筆者の見解
一か所に集約した強みが、そのまま止まった
この事故が突きつけたのは、アクリル酸から高吸水性樹脂までを姫路製造所へ集めた生産構造そのものであっただろう。爆発火災事故に係る損失17,205百万円は2期にわたる特別損失として姿を現したが、実際に効いたのは本業の側である。2013年3月期の営業利益は100億3千4百万円で、前年度から210億6千5百万円を失った。一つの製造所が止まったことで、連結の営業利益の3分の2が消えた計算になる。製品が違っても原料と工程でつながっている以上、停止は事業を横断して波及する。効率のために統合したものが、事故のときには同じ束のまま失われたのだといえる。
もっとも、会社が事故後に置き直したものは安全の体制だけではなかった。社是「安全が生産に優先する」を企業理念・経営理念と並ぶ最上位に明示する一方で、高吸水性樹脂の生産能力はインドネシアと中国の増設によって海外で27万トンへ広がった。姫路に集めた構造は、復旧と同時に外へ分散する方向へ動き出していたと読める。ただし全プラントが再稼働した2014年2月から刑事責任が確定する2018年までに要した歳月は、設備が戻ることと事故が終わることが別であることを示している。安全管理をどう恒常的に更新し続けるかという問いは、判決の後にも残されたままである。
Yutaka Sugiura, 2026年7月