三菱商事監査等委員会移行と委員会分割:監査役会設置会社をやめ、決定の権限を執行へ委ね、諮問機関を二つに割った選択

更新:

時期 2024年6月
当時の社長 中西勝也
論点 取締役会の監督機能と意思決定の速さ
概要

2024年6月21日の定時株主総会で定款の一部変更が承認され、三菱商事は同日付で監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移った。監査役5名は監査等委員である取締役となり、取締役会は9名から15名、社外取締役は4名から7名に増えている。同じ日に、取締役会の諮問機関であったガバナンス・指名・報酬委員会を、コーポレートガバナンス・指名委員会と報酬委員会の二つに分けた。

移行に伴い投融資案件の付議・報告の定量基準を引き上げ、重要な業務執行の決定の一部を業務執行取締役へ委ねる形に改めている。

背景

2000年代以降、監査役会設置会社のままで監督と執行の分離を掲げ、投融資案件の付議・報告基準を引き上げながら取締役会の審議を経営の方向性へ寄せてきた。2023年度の取締役会は総審議時間912分のうち半分を経営戦略・サステナビリティ関連の審議に充て、ガバナンス・コーポレート関連が27%を占めた。

垣内威彦取締役会長は 『監査等委員会設置会社では、重要な業務執行の決定の権限を執行側へ委譲することができます。これによって、執行の意思決定スピードが上がると同時に、取締役会は「監督」機能により重点を置ける』 と、機関設計を変える理由を権限の委譲に置いた。

内容

機関設計の検討は2022年10月のガバナンス・指名・報酬委員会で具体化が決まり、2023年度は同委員会を7回(2022年度は5回)開き、委員でない社外監査役も加えて審議を重ねた。移行後の監査等委員会は取締役5名で構成し、うち3名が社外、常勤は鴨脚光眞氏と村越晃氏の2名。独立組織として監査等委員会室を置き、専任スタッフ12名を充てている。

コーポレートガバナンス・指名委員会は全社外取締役7名と社内3名で、委員長は垣内威彦取締役会長。報酬委員会は社外3名と社内1名で、委員長は社外取締役の秋山咲恵氏が務める。

含意

取締役や社長後継者の選任にかかわる指名と、機関設計・取締役会の規模や構成・実効性評価といったガバナンス全般を一体で審議すべきものと判断し、この二つを一つの委員会に残して報酬だけを切り出した。社外取締役の秋山咲恵氏は 『大切なのは当社の企業価値向上に向けた審議をする上で、実質的にどのような形が最適かということです』 と、一般的な指名・報酬の組み方を採らなかった判断の拠り所を置いている。

移行後の2024年度は取締役会を13回(定例11回・臨時2回)開き、コーポレートガバナンス・指名委員会と報酬委員会をそれぞれ3回開催した。取締役会の審議には機関設計変更関連のほか、自己株式取得・消却方針、政策保有株式の保有方針検証が並ぶ。

筆者の見解

監督の器を替えた意味

この移行で実際に動いたのは、監督の強化という言葉よりも、取締役会が個別案件の決裁からどこまで降りるかという線引きだったとみられる。投融資案件の付議・報告の定量基準を引き上げ、重要な業務執行の決定の一部を業務執行取締役へ委ねたことが、その具体である。監査役会設置会社のままでも審議時間の半分を経営戦略に割けていた会社が、それでも機関設計そのものを替えたのは、監査役という議決権を持たない立場のままでは監督の担い手が意思決定の場に加われなかったからだろう。監査役5名がそのまま監査等委員である取締役となり、取締役会の議決に加わる形になった。

もっとも、諮問機関の組み替えのほうは教科書的な型を外している。一般には指名と報酬を一体で扱うところを、三菱商事はガバナンスと指名を一つに残し、報酬だけを切り出した。機関設計や取締役会の規模・構成は誰を取締役に選ぶかと不可分だという読みであり、社長後継者計画をこの委員会が抱える構図とも噛み合う。ただし委員長は取締役会長が務め、社内委員3名が入る。全社外取締役が参加するとはいえ、指名の独立性をどう担保するかは、移行そのものでは片づいていない。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

経緯と対応

科目 概要 備考
検討の開始 2022年10月 ガバナンス・指名・報酬委員会で、機関設計変更に向け具体的検討を進めることを確認
検討の場 ガバナンス・指名・報酬委員会 2023年度は7回開催(2022年度は5回)。委員でない社外監査役も参加して審議した
移行の決議 2024年6月21日 定時株主総会で定款の一部変更が承認され、同日付で移行した
移行前の機関設計 監査役会設置会社 取締役9名(うち社外4名)と監査役5名(うち社外3名)
移行後の機関設計 監査等委員会設置会社 取締役15名(うち社外7名)。定款上の員数は17名、任期は1年
監査等委員会の構成 取締役5名(うち社外3名) 常勤は鴨脚光眞氏と村越晃氏。うち2名が財務・会計に相当程度の知見を持つ
監査等委員会の事務局 専任スタッフ12名 独立の組織として監査等委員会室を設置(2024年6月21日時点)
諮問機関の再編 2委員会体制へ ガバナンス・指名・報酬委員会をコーポレートガバナンス・指名委員会と報酬委員会に分割
コーポレートガバナンス・指名委員会 社外7名・社内3名 委員長は垣内威彦取締役会長。全社外取締役が参加し、2024年度は3回開催
報酬委員会 社外3名・社内1名 委員長は社外取締役の秋山咲恵氏。2024年度は3回開催
執行への権限委譲 投融資案件の付議・報告基準の引き上げ 重要な業務執行の決定の一部を社長その他の業務執行取締役へ委任した
取締役会の開催 2024年度13回 定例11回・臨時2回。2023年度は14回(定例11回・臨時3回)

出所:三菱商事 有価証券報告書 2023年度(2024年3月期)・2024年度(2025年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】、コーポレート・ガバナンス報告書(2024年6月21日)

三菱商事:取締役会と監査役会の構成

(名) 取締役うち社外取締役監査役うち社外監査役 備考
2021年12月 11553
2022年6月 11553
2023年1月 11553
2023年6月 9453
2024年1月 9453 移行直前の体制。取締役と監査役を合わせた役員は14名
2024年6月 157 6月21日に移行。監査役5名は監査等委員である取締役となった
2024年10月 157
2025年6月 157
2025年10月 157
2026年6月 157
2026年9月 157
取締役・監査役の人数と社外取締役の比率
取締役(名)監査役(名)うち社外取締役率(%)

出所:三菱商事 コーポレート・ガバナンス報告書(2021年12月17日〜2026年9月7日の各更新時点)

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出典・参考

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