コーセーホールディングスの発足(2026年・コーセーHDの決断)

更新:
コーセーHD:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
純粋持株会社体制への移行と、創業家以外からの社長選出2024年11月11日、コーセーは取締役会で純粋持株会社体制への移行の検討開始を決議し、2026年1月を目途とする方針を示した。2025年2月26日には完全子会社の株式会社コーセー分割準備会社と吸収分割契約を締結し、2025年3月28日の定時株主総会の承認を経て、2026年1月1日に吸収分割の効力を発生させた。同日付で旧コーセーは株式会社コーセーホールディングスへ、分割準備会社は株式会社コーセーへ商号を変更した。

何をなぜ決めたか:純粋持株会社体制への移行と、創業家以外からの社長選出

概要

2024年11月11日、コーセーは取締役会で純粋持株会社体制への移行の検討開始を決議し、2026年1月を目途とする方針を示した。2025年2月26日には完全子会社の株式会社コーセー分割準備会社と吸収分割契約を締結し、2025年3月28日の定時株主総会の承認を経て、2026年1月1日に吸収分割の効力を発生させた。同日付で旧コーセーは株式会社コーセーホールディングスへ、分割準備会社は株式会社コーセーへ商号を変更した。

2025年10月31日の取締役会では、持株会社の代表取締役を1名増員して2名体制とする人事を決議した。約20年間代表取締役社長を務めた小林一俊氏が代表取締役会長グループCEOとなり、常務取締役の澁澤宏一氏が2026年3月27日付で代表取締役社長グループCOOに就任した。事業会社の新コーセーでは、田中慎二氏が代表取締役社長、小林孝雄氏が代表取締役副社長に就任する体制とした。

背景

2024年12月期のコーセーは、中国の構造改革に伴う事業整理損4,572百万円を特別損失に計上し、親会社株主に帰属する当期純利益は7,510百万円と前期比35.6%減少した。同期のROICは2.6%で前期の3.1%を下回り、中長期ビジョン「Milestone2030」が掲げる10%以上との差は大きかった。

検討開始の開示でコーセーは、国内市場での業容拡大と本格的な海外進出には、従来のビジネスモデルに固執しない多様な商品・サービスの提供が必要だと説明した。目的には、グループ全体の資金配分の戦略性と機動性を高める競争力強化と、意思決定の迅速化によるグループガバナンスの強化の2つを挙げた。分割対象の事業は2025年12月期の単体売上高120,150百万円のうち119,651百万円を占めており、本体はほぼ全事業を自ら営む事業会社であった。

内容

吸収分割では、株式を保有する会社の事業活動に対する支配・管理とグループ運営に関する事業を除く一切の事業を、2025年1月23日に設立した完全子会社の株式会社コーセー分割準備会社へ承継させた。承継会社の発行済株式を全部保有しているため金銭等の交付はなく、資本金の増減もない。承継した資産は2025年12月期の数値で69,932百万円、負債は29,640百万円であり、債務は重畳的債務引受の方法で引き継いだ。

持株会社となった旧コーセーは、移行後も上場を維持した。分割準備会社は2025年1月8日の取締役会決議で資本金100百万円の100%出資子会社として設立が決まり、2024年12月期の数値では承継する資産を73,043百万円、負債を33,936百万円と見込んでいた。商号と事業目的の変更は定款変更として、吸収分割とあわせて定時株主総会に諮った。

いつ何が起きたか12件
筆者考察
考察

考察:持株会社で割り直した会長と社長の役割

コーセーが持株会社体制を選んだのは、本体がほぼ全事業を自ら営んだまま、中国の構造改革と資本効率の低さに向き合っていたためだとみられる。2024年12月期のROICは2.6%にとどまり、「Milestone2030」の10%以上とは開きがあった。事業の執行を新コーセーへ移し、持株会社がグループ全体の資金配分を担う体制に切り替えることで、アルビオンやコーセーコスメポートを含む各社への経営資源の配分を、グループ全体の視点から判断できるようにした。

ただ、持株会社の発足は経営陣の顔ぶれを大きく入れ替えるものではなかった。社長に就任した澁澤宏一氏は経理と中国現地法人を経た管理部門の責任者であり、小林一俊氏は代表取締役会長グループCEOとして経営に残る。取締役副社長には小林章一氏、専務取締役には小林孝雄氏が就任し、事業会社の社長は田中慎二氏が別に務める。統率の権限が会長と社長のあいだでどう分かれるかは、開示の範囲では明らかにされていない。

持株会社体制が成果を上げたといえるかは、新コーセーが事業の執行を担い、持株会社が資金配分の機動性を数字で示せるかにかかる。判断の目安は、2024年12月期に2.6%だったROICが「Milestone2030」の10%以上へどこまで近づくかである。中国の構造改革を終えた後の利益水準と資本効率が、今回の体制変更の意味を決めることになる。会長と社長の2名の代表取締役が、持株会社と事業会社のどちらで何を決めるのかを示せるかどうかも、その評価を左右するだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年8月

数字で見る

コーセーHD:業績と収益性の推移

コーセーHD:業績と収益性の推移

売上高(百万円)営業利益率(%)
コーセーHD:業績と収益性の推移
(百万円)売上高営業利益親会社株主に帰属する当期純利益備考
2020年3月期327,72440,23126,682
2021年3月期279,38913,29411,986新型コロナの影響で減収。翌期から決算期を12月へ変更した
2021年12月期224,98318,85213,341決算期変更に伴う9か月の変則決算(2021年4月1日〜12月31日)
2022年12月期289,13622,12018,771
2023年12月期300,40615,98511,663
2024年12月期322,75817,3647,510中国事業の構造改革で事業整理損4,572を特別損失に計上。ROICは2.6%
2025年12月期330,19318,46715,114ROICは3.7%へ改善。期末後の2026年1月1日に持株会社体制へ移行した
出所:コーセーホールディングス 有価証券報告書 第84期(2025年12月期)【主要な経営指標等の推移】【連結損益計算書】 / コーセー 有価証券報告書 第82期(2023年12月期)【主要な経営指標等の推移】 / コーセー 有価証券報告書 第78期(2020年3月期)・第80期(2021年12月期)・第81期(2022年12月期)【連結損益計算書】
出所:コーセーホールディングス 有価証券報告書 第84期(2025年12月期)【主要な経営指標等の推移】【連結損益計算書】 / コーセー 有価証券報告書 第82期(2023年12月期)【主要な経営指標等の推移】 / コーセー 有価証券報告書 第78期(2020年3月期)・第80期(2021年12月期)・第81期(2022年12月期)【連結損益計算書】
コーセーHD:報告セグメント別の営業利益の推移

コーセーHD:報告セグメント別の営業利益の推移

コーセーHD:報告セグメント別の営業利益の推移
(百万円)化粧品事業コスメタリー事業備考
2020年3月期44,663211
2021年3月期18,669△63
2021年12月期22,724△752決算期変更に伴う9か月の変則決算
2022年12月期25,4071,101
2023年12月期17,8682,941
2024年12月期15,0526,980化粧品事業の減益は中国本土と中国向けトラベルリテールの不振による
2025年12月期16,7686,252コーセー事業の収益性改善で化粧品事業は増益。タルト・アルビオンは減益
出所:コーセーホールディングス 有価証券報告書 第84期(2025年12月期)【セグメント情報等】 / コーセー 有価証券報告書 第78〜83期【セグメント情報等】。セグメント利益は営業利益ベースで、調整額の分だけ全社の営業利益と差がある
出所:コーセーホールディングス 有価証券報告書 第84期(2025年12月期)【セグメント情報等】 / コーセー 有価証券報告書 第78〜83期【セグメント情報等】。セグメント利益は営業利益ベースで、調整額の分だけ全社の営業利益と差がある
持株会社移行と社長交代の条件

持株会社移行と社長交代の条件

持株会社移行と社長交代の条件
科目概要備考
移行の方式吸収分割当社を分割会社、完全子会社の株式会社コーセー分割準備会社を承継会社とする
承継会社の設立2025年1月23日全額出資で株式会社コーセー分割準備会社を設立
吸収分割契約承認取締役会2025年2月26日同日に吸収分割契約を締結。検討開始の決議は2024年11月11日の取締役会
吸収分割契約承認株主総会2025年3月28日第83期の定時株主総会。商号と事業目的の定款変更もあわせて承認
効力発生日2026年1月1日同日付で商号を株式会社コーセーホールディングス、承継会社を株式会社コーセーへ
割当ての内容金銭等の交付なし承継会社の発行済株式を全部保有しているため、権利義務に代わる対価はない
承継する事業化粧品等の製造並びに販売等保有株式に係る支配・管理とグループ運営に関する事業を除く一切の事業
分割対象事業の売上高119,651百万円2025年12月期・日本基準。当社単体の実績は120,150百万円
承継する資産69,932百万円2025年12月期・日本基準。流動資産63,935、固定資産5,996
承継する負債29,640百万円2025年12月期・日本基準。全額が流動負債で、固定負債はない
分割による資本金の増減なし2026年1月1日現在の資本金は分割会社4,848百万円、承継会社100百万円
会計処理共通支配下の取引企業結合会計基準と事業分離等会計基準適用指針に基づく。連結業績への影響は軽微
代表取締役の異動決議2025年10月31日第84回定時株主総会(2026年3月27日)とその直後の取締役会で正式決定
新社長澁澤宏一(代表取締役社長グループCOO)1984年入社。前職はコーセー常務取締役社長室長で、代表取締役を1名増員した
前社長小林一俊(代表取締役会長グループCEO)2007年6月から約20年間社長。事業会社の取締役会長を兼ねる
指名委員会の関与指名・報酬委員会が審議社外取締役の菊間千乃氏が議長。社外6名を含む8名で構成し、当期は2回開催
出所:コーセーホールディングス 有価証券報告書 第84期(2025年12月期)【重要な後発事象】、適時開示「持株会社体制移行に伴う代表取締役および役員の異動に関するお知らせ」(2025年10月31日)
出所:コーセーホールディングス 有価証券報告書 第84期(2025年12月期)【重要な後発事象】、適時開示「持株会社体制移行に伴う代表取締役および役員の異動に関するお知らせ」(2025年10月31日)
当時の取締役12名

取締役12名(2026年3月株主総会議決)

区分役員名役職
取締役業務執行担当領域
業務執行兼務小林一俊取締役:代表取締役業務執行:社長担当:
小林孝雄取締役:取締役業務執行:専務担当:
澁澤宏一取締役:取締役業務執行:常務担当:
小椋敦子取締役:取締役業務執行:担当:
田中慎二取締役:取締役業務執行:担当:
菊間千乃法曹取締役:取締役業務執行:担当:
小林正典取締役:取締役業務執行:常務担当:
小林勇介取締役:取締役業務執行:担当:
原谷美典取締役:取締役業務執行:担当:
独立役員湯浅紀佳法曹取締役:取締役業務執行:担当:
須藤実和会計取締役:取締役業務執行:担当:
小林久美会計取締役:取締役業務執行:担当:
この一覧は2026年3月の定時株主総会の直後に提出された有価証券報告書の【役員の状況】による。
参考文献

参考文献

参考

次に読む決断

同業他社の状況(化粧品)

免責事項およびポリシー