中村公一氏の社長退任と中村公大氏への継承(2016年・山九の決断)

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論点 創業家による経営体制の承継
売上高(億円)営業利益率(%)
創業家6代にわたる同族承継——中村公一氏からCEO交代

創業家6代にわたる同族承継——中村公一氏からCEO交代

概要

山九は2016年1月28日、中村公一社長(当時、5代目)が代表取締役会長CEOに退き、長男である中村公大専務が代表取締役社長COOに昇任する人事を発表し、同年4月に実施した。さらに2025年2月27日、中村公一氏が代表権のない取締役会長・取締役会議長に退き、中村公大氏が社長CEOに昇格する人事を発表、同年4月に実施した。創業家による6代・約100年にわたる同族承継の最終段階である。

背景

山九は1918年に中村精七郎氏が創業し、以後の社長職を一貫して中村家の一族が継いできた同族企業であった。5代目の中村公一氏は1986年3月に36歳で代表取締役社長に就任し、以後30年にわたって在任し、国内外への事業拡大を主導した。長男の中村公大氏は2002年4月に生え抜きとして入社し、2011年6月に執行役員、翌年に経営企画部長、2013年6月に取締役兼執行役員、2014年4月に代表取締役専務取締役兼事業・エリア管掌と、10年余で経営の中枢に上がった。

内容

2016年の交代では、中村公大氏(当時39歳)が社長COOに就任する一方、中村公一氏は代表取締役会長CEOとして経営に残った。両者の任期はいずれも2015年6月26日の定時株主総会の終結時から2年で、異動は任期の途中に置かれている。9年後の2025年の交代では、中村公一氏(75歳)が代表権のない取締役会長・取締役会議長に退き、中村公大氏(48歳)が社長CEOとなった。COOは代表取締役専務取締役の青木信之氏(66歳)がエリア管掌・エリア統括・安全統括と兼務する形で分離された。

含意

社長職を先に譲り、経営の最終権限(CEO)を9年かけて段階的に移すという設計により、中村公大氏には実務を統括しながら経営者として習熟する助走期間が与えられた。同時に中村公一氏は代表権を持つ会長として一定期間関与を続け、承継後も取締役会議長として創業家の存在を残した。

9年の間に社外の関与も入った。2022年度の取締役会実効性評価で指名・報酬の手続が課題に挙がり、2023年4月に任意の指名委員会と報酬委員会が置かれた。指名委員会は社外取締役が委員長を務め、社内取締役1名・社外取締役3名で取締役の選解任と後継者計画を審議する。2025年のCEO交代は、この体制が整ったのちに実施された。

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筆者の見解 承継設計がもたらしたもの
筆者の見解

承継設計がもたらしたもの

この承継の特徴は、社長という肩書とCEOという最終権限を、あえて9年の間隔を置いて分けて渡した点にある。2016年に中村公大氏へ社長職と業務執行を先に委ね、中村公一氏が会長として経営に関与し続ける期間を挟んだうえで、2025年になって初めてCEO権限までを移した。これは単なる一回限りの世代交代ではなく、後継者に実務での習熟期間を与えながら創業家の関与を段階的に薄めていく、時間をかけた設計であったと思われる。

2025年の交代で中村公一氏に残されたのは、代表権のない取締役会長・取締役会議長という役職であった。経営の執行からは退きながら、取締役会の運営には関与し続けられる立場であり、創業家の存在を完全には手放さない構えともいえる。約100年・6代にわたって同族が社長職を継いできた山九にとって、この先も同族による継承が続くのか、それとも中村公大氏の代でその型が変わっていくのか、次の交代がどう設計されるかが注目されるのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

数字で見る 2表
承継の経緯と対応

承継の経緯と対応

科目 概要 備考
社長交代の実施 2016年4月 中村公大氏が代表取締役社長COOに就任。中村公一氏は代表取締役会長CEOへ
昇任前の役職 代表取締役専務取締役 2011年6月に執行役員、2013年6月に取締役、2014年4月に代表取締役専務取締役
就任時の任期 2015年6月26日の定時株主総会の終結時から2年 会長CEO・社長COOに共通。2016年4月の異動は任期の途中で行われた
CEO交代の実施 2025年4月 中村公大氏が代表取締役社長CEOに昇格。社長COOに就任してから9年後
中村公一氏の異動後の役職 取締役会長・取締役会議長 代表権を外れた。1986年3月の社長就任から39年、会長CEOとしては9年
COOの分離 青木信之氏が兼務 代表取締役専務取締役エリア管掌兼エリア統括兼安全統括COO。2025年4月から
交代時の任期 2025年6月26日の定時株主総会の終結時から1年 社長CEO・取締役会長を含む取締役に共通の任期
指名委員会の設置 2023年4月 任意の委員会。2016年の社長交代の時点では設置されていない
指名委員会の構成 委員長は社外取締役 2023年度は社内取締役1名・社外取締役3名の4名。報酬委員会も社外取締役が委員長
指名委員会の審議事項 取締役の選解任と後継者計画 取締役指名に関する方針、経営幹部の選解任基準、取締役会の構成も審議する
同族関係 中村公大氏は中村公一氏の長男 2016年・2025年のいずれの有価証券報告書にも同じ注記が置かれている

出所:山九 有価証券報告書 第107期(2016年3月期)・第116期(2025年3月期)【役員の状況】、統合報告書2024

連結業績と従業員数の推移

山九:連結業績と従業員数の推移

(百万円) 売上高営業利益親会社株主に帰属する当期純利益連結従業員数 備考
2011年3月期 373,20918,7478,203− 連結従業員数は第102期以降の有価証券報告書から取っている
2012年3月期 395,97718,4879,09728,691
2013年3月期 401,65817,8319,71727,947
2014年3月期 434,44516,5689,15330,410
2015年3月期 481,29121,25311,75030,754
2016年3月期 489,44124,31712,91130,926 中村公大氏の社長COO就任を決めた期。為替差損により経常利益は207億6百万円
2017年3月期 510,02727,08618,20831,595
2018年3月期 531,95631,58119,40230,575
2019年3月期 572,51639,24727,47031,137
2020年3月期 569,46140,37425,61931,496
2021年3月期 533,87033,92823,54031,121
売上高(百万円)営業利益率(%)

出所:山九 有価証券報告書 第102〜112期(連結損益計算書・従業員の状況)

参考文献
出典・参考

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