個人Will会計への移行(2011年・ディスコの決断)

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論点管理会計を個人の単位まで分解するか
ディスコ:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
会計単位の部門から個々の構成員への分解と、指示・命令によらない仕事の配分

何をなぜ決めたか:会計単位の部門から個々の構成員への分解と、指示・命令によらない仕事の配分

概要

ディスコは2011年、独自の管理会計であるWill会計の単位を、部門から従業員一人一人まで下ろした。2003年に始めた部門Will会計に続く段階で、名称は個人Will会計という。

会社が書き替えたのは内部統制システムの基本方針である。会計情報を捉える単位は「活動組織単位」から「活動組織単位と、さらに個々の構成員単位」へ改められ、自律的に最良な機能を果たす主体にも「各構成員」が加えられた。

背景

2003年からの部門Will会計では、Willという単位を用いて社内業務による収入や人件費・設備費といった支出など業務に関わるあらゆる事項に金額を設定し、部門の採算管理に使ってきた。同じ2003年には業務改善活動のPIMも始まっている。2009年4月に関家一馬氏が社長へ就任した二年後、売上高はリーマン・ショック直後の617億円から997億円へ戻していた。

内容

すべての仕事は従来型の指示・命令によって配分されるのではなく、上司や他部門・他者から提示されたWillで値付けされた案件を、メンバーが自分の意志で選択して取り組む方式へ変わった。Willは社内の別の場面にも使われる。2012年から始めたPIMコロシアムでは、改善案の発案者が対戦形式で発表し、観客となった従業員はWillを用いて投票する。

含意

2017年3月期からは、中長期の経営戦略を述べる箇所にWill会計とPIMが並べて置かれ、組織能力を高めるマネジメント手法としてグループ全社で推進すると明記されている。この間に連結従業員数は2011年3月期の2,565人から2016年3月期の3,027人へ増加した。

いつ何が起きたか7件
考察:会計の条文を書き替える
考察

考察:会計の条文を書き替える

この制度が何であるかは、会社が書き替えた条文の場所に出ている。直したのは内部統制システムの基本方針のうち、取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制を定めた条であった。人材の育成や処遇を述べた箇所ではない。一人ひとりの収支を見えるようにすることは、取締役が経営方針と経営計画を最良の方法で実践するための仕組みとして位置づけられている。ただし社員の側から見れば、変わったのは仕事の来かたのほうである。割り当てられるものだった仕事が、値の付いた案件のなかから選ぶものになった。

もっとも、この仕組みが業績を作ったとまでは言いにくい。2011年3月期から2016年3月期にかけて売上高は1,278億円まで伸びたが、この間の半導体需要そのものの拡大に負うところが大きく、2013年3月期の経常利益は116億円と個人Will会計を始めた期を下回っている。効き目が見えるのはむしろ人で、リーマン・ショック下でも減らさなかった人員はその後も増加し続けた。個人Will会計が支えたのは利益の額というより、市況が振れても社員が自分の持ち場の収支を見続ける習慣だと思われる。制度の派手さと、効いている場所は必ずしも一致しない。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る3表

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図と表

ディスコ:売上高と経常利益の推移

売上高(億円)経常利益率(%)
ディスコ:売上高と経常利益の推移
(億円)売上高経常利益備考
2006年3月期688144
2007年3月期861197
2008年3月期916186
2009年3月期53115リーマン・ショックで売上高が42.0%減
2010年3月期61746
2011年3月期997172個人Will会計を全社展開。売上高は前期比61.5%増
2012年3月期8921122012年3月期の内部統制基本方針で会計単位に個々の構成員を追加
2013年3月期937116
2014年3月期1,049174
2015年3月期1,259265
2016年3月期1,278307
出所:ディスコ 有価証券報告書 第67〜78期(連結損益計算書)
出所:ディスコ 有価証券報告書 第67〜78期(連結損益計算書)

ディスコ:従業員数と平均年間給与の推移

単体従業員数(人)単体を除く連結従業員(人)平均年間給与(単体)(千円)
ディスコ:従業員数と平均年間給与の推移
(人)連結従業員数単体従業員数平均年間給与備考
2006年3月期1,7211,2597,148
2007年3月期2,0121,3197,670
2008年3月期2,2601,4987,952
2009年3月期2,4381,6416,984一時帰休と役員報酬・管理職給与の減額を実施した期
2010年3月期2,4651,6615,333平均年間給与は前期から1,651千円減。人員は増加している
2011年3月期2,5651,6927,177
2012年3月期2,7451,7397,040
2013年3月期2,9091,8396,946
2014年3月期3,0731,9356,883
2015年3月期2,8911,9928,188
2016年3月期3,0272,0477,715
出所:ディスコ 有価証券報告書 第67〜78期(従業員の状況)
出所:ディスコ 有価証券報告書 第67〜78期(従業員の状況)

個人Will会計の条件

個人Will会計の条件
科目概要備考
会計単位活動組織単位に個々の構成員単位を加える2012年3月期の基本方針で「各組織および各構成員が自律的に」へ改めた
制度の名称個人Will会計2003年に始めた部門Will会計に続く段階にあたる
値付けの単位Will社内業務による収入や人件費、設備費といった支出に金額を設定する
値付けの対象業務に関わるあらゆる事項部門の採算管理から従業員一人一人の採算管理へ対象を広げた
仕事の配分提示された案件を自分の意志で選択上司や他部門・他者が値付けして提示する。指示・命令による配分を改めた
適用範囲グループ全社2017年3月期からは経営戦略にWill会計とPIMを並べて掲げている
Willの他の用途PIMコロシアムでの投票2012年開始。改善案を対戦形式で発表し、観客がWillを用いて投票する
出所:ディスコ 有価証券報告書 第73期(2012年3月期)【内部統制システムに関する基本的な考え方及びその整備状況】・第78期(2017年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】/Corporate Report 2020
出所:ディスコ 有価証券報告書 第73期(2012年3月期)【内部統制システムに関する基本的な考え方及びその整備状況】・第78期(2017年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】/Corporate Report 2020
参考文献

参考文献

参考
  • ディスコ 有価証券報告書「第73期(2012年3月期)【内部統制システムに関する基本的な考え方及びその整備状況】」
  • ディスコ 有価証券報告書「第72期(2011年3月期)【内部統制システムに関する基本的な考え方及びその整備状況】」
  • ディスコ 有価証券報告書「第78期(2017年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • ディスコ 統合報告書「Corporate Report 2020」

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