経費管理レベルと4年累計20%目標(2007年・ディスコの決断)

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論点市況の谷でも利益をどう確保するか
ディスコ:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
市況の谷でも利益を確保する収益構造への転換と、経費支出の段階管理の導入

何をなぜ決めたか:市況の谷でも利益を確保する収益構造への転換と、経費支出の段階管理の導入

概要

ディスコは2007年6月、2010年までに4年累計で20%以上の売上高経常利益率を維持できる態勢を作り上げることを経営上の中期目標に掲げた。累計の単位に置いた4年は、シリコンサイクルの一つの目処である。

同時に配当政策をこの目標と連動させ、連結で4年累計20%以上を達成した場合には通常20%の配当性向を24%とすることを決めた。物差しは社内の管理にとどまらず、株主への還元の条件になった。

背景

半導体メーカの設備投資は需給で振れ、連結経常損益は2002年3月期に23億円の赤字に転落していた。そこから売上高は2005年3月期の603億円、2007年3月期の861億円へ伸び、売上高経常利益率は22.9%に達している。好況の只中で置いた目標が単年の利益率ではなく4年の累計だったのは、一年の数字で測るかぎり谷と山が別々の会社の姿に見えてしまうためである。

内容

2008年3月期の連結4年累計売上高経常利益率は20.4%となり、24%の配当性向が適用されて期末配当は44円、中間配当と合わせた年間配当は79円となった。ところが同じ年の秋から世界経済が急激に悪化する。

2008年10月に経費管理Fレベルを新たに設定して経費支出を徹底的に見直し、12月には不況対策本部を設置して、聖域を設けることなく経営体質の強化を行うことを決めた。桑畑工場(広島県)と茅野工場(長野県)の新棟建設計画の見直し、役員報酬・賞与と管理職の給与の減額、人的資源の再配置、技術開発テーマの見直しを進め、一時帰休と雇用調整も実施した。

含意

2009年3月期の連結売上高は前期比42.0%減の531億円、営業利益は76百万円まで減少したが、黒字は残った。同じ期に金融機関からの借入等で総額270億円を調達し、手元資金を厚くしている。連結従業員数は2008年3月期の2,260人から2,438人、2,465人と増加し続けており、削減したのは経費と報酬であって人員ではない。

いつ何が起きたか9件
考察:測る期間を変えた目標
考察

考察:測る期間を変えた目標

20%という水準よりも、4年という累計の期間のほうがこの目標の芯である。単年で測れば、2007年3月期の22.9%も2009年3月期の2.8%も同じ会社の数字として並び、好況の年に積んだ利益率は次の谷で帳消しになる。4年を単位に置けば、谷の低さは前後の山と一緒に均され、問われるのはサイクル一巡での稼ぎ方に変わる。配当性向を引き上げる条件に同じ4年累計を使ったことで、この物差しは社内の管理から株主との約束へ移った。

もっとも、2009年3月期に残った営業利益は76百万円で、売上高の0.1%にすぎない。谷でも利益を確保するという目標は、達成というより辛うじて成立した程度である。それを支えたのも経費管理レベルの新設と報酬・給与の減額という、その年に削減できるものを削減する対応であった。測る期間を4年に伸ばすことと、一年の谷を黒字で越えることは別の問題で、後者は結局その年の削減の仕方で決まる。目標そのものが2009年3月期に個別の売上高経常利益率へ改められたのも、連結で4年を通す難しさが出たものだとみられる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る3表

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図と表

ディスコ:売上高と経常利益の推移

売上高(億円)経常利益率(%)
ディスコ:売上高と経常利益の推移
(億円)売上高経常利益備考
2002年3月期303△23ITバブル崩壊で連結経常損益が赤字
2003年3月期37115
2004年3月期48254
2005年3月期6031002008年3月期までの4年累計20.4%は、この期からの4期で測った値
2006年3月期688144
2007年3月期8611974年累計20%以上を中期目標に設定。売上高経常利益率は22.9%
2008年3月期916186連結4年累計20.4%の達成により配当性向24%を適用
2009年3月期53115売上高は42.0%減。営業利益は76百万円で黒字を確保
2010年3月期61746
2011年3月期997172
2012年3月期892112
出所:ディスコ 有価証券報告書 第63〜74期(連結損益計算書)
出所:ディスコ 有価証券報告書 第63〜74期(連結損益計算書)

ディスコ:売上原価と販売費及び一般管理費の推移

売上原価(百万円)販売費及び一般管理費(百万円)販売費及び一般管理費率(%)
ディスコ:売上原価と販売費及び一般管理費の推移
(百万円)売上高売上原価販売費及び一般管理費備考
2002年3月期30,300−−連結損益計算書の内訳を照合できていない
2003年3月期37,100−−
2004年3月期48,200−−
2005年3月期60,300−−
2006年3月期68,88532,73422,201
2007年3月期86,16042,10624,529
2008年3月期91,61844,75727,526
2009年3月期53,10828,03424,997売上高は4割減。販売費及び一般管理費は前期比2,529百万円の減にとどまる
2010年3月期61,73033,03824,023一時帰休と不況対策の実施でさらに974百万円減
2011年3月期99,70052,77531,010
2012年3月期89,24147,63530,945
出所:ディスコ 有価証券報告書 第63〜74期(連結損益計算書)
出所:ディスコ 有価証券報告書 第63〜74期(連結損益計算書)

中期目標と経営体質強化の条件

中期目標と経営体質強化の条件
科目概要備考
中期目標4年累計で20%以上の売上高経常利益率2009年3月期には個別売上高経常利益率を維持する態勢へ書き替えている
達成期限2010年まで累計する4年は、シリコンサイクルの一つの目処として置いた
配当性向との連動4年累計20%以上の達成で20%から24%へ3期連続で連結純利益が赤字になった場合は安定配当20円を見直す
2008年3月期の達成状況連結4年累計20.4%24%の配当性向を適用し期末配当44円。中間配当35円と合わせ年間79円
経費管理レベルの追加2008年10月にFレベルを設定急激に悪化する世界経済情勢に対処するため経費支出を徹底的に見直した
不況対策本部の設置2008年12月聖域を設けることなく経営体質の強化を行うことを決定した
見直した設備投資桑畑工場・茅野工場の新棟建設計画桑畑は広島県、茅野は長野県。技術開発テーマの見直しも併せて実施した
報酬・給与の減額役員報酬・賞与および管理職の給与人的資源の再配置、一時帰休ならびに雇用調整も実施した
手元資金の確保総額270億円2009年3月期に金融機関からの借入等で調達した
出所:ディスコ 有価証券報告書 第68期(2007年3月期)【経営戦略の現状と見通し】・第69期(2008年3月期)【配当政策】・第70期(2009年3月期)【対処すべき課題】
出所:ディスコ 有価証券報告書 第68期(2007年3月期)【経営戦略の現状と見通し】・第69期(2008年3月期)【配当政策】・第70期(2009年3月期)【対処すべき課題】
参考文献

参考文献

参考
  • ディスコ 有価証券報告書「第68期(2007年3月期)【経営戦略の現状と見通し】」
  • ディスコ 有価証券報告書「第69期(2008年3月期)【配当政策】」
  • ディスコ 有価証券報告書「第70期(2009年3月期)【対処すべき課題】」
  • ディスコ 有価証券報告書「第78期(2017年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • ディスコ 決算説明会質疑応答「FY22_4Q 決算 One on One Meeting FAQ」

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