ディスコの直近の動向と展望

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ディスコの直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。

セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。

直近の動向と展望

営業利益率42% ── 生成AI特需の象徴

FY24(2025年3月期)、ディスコは売上3,933億円・営業利益1,668億円・純利益1,239億円を記録した。営業利益率は実に42.4%である。FY22(2023年3月期)の売上2,841億円・営業利益1,104億円、FY23(2024年3月期)の売上3,075億円・営業利益1,214億円から、FY24で売上28%増・営業利益37%増と、生成AI向け半導体需要の加速を直接反映した業績となった。HBM(高帯域メモリ)・先端ロジック向けパッケージングで、ウエハー切断・研削・研磨の高精度化への要求が一段と高まったことが背景にあり、ディスコが1968年以来積み上げてきた極薄切削の技術基盤が、ここで差別化要素として顕在化した格好である。数十マイクロメートル以下の精度でウエハーを切断・研磨する工程での同社の存在感は、他社が簡単に置き換えられない水準にまで高まっていた。

関家一馬はこの生成AI特需を「切る・削る・磨く」への事業集中の結果として説明する。「生成AI向けの装置で強い引き合いが来ているのは、われわれが『切る・削る・磨く』領域に技術を絞り込んでいて、この分野での解決力とリソースを最も持つからだ」(関家一馬 東洋経済オンライン 2024/12)、「顧客の半導体メーカーが最先端品を展開する際には、その領域で最も深い知見を持っているパートナーを選ぶ」(関家一馬 東洋経済オンライン 2024/12)と語る。1992年の拡散炉撤退、1997年のDisco Values制定、2008年以降の関家一馬による自律経営 ── この3つの節目を経て積み上げた事業集中の姿勢が、生成AI時代の収益構造として目に見える形で現れている。拡散炉の失敗なくしてDisco Valuesはあり得ず、Disco Valuesなくして現在の高収益もあり得ないという歴史的連続性が、決算数字の背景にはある。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • 東洋経済オンライン 2024/12
  • 日経ビジネス 2023/8
  • 日経ビジネス 2024/10

Will制度と「ユニークさを恐れない」経営

関家一馬は自身の経営哲学について「ユニークであることは、狙っていない。ある課題に対するベストな解決策が、たまたまユニークだった」(関家一馬 日経ビジネス 2024/10)、「狙っているのではなくて、ユニークを恐れない。他社がやっていない、聞いたことがないといっても、これがディスコのベストソリューションと思えばやろう」(関家一馬 日経ビジネス 2024/10)と語っている。Will制度の本質は「社員それぞれが(日常の企業活動を)自分のこととして考えるかどうか」(関家一馬 日経ビジネス 2023/08)にあると本人は表現する。利益と個人の経費権限を連動させることで、会社を社員にとっての「自分ごと」にする仕組みとして設計されている。1992年の苦い経験を出発点に四半世紀以上かけて練り上げてきたこの経営思想が、現在の高収益体質を支える位置づけとなっている。

半導体装置業界は生成AIブームが一巡したときの反動、中国半導体業界の地政学リスク、顧客集中リスクなど複数の外部要因に同時に晒されている。ディスコの場合、FY24の営業利益率42%という水準は構造的に維持できるものではなく、需要調整局面でどこまで柔軟に出荷を絞れるかが次の焦点となってくる。市場の動きに合わせて出荷を柔軟に調整する力と、高営業利益率によって財務バッファーを確保する姿勢という二本柱は、1992年の苦い経験から1997年に明文化された経営思想の延長線上にあり、次の半導体サイクルの谷でもこの設計思想が再び試される。1937年の呉で始まった砥石屋が、生成AI時代の先端装置メーカーとして確立した経営モデルの耐久性が、これから問われていく局面である。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • 東洋経済オンライン 2024/12
  • 日経ビジネス 2023/8
  • 日経ビジネス 2024/10

参考文献・出所

有価証券報告書
商工ジャーナル 1995/6
東洋経済オンライン 2024/12
日経ビジネス 2023/8
日経ビジネス 2024/10
東洋経済オンライン
日経ビジネス