PDハウスの不正請求発覚(2025年・サンウェルズの決断)

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論点多頻度訪問に依存する収益をどう改めるか
サンウェルズ:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
調査報告書の受領と訪問看護体制の全面見直し

何をなぜ決めたか:調査報告書の受領と訪問看護体制の全面見直し

概要

2024年9月、サンウェルズが不正な診療報酬請求を行ったとする報道が出た。会社は同月20日に社外の専門家だけで構成する特別調査委員会を設置し、2025年2月7日にその調査報告書を受領している。認定されたのは二つの事案で、数十秒から数分の訪問を30分を標準とする訪問看護として請求していたもの(短時間訪問事案)と、同行者が不在であったにもかかわらず同行者がいたものとして請求していたもの(同行者不在訪問事案)である。

2025年2月12日、取締役会は再発防止策の策定と内部統制強化、関係者の処分を決議し、あわせて2022年3月期から2024年3月期の有価証券報告書と四半期報告書の訂正報告書を提出した。

背景

「PDハウス」はパーキンソン病専門の有料老人ホームで、同一敷地内に訪問看護事業所を併設し、居室への訪問看護で得る診療報酬を収益源としてきた。入居者は重症度の高いパーキンソン病患者であることから、本人と家族の同意を得たうえで1日3回・複数名訪問を標準としていた。

ところがこの標準が、現場の看護師らの多くに1日3回・複数名訪問が必須であるとの認識を与え、訪問回数と同行者の要否という観点での個別的検討・見直しが徹底されなくなった。施設数は2026年3月期末で56施設まで増加しており、拡大の速さに運用の点検が追いついていない。

内容

再発防止策として、電子的記録制度と共用部カメラを使った確認体制、複数名による訪問看護計画の確認、訪問看護記録の確認と現場ヒアリング、就寝時間帯の訪問看護運用の見直しと全施設24時間のナースコール対応を整えた。2025年4月1日には就業規則を改訂し、不正行為に対する懲戒処分を厳格化している。

費用の面では、2025年3月期に診療報酬返還に伴う負債1,189百万円を計上し、特別調査費用等638百万円と上場契約違約金62百万円を特別損失に立てた。返還額は所管行政当局の指導等を経て決まる性質のもので、2026年3月期末でも確定していない。

含意

運営体制を見直した結果、収益性は大きく低下した。当期純損益は2025年3月期が925百万円の損失、2026年3月期が1,656百万円の損失で、経常損益も2,168百万円の損失を計上した。2026年6月施行の診療報酬改定では同一建物内の頻回訪問を適正化する「包括型訪問看護療養費」が新設され、出来高から1日単位の包括評価へ移った。多頻度訪問を前提にした収益構造そのものが成り立たなくなっている。

東京証券取引所からは2025年4月30日に宣誓書違反による猶予期間入りの通知を受け、2026年3月27日にスタンダード市場への予備申請を行って監理銘柄に指定された。会社は継続企業の前提に関する重要な疑義を認め、2027年3月期を構造改革実施期間と位置づけている。

いつ何が起きたか8件
当時の取締役8名
考察:数を追う成長が残したもの
考察

考察:数を追う成長が残したもの

この事案は、制度の抜け穴を突いた不正という言葉には収まらない。認定されたのは、数十秒から数分の訪問を30分の訪問看護として請求していた事案と、同行者のいない訪問を同行者ありとして請求していた事案の二つで、いずれも1日3回・複数名訪問という標準の運用から派生している。重症度の高い入居者に手厚く入るという設計自体は説明のつくものであり、それが現場では必須の型として固定され、個別に要否を見直す手続きが働かなくなった。施設が56にまで増加する速さに、点検の仕組みが追いついていなかったと推察される。

もっとも、作り替えの重さは、その後の数字に表れている。訪問を適正化すれば一床あたりの単価は下がり、当期純損益は2025年3月期に925百万円、2026年3月期に1,656百万円の損失となった。さらに2026年6月の診療報酬改定で、同一建物内の頻回訪問は1日単位の包括評価へ移っている。多頻度訪問を前提にした収益構造が制度の側から閉じられた以上、パーキンソン病特化という強みを介護報酬中心の収益でどう成り立たせるかが問われる。会社は継続企業の前提に関する重要な疑義を認めており、答えはまだ出ていない。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る3表

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図と表

サンウェルズ:業績の推移(過年度決算の訂正後)

売上高(百万円)経常利益率(%)
サンウェルズ:業績の推移(過年度決算の訂正後)
(百万円)売上高経常利益当期純利益備考
2021年3月期5,365295213
2022年3月期8,17411719訂正前の当期純利益は256。同年6月に東証グロース市場へ上場した
2023年3月期13,236674312訂正前の当期純利益は784
2024年3月期20,1071,720802訂正前の当期純利益は2,032
2025年3月期26,496388△925特別調査費用等638と上場契約違約金62を特別損失に計上した期
2026年3月期28,136△2,168△1,656代表取締役からの寄付金1,000を特別利益に計上。経常利益率は△7.7%
出所:サンウェルズ 有価証券報告書 第21期・第22期【主要な経営指標等の推移】
出所:サンウェルズ 有価証券報告書 第21期・第22期【主要な経営指標等の推移】

サンウェルズ:従業員数の推移

従業員数(名)
サンウェルズ:従業員数の推移
(名)従業員数備考
2020年3月期516
2021年3月期707
2022年3月期1,081
2023年3月期1,747
2024年3月期2,435
2025年3月期3,302
2026年3月期3,570「PDハウス」は56施設。運営体制の見直し後も人員は増加している
出所:サンウェルズ 有価証券報告書 第17〜22期【従業員の状況】
出所:サンウェルズ 有価証券報告書 第17〜22期【従業員の状況】

経緯と対応

経緯と対応
科目概要備考
発覚の端緒2024年9月不正な診療報酬請求を行ったとする報道。同月20日に特別調査委員会の設置を公表
調査体制特別調査委員会会社から独立した社外の専門家を委員とし、客観性のある業務実態の調査を行った
調査報告書の受領2025年2月7日短時間訪問事案と同行者不在訪問事案が存在していたことが判明した
認定された事案(1)短時間訪問事案数十秒から数分の訪問を、30分を標準とする訪問看護として請求していた
認定された事案(2)同行者不在訪問事案同行者が不在であったにもかかわらず、同行者がいたものとして請求していた
背景にあった運用1日3回・複数名訪問を標準訪問回数と同行者の要否という観点での個別的検討・見直しが徹底されていなかった
再発防止策と処分の決議2025年2月12日取締役会で再発防止策の策定と内部統制強化、および関係者の処分を決議した
過年度決算の訂正2022年3月期〜2024年3月期有価証券報告書と四半期報告書の訂正報告書を2025年2月12日に提出した
内部統制報告書の訂正第18期・第19期各期末時点で内部統制に開示すべき重要な不備が存在していたことを理由とする
診療報酬返還に伴う負債1,189百万円2025年3月期に計上。返還額は所管行政当局の指導等を経て決まり、未確定
特別損失704百万円2025年3月期。特別調査費用等638百万円と上場契約違約金62百万円
東京証券取引所の措置2025年4月30日宣誓書違反による再審査に係る猶予期間入りの通知を受けた
市場区分の変更申請2026年3月27日スタンダード市場への予備申請。監理銘柄(審査中)に指定されている
再発防止策の最終報告2026年5月26日主要な制度整備及び運用導入が一巡し、継続的な運用と改善の段階へ移った
出所:サンウェルズ 有価証券報告書 第21期(2025年3月期)・第22期(2026年3月期)【事業等のリスク】【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
出所:サンウェルズ 有価証券報告書 第21期(2025年3月期)・第22期(2026年3月期)【事業等のリスク】【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当時の取締役8名
参考文献

参考文献

参考
  • 社長「認識甘かった」不正請求でサンウェルズ 決算説明会で陳謝(北國新聞, 2025年5月)
  • サンウェルズ 適時開示「特別調査委員会設置に関するお知らせ」
  • サンウェルズ 適時開示「特別調査委員会の調査報告書の受領に関するお知らせ」
  • サンウェルズ 適時開示「再発防止策の策定及び関係者の処分に関するお知らせ」
  • サンウェルズ 適時開示「過年度の有価証券報告書等の訂正報告書の提出及び過年度の決算短信等の訂正に関するお知らせ」
  • サンウェルズ 適時開示「代表取締役からの寄付金受入及び特別利益の計上に関するお知らせ」
  • サンウェルズ 適時開示「再発防止策の進捗状況に関するお知らせ(最終報告)」
  • サンウェルズ 有価証券報告書「第21期(2025年3月期)【事業等のリスク】【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」
  • サンウェルズ 有価証券報告書「第22期(2026年3月期)【事業等のリスク】【継続企業の前提に関する重要事象等】」

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