社名の変更それ自体は、誰の取引条件も動かさない。1984年9月に"関東電気工事"の四文字が消えた日、工事現場も発注書も前日と同じであった。それでも改称を経営判断として読む価値があるとすれば、この会社が自分の事業をどう説明するかを一度決め直した点にある。電気工事という業務名は、発注元である配電会社の仕事の呼び名でもあった。その呼び名を社名から外すことは、発注元の外側に顧客を探すという宣言と重なる。
宣言から現実までは長かった。14年後の1998年、関電工はなお電力会社への依存度が同業のなかで最も高い会社として誌面に載り、リニューアル工事の専門部署をつくり、保守部門を県別の子会社へ移す作業に取りかかっていた。2025年3月期の完成工事高で屋内線・環境設備が3,506億円、配電線が1,267億円という比になるまでには、さらに四半世紀を要している。会社の名前は先に変えられるが、受注の内訳は年に一度しか動かない。