関電工東京電力発注工事で営業停止:独占禁止法違反の命令確定を受け、主戦場である民間工事の営業を止めた対応
更新:
- 概要
-
2013年12月20日、東京電力発注工事に関し独占禁止法に違反する行為があったとして、関電工と子会社の㈱TLCが公正取引委員会から排除措置命令と課徴金納付命令を受けた。命令が確定したことを理由に、2014年4月10日には国土交通省が建設業法第28条第3項に基づく営業停止処分を命じている。
停止されたのは全国における電気工事業に関する営業のうち民間工事に係るもので、期間は関電工が2014年4月25日から6月23日までの60日間、㈱TLCが同じ4月25日から5月24日までの30日間であった。
- 背景
-
独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会の立入検査を受けたことは、2013年3月期の時点で対処すべき課題に記されている。検査への全面的な協力と、グループ全体の法令遵守の徹底・内部統制の強化を掲げた。
東京電力向けの売上高はその2013年3月期で1,914億円、連結売上高の42.8%を占めていた。震災後の東京電力は経営合理化の一環として設備投資を大幅に削減しており、新・総合特別事業計画に基づく一層の工事量削減と競争入札の本格化が見込まれる最中の処分であった。
- 内容
-
再発防止として「独占禁止法遵守ガイドライン」を全面的に見直し、その周知・浸透に取り組むとともに、グループの全役員・社員を対象とする教育研修を定期的に実施する体制を構築した。営業停止は2014年3月期の重要な後発事象として、連結と個別の双方に工事の受注に影響がある旨とともに記されている。
課徴金の額、発注者による指名停止の有無、処分に伴う損失の計上額は、いずれも有価証券報告書に記載がない。2014年3月期の特別損失は合計5億7千万円で、内訳は固定資産除却損・減損損失・その他である。
- 含意
-
営業停止を挟んだ2015年3月期は、東京電力関連工事の減少と2か月間の停止が重なり、設備工事業の新規受注高が4,460億円(前期比283億円減)、完成工事高が4,268億円(同50億円減)へ減少した。同じ年度に県別支店体制を廃止して地域本部制を導入し、配電事業所の本社直轄化・統廃合を実施している。
利益は逆に伸び、設備工事業の営業利益は85億円と9億円増えた。東京電力向け売上高の割合は2013年3月期の42.8%から2019年3月期には30.7%まで下がっている。
四割の発注者と、民間工事の停止
この処分が重かったのは、止められた範囲が主戦場そのものと重なっていたからだとみられる。停止を命じられたのは全国における電気工事業に関する営業のうち民間工事に係るもので、売上の4割弱を占める東京電力向けの工事はこの範囲に入る。違反の舞台となった発注者への営業が、そのまま60日間閉ざされる格好になった。官公庁の発注する工事が範囲から外れていることを思えば、処分の設計は建設業の営業の実態に即して、痛みの所在を正確に突いている。
もっとも、数字に現れた傷は浅い。2015年3月期の完成工事高は50億円減にとどまり、設備工事業の営業利益はかえって9億円増えた。営業停止と同じ年度に県別支店体制を廃止して地域本部制へ移り、配電事業所を本社直轄にして固定費を削っている。停止の60日が突きつけたのは受注の量ではなく、一社の発注に収益を預けたままでよいのかという問いだったのかもしれない。東京電力向けの割合はその後、42.8%から30.7%まで下がった。
Yutaka Sugiura, 2026年9月
経緯と対応
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 立入検査 | 2013年3月期 | 東京電力関連工事の受注をめぐる独占禁止法違反の疑いによる。日付の記載はない |
| 排除措置命令・課徴金納付命令 | 2013年12月20日 | 公正取引委員会。東京電力発注工事に関する独占禁止法違反による |
| 命令を受けた会社 | 関電工と子会社の㈱TLC | ㈱TLCは東京都荒川区の設備工事会社で、議決権の55.3%を所有する |
| 課徴金の額 | 記載なし | 有価証券報告書に金額がない。2014年3月期の特別損失にも該当する科目はない |
| 営業停止処分 | 2014年4月10日 | 国土交通省。建設業法第28条第3項に基づく。命令が確定したことが理由 |
| 停止を命じられた営業の範囲 | 全国の電気工事業のうち民間工事 | 関電工と㈱TLCの双方が同じ範囲で停止を命じられた |
| 営業停止の期間(関電工) | 2014年4月25日から6月23日までの60日間 | |
| 営業停止の期間(㈱TLC) | 2014年4月25日から5月24日までの30日間 | |
| 指名停止 | 記載なし | 発注者による指名停止の有無と期間は有価証券報告書に記載がない |
| 受注への影響 | 工事の受注に影響がある | 2014年3月期の重要な後発事象として、連結と個別の双方に記した |
| 再発防止 | 独占禁止法遵守ガイドラインの全面的な見直し | 周知・浸透に取り組み、全役員・社員を対象とする教育研修を定期的に実施 |
| 業績への反映 | 2か月間の営業停止 | 2015年3月期は東京電力関連工事の減少とあわせ、受注と完成工事がともに減少 |
出所:関電工 有価証券報告書 第99期(2013年3月期)【対処すべき課題】・第100期(2014年3月期)【対処すべき課題】【重要な後発事象】・第101期(2015年3月期)【業績等の概要】
関電工:設備工事業の受注と損益
| (百万円) | 新規受注高 | 完成工事高 | 営業利益 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2009年3月期 | 477,274 | 467,666 | 8,133 | |
| 2010年3月期 | 456,284 | 449,876 | 8,960 | |
| 2011年3月期 | 442,208 | 458,677 | 9,903 | |
| 2012年3月期 | 417,500 | 436,685 | 7,236 | 東日本大震災後の期。東京電力の設備投資の削減が受注に及んだ |
| 2013年3月期 | 447,875 | 444,446 | 6,884 | 独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会の立入検査を受けたことを記した期 |
| 2014年3月期 | 474,429 | 431,883 | 7,532 | 2013年12月20日に排除措置命令・課徴金納付命令。営業停止は後発事象 |
| 2015年3月期 | 446,090 | 426,816 | 8,514 | 2か月間の営業停止を挟んだ期。受注・完成工事とも減り、利益は増えた |
| 2016年3月期 | 474,683 | 437,231 | 15,149 | |
| 2017年3月期 | 536,542 | 461,451 | 24,982 | |
| 2018年3月期 | 563,149 | 496,633 | 27,491 | |
| 2019年3月期 | 554,135 | 551,976 | 27,861 |
出所:関電工 有価証券報告書 第95〜105期(業績等の概要・セグメントの業績)
関電工:東京電力向け売上高
| (百万円) | 東京電力向け売上高 | 連結売上高 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2009年3月期 | 189,298 | 473,804 | |
| 2010年3月期 | 188,381 | 453,623 | |
| 2011年3月期 | 205,083 | 462,482 | |
| 2012年3月期 | 176,012 | 441,786 | |
| 2013年3月期 | 191,459 | 447,741 | 割合は42.8%。この期に立入検査を受けた |
| 2014年3月期 | 165,452 | 437,930 | 割合は37.8%へ低下 |
| 2015年3月期 | 155,986 | 436,682 | 割合は35.7%。営業停止を挟んだ期 |
| 2016年3月期 | 165,459 | 447,673 | |
| 2017年3月期 | 172,871 | 470,943 | この期から相手先の表記が東京電力㈱から東京電力グループへ変わった |
| 2018年3月期 | 171,029 | 507,205 | |
| 2019年3月期 | 172,851 | 563,550 | 割合は30.7% |
出所:関電工 有価証券報告書 第95〜105期(業績等の概要・相手先別の売上高)
同じ問いに直面した会社
- 関電工 有価証券報告書「第99期(2013年3月期)【対処すべき課題】」
- 関電工 有価証券報告書「第100期(2014年3月期)【対処すべき課題】」
- 関電工 有価証券報告書「第100期(2014年3月期)【重要な後発事象】」
- 関電工 有価証券報告書「第101期(2015年3月期)【業績等の概要】」