ポーラ・オルビスホールディングス 横手喜一氏が社長就任 創業家3代目からの経営の引き継ぎと、同族による継承の区切り
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何をなぜ決めたか
- 概要
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2023年1月1日付で横手喜一氏が代表取締役社長に就任し、2006年9月の持株会社設立から社長を務めてきた鈴木郷史氏は代表取締役会長へ移った。
鈴木郷史氏は会長として取締役会の議長を続け、家業として始まった化粧品グループの執行は、一族の外で海外事業を歩んだ社長へ渡された。両氏の取締役としての任期は2022年3月25日の定時株主総会の終結の時から2023年12月期に係る定時株主総会の終結の時までで、社長の交代そのものは取締役会による代表取締役の選定として行われた。
- 背景
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鈴木郷史氏の社長在任は16年余りに及び、その間に多ブランド化と海外展開が進んだ。創業100年にあたる2029年を目標年とする長期経営計画・VISION 2029が置かれ、2021年から2023年までの中期経営計画はその1stステージとして「国内ダイレクトセリングの進化」「海外事業の利益ある成長」を掲げていた。売上高は2018年12月期の2,485億74百万円を頂点に落ち、交代を決めた2022年12月期は1,663億7百万円、営業利益は125億81百万円まで下がっていた。
- 内容
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横手喜一氏は1990年にポーラ化粧品本舗へ入社し、2011年7月から宝麗(中国)美容有限公司(ポーラ瀋陽)の董事長兼総経理を務めた。2016年1月にポーラの代表取締役社長、同年3月に持株会社の取締役となり、2020年1月から海外事業管理室長、2021年1月からPOLA ORBIS Travel Retail LimitedのCEOを兼ねていた。
交代の前段には、取締役及び経営陣幹部の指名を諮る任意の指名諮問委員会がある。委員は社外取締役3名と代表取締役会長の4名で、委員長は社外取締役の小宮一慶氏。2022年度は6回、2023年度は5回開かれ、取締役の指名と執行役員の任用を審議して取締役会へ答申している。
- 含意
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家業として始まったポーラは、製販分離・2代目鈴木常司氏・持株会社化を経て、創業家の外から社長を迎えるに至った。ただし指名諮問委員会の4名のうち1名は代表取締役会長であり、会長は取締役会の議長でもある。後継者計画そのものの記載は有価証券報告書になく、社長の選定がどこまで社外の目に委ねられたかは開示からは読み取れない。所有と監督に創業家が残り執行を専門経営者が担うこの二層が、どこまで実質的な分担となるのかが問われる継承であった。
いつ何が起きたか 7件
筆者の見解
家業を開いた承継が残したもの
この交代の核心は、業績の巧拙を超えて、家業として始まった会社の執行を創業家の外へ開いた点にあったと思われる。個人で興り、製造と販売を分け、2代目・3代目と一族の内で受け継がれてきたポーラは、持株会社への移行を経て複数のブランドを統括する集合体へ姿を変えていた。その集合体を率いる役割を、中国の現地法人を率い海外事業管理室長を務めた人物へ委ねたことは、家業の延長では担いきれない規模と多様さに経営の形を合わせにいく判断であったのだろう。
もっとも、鈴木郷史氏は代表取締役会長として取締役会の議長に残り、社長を選ぶ側である指名諮問委員会の委員でもある。委員4名のうち3名が社外取締役という構成は、形のうえでは社外が過半を占めるが、後継者計画の記載が有価証券報告書にない以上、選定の筋道は外からは辿れない。交代後、国内売上は3期連続で増えて1,481億67百万円まで戻った一方、海外畑の社長を迎えて臨んだアジアは2021年12月期の286億7百万円から189億22百万円へ縮んでいる。掲げたグローバル展開をどう形にするかは、創業100年の2029年へ向けてなお開かれたままである。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
社長交代の経緯と対応
社長交代の経緯と対応
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 異動の効力発生日 | 2023年1月1日 | 代表取締役は会長と社長の2名。取締役会の議長は主に代表取締役会長が務める |
| 鈴木郷史氏の新旧の役職 | 代表取締役社長 → 代表取締役会長 | 2006年9月の持株会社設立時から社長。ポーラの会長は2016年1月から継続している |
| 横手喜一氏の新旧の役職 | 取締役 → 代表取締役社長 | 2020年1月から当社取締役 海外事業管理室長を務めていた |
| 交代直前の兼務 | POLA ORBIS Travel Retail Limited CEO | 2021年1月から、持株会社の取締役と海外事業管理室長に加えて兼務していた |
| 横手喜一氏の経歴 | 1990年4月にポーラ化粧品本舗へ入社 | 2011年7月に宝麗(中国)美容有限公司の董事長兼総経理、2016年1月にポーラ代表取締役社長 |
| 選定の手続 | 取締役会による代表取締役の選定 | 横手喜一氏は2022年3月25日開催の定時株主総会で取締役に選任されていた |
| 指名委員会の関与 | 任意の指名諮問委員会が取締役会へ答申 | 取締役会の諮問機関。取締役及び経営陣幹部の指名に関する重要事項を審議する |
| 指名諮問委員会の構成 | 社外取締役3名と代表取締役会長の4名 | 委員の過半数を社外取締役とし、委員長は取締役会が指名した社外取締役の小宮一慶氏 |
| 指名諮問委員会の開催 | 2022年度は6回、2023年度は5回 | 2023年度は委員長ほか社外取締役3名が4回出席、代表取締役会長は5回すべてに出席 |
| 指名諮問委員会の検討事項 | 取締役の指名と執行役員の任用 | 子会社及び孫会社の取締役の指名・執行役員の任用に関する事項も審議する |
| 取締役の任期 | 2023年12月期に係る定時株主総会終結の時まで | 2022年3月25日開催の定時株主総会終結の時からの2年 |
| 後継者計画 | 有価証券報告書に記載なし | 指名諮問委員会の検討内容として取締役の指名に関する事項が示されるのみ |
出所:ポーラ・オルビスホールディングス 有価証券報告書 第17期(2022年12月期)・第18期(2023年12月期)【役員の状況】【コーポレート・ガバナンスの状況等】
連結の売上高と利益
ポーラ・オルビスホールディングス:連結の売上高と利益
| (百万円) | 売上高 | 営業利益 | 親会社株主に帰属する当期純利益 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2017年12月期 | 244,335 | 38,881 | 27,137 | |
| 2018年12月期 | 248,574 | 39,496 | 8,388 | 売上高はこの期が最高。減損損失などで最終利益は83億88百万円へ減少した |
| 2019年12月期 | 219,920 | 31,137 | 19,694 | |
| 2020年12月期 | 176,311 | 13,752 | 4,632 | 新型コロナの影響で売上高は前期比19.8%減 |
| 2021年12月期 | 178,642 | 16,888 | 11,734 | |
| 2022年12月期 | 166,307 | 12,581 | 11,446 | 交代を決めた期。営業利益は5期前の3分の1に当たる125億81百万円 |
| 2023年12月期 | 173,304 | 16,080 | 9,665 | 横手喜一社長の初年度。中期経営計画(2021年〜2023年)の最終年 |
| 2024年12月期 | 170,359 | 13,810 | 9,286 | VISION 2029の2ndステージ「再挑戦と成長基盤確立」の初年度 |
| 2025年12月期 | 170,285 | 15,693 | 9,472 |
出所:ポーラ・オルビスホールディングス 有価証券報告書 第12〜20期(連結損益計算書)
地域ごとの売上高
ポーラ・オルビスホールディングス:地域ごとの売上高
| (百万円) | 日本 | アジア | その他海外 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2017年12月期 | 223,717 | − | 20,618 | この期はアジアを区分せず、海外を一括で206億18百万円と開示している |
| 2018年12月期 | 225,454 | − | 23,120 | この期もアジアの区分はなく、海外は一括で231億20百万円 |
| 2019年12月期 | 195,238 | 18,640 | 6,041 | この期からアジアを独立した区分として開示 |
| 2020年12月期 | 149,861 | 23,189 | 3,259 | 国内が前期比23.2%減となる一方、アジアは増加した |
| 2021年12月期 | 146,254 | 28,607 | 3,780 | アジアは286億7百万円で最高。売上高に占める比率は16.0% |
| 2022年12月期 | 137,382 | 24,635 | 4,289 | 交代を決めた期。国内は1,373億82百万円まで下がり、アジアも減少に転じた |
| 2023年12月期 | 144,871 | 24,638 | 3,793 | 国内は回復したが、アジアは前期並みで止まった |
| 2024年12月期 | 145,885 | 21,431 | 3,043 | |
| 2025年12月期 | 148,167 | 18,922 | 3,195 | 国内は3期連続で増加、アジアは2021年12月期の3分の2まで縮んだ |
出所:ポーラ・オルビスホールディングス 有価証券報告書 第12〜20期(セグメント情報の関連情報・地域ごとの情報)
同じ問いに直面した会社
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参考文献
- ポーラ・オルビスホールディングス 有価証券報告書【沿革】
- ポーラ・オルビスホールディングス 有価証券報告書「第17期(2022年12月期)【役員の状況】【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
- ポーラ・オルビスホールディングス 有価証券報告書「第18期(2023年12月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
- ポーラ・オルビスホールディングス 有価証券報告書「第17期(2022年12月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
- ポーラ・オルビスホールディングス 有価証券報告書「第12〜20期【セグメント情報】の関連情報(地域ごとの情報)」