この判断の中心にあるのは、経営権の帰趨と供給網の安定という、資本の論理だけでは割り切れない選択であった。外資ファンドの資本を受ければ再建の速度は上がったかもしれない一方で、車載半導体を握る企業の経営権が海外へ移ることへの警戒が、政府と顧客を同じ側に立たせた。
結果としてルネサスは黒字体質を取り戻し、出資した産業革新機構も巨額のリターンを得て、官民救済は数字のうえで成功と評価される形になった。ただ、成功の背景には市況の急回復と円安という外部環境の追い風もあり、救済の枠組みそのものがどこまで再建を導いたのかは、なお検証の余地を残している。公的資金と顧客連合で自国の半導体を守るという選択が、他の産業や場面でも同じ果実を生むとは限らない点に、この事例の教訓があると推察される。