認められるとの認定が示された
調査委員会の設置大和証券株式会社社外の弁護士等から成る委員会。持株会社ではなく当事者の子会社が設置した
会社の対応改善策の策定・実行大和証券において策定し、実行に移した
グループの方針内部管理態勢の強化・改善継続的な実行と、本邦資本市場の信頼回復及び発展への貢献を掲げた
組織の改編2013年4月コンプライアンス部を分割してコンプライアンス統括部を新設した
監査の重点課題法人関係情報等の管理態勢2013年度の監査委員会監査が掲げた3つの重点課題の1つ
対象銘柄・課徴金の額記載なし有価証券報告書に事案の対象銘柄も課徴金の額も記されていない
法人に対する行政処分記載なし大和証券および持株会社への処分は有価証券報告書に記載がない
出所:大和証券グループ本社 有価証券報告書 第76期(2013年3月期)【対処すべき課題】【コーポレート・ガバナンスの状況等】・第77期(2014年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】
出所:大和証券グループ本社 有価証券報告書 第76期(2013年3月期)【対処すべき課題】【コーポレート・ガバナンスの状況等】・第77期(2014年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】
参考文献

参考文献

参考
  • 大和証券グループ本社 有価証券報告書「第76期(2013年3月期)【対処すべき課題】」
  • 大和証券グループ本社 有価証券報告書「第76期(2013年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • 大和証券グループ本社 有価証券報告書「第77期(2014年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • 大和証券グループ本社 有価証券報告書「第76期(2013年3月期)【業績等の概要】【企業集団の状況】」
  • 大和証券グループ本社 有価証券報告書「第81期(2018年3月期)【経営成績等の状況の概要】」

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