横河電機指名委員会等設置会社への移行:監査役会の廃止と独立社外取締役8名への増員、業務執行の決定の執行役への委譲

更新:

時期 2024年6月
当時の社長 奈良寿
論点 機関設計と監督・執行の分離
概要

2024年6月18日開催の第148回定時株主総会における定款一部変更の承認をもって、監査役会設置会社から指名委員会等設置会社へ移った。経営の監督と業務執行を明確に分離することで、取締役会の監督機能の強化と執行役の権限・責任の明確化を図り、業務執行および意思決定の品質の向上とスピードアップを実現することを目的とする。

移行前の取締役会は独立社外取締役5名を含む8名で、監査は常勤監査役2名と独立社外監査役3名の計5名からなる監査役会が担っていた。移行後は取締役11名のうち独立社外取締役が8名を占め、監査役会は監査委員会に置き換わった。

背景

中期経営計画GS2028は、経営・事業基盤の強化の柱の一つに移行を掲げた。監督と執行の役割分担の明確化、意思決定プロセスの効率化、経営判断と事業計画の達成に対する責任の明確化、監査機能の強化と効率化が、そこで挙げた狙いである。

2023年度は取締役会評価のなかで機関設計の変更を念頭においた意見を集約し、任意の指名諮問委員会を14回開催して取締役会のあり方と最適な意思決定プロセス、機関設計を議論した。同委員会は移行後の法定3委員会の委員と委員長の候補者、執行役の候補者まで審議している。

内容

法定3委員会はいずれも委員長を独立社外取締役が務める。指名委員会は独立社外取締役4名と取締役1名の5名、報酬委員会は独立社外取締役4名、監査委員会は独立社外取締役4名と常勤監査委員1名の5名で構成する。監査委員会には財務・会計に関して十分な知見を有する者を1名以上選任することとした。

取締役の員数は定款の定めにより15名以下とし、その過半数を独立社外取締役、執行役を兼任する取締役は最小限の人数とする。任期は1年。取締役会議長は執行と監督の分離を図るため、原則として独立社外取締役が務める。

含意

業務執行の意思決定は執行役へ大幅に委譲された。移行時の執行役は24名で、2025年3月期末には25名となっている。監査委員会には執行部門から独立した専任スタッフ3名の監査委員会室を置き、その人事異動には委員会の事前了解、人事評価には委員会の同意を要する。

移行後の初年度は取締役会を15回、監査委員会を15回、指名委員会を12回、報酬委員会を5回開催した。指名委員会はCEOサクセッションプランに基づいて2025年4月1日付の代表執行役社長の交代を審議し、取締役会へ提案している。

筆者の見解

議席を外へ明け渡す

この移行の芯は、委員会を三つ立てたことよりも、取締役会の議席の大半を独立社外取締役へ明け渡したことにある。8名中5名だった独立社外は11名中8名になり、社内から取締役会に残ったのは会長を兼ねる代表執行役と常勤監査委員、経理財務の担当を含む3名だけになった。任意の諮問委員会が取締役会に答申を出す立場から、法定の委員会が取締役の選解任議案と個人別の報酬を自ら決める立場へ移ったことで、経営陣が自らの人事と報酬に及ぼす余地は制度として細くなったとみられる。

もっとも、監督の密度が上がったぶん、執行の側は権限を委ねられて決定の速さと結果責任を同時に背負うことになった。移行の翌年度、新しい仕組みが最初に扱った大きな案件は代表執行役社長の交代であり、指名委員会がサクセッションプランに基づいて審議し取締役会へ提案している。委員会が経営陣の顔ぶれを実際に動かしたという点では、制度は形だけで終わっていない。ただし監督の強化が執行の成果に結びついたかどうかは、委ねられた側がこれから示すほかないだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

経緯と対応

科目 概要 備考
移行の決定 2023年度の取締役会 取締役会評価の結果を踏まえ、移行を定時株主総会に諮ることを決定した
移行の承認 2024年6月18日 第148回定時株主総会における定款一部変更の承認をもって移行した
移行の目的 経営の監督と業務執行の明確な分離 取締役会の監督機能の強化と、執行役の権限・責任の明確化による意思決定の品質向上とスピードアップ
移行前の機関 監査役会設置会社 取締役8名(うち独立社外5名)、監査役会は常勤2名と独立社外3名の計5名
移行後の取締役会 取締役11名(うち独立社外8名) 過半数を独立社外取締役とし、執行役を兼任する取締役は最小限の人数とする
定款上の員数と任期 15名以下・任期1年 株主の信任に裏付けられた経営を実践するため任期を1年とする
取締役会議長 独立社外取締役 執行と監督の分離を図るため、原則として独立社外取締役が務める
廃止した監査役会 常勤2名と独立社外3名の計5名 2024年6月18日をもって監査役会を廃し、監査委員会へ引き継いだ
監査委員会 5名(うち独立社外4名) 委員長は丸山寿社外取締役。執行役を兼任しない取締役で構成し、常勤監査委員1名を置く
指名委員会 5名(うち独立社外4名) 委員長は浦野邦子社外取締役。取締役の選解任議案と執行役・代表執行役の選定を決定する
報酬委員会 4名(全員が独立社外取締役) 委員長は平野拓也社外取締役。取締役と執行役の個人別の報酬等の内容と基準を決定する
移行前の任意委員会 各6名(うち社外5名) 指名諮問委員会と報酬諮問委員会。いずれも取締役会の任意の諮問機関であった
執行役 24名 取締役会の決議による委任を受け、業務執行の決定を行う。2025年3月期末は25名
監査委員会の補助体制 監査委員会室 執行部門から独立した専任スタッフ3名。人事異動は事前了解、人事評価は同意を要する
役員報酬制度 報酬委員会が決定 移行に伴い一部変更。基本報酬、年次インセンティブ、PSU制度の3本立てとする

出所:横河電機 有価証券報告書 第148期(2024年3月期)・第149期(2025年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】

横河電機:取締役会と監査機関の員数

(名) 取締役うち独立社外取締役監査役執行役 備考
2020年3月期 845
2021年3月期 955
2022年3月期 955
2023年3月期 855 監査役会設置会社としての最後の期。任意の指名・報酬諮問委員会を設置していた
2024年3月期 11824 2024年6月18日に移行。有価証券報告書提出日現在で新体制を記載している
2025年3月期 12825 移行後の初年度。取締役会を15回、監査委員会を15回開催した
2026年3月期 12814
2027年3月期
2028年3月期
2029年3月期
2030年3月期
取締役の員数と独立社外比率
うち独立社外取締役(名)社内取締役(名)うち独立社外取締役率(%)

出所:横河電機 有価証券報告書 第144〜150期(コーポレート・ガバナンスの状況等)。各期の提出日現在の員数

横河電機:第148回定時株主総会 取締役選任議案の候補者別賛成率

(%) 賛成率 備考
奈良寿 96.7 取締役会長代表執行役。候補者11名のうち最も低い
吉川光 97 常勤監査委員
中嶋倫子 99.7 執行役を兼ねる取締役
内田章 98.6 独立社外取締役。指名委員会と報酬委員会の委員
浦野邦子 98.3 独立社外取締役。指名委員会の委員長
平野拓也 98.5 独立社外取締役。報酬委員会の委員長
五嶋祐治朗 98.6 独立社外取締役。指名委員会と報酬委員会の委員
高山靖子 99.8 独立社外取締役。監査委員会の委員
大澤真 99.8 独立社外取締役。財務・会計に関して十分な知見を有する監査委員
小野傑 99.7 独立社外取締役。監査委員会の委員
丸山寿 99.8 独立社外取締役。監査委員会の委員長

出所:横河電機 臨時報告書(2024年6月18日開催の定時株主総会における議決権行使の結果)

同じ問いに直面した会社

取締役会改革2024年資生堂監査役会の廃止と、CEOの選解任・報酬の決定を独立社外取締役へ委ねる体制への組み替え機関設計と、業務執行と監督の分離
2024年小林製薬サプリ健康被害の引責による創業家の後退と、統治体制の刷新危機対応の責任と創業家統治の刷新
2024年ENEOS HD社長が6代続けて3年以内に退き、2年連続で経営トップが職を離れた会社が選んだ、指名の作り直し3年で替わり続けるトップと、機能しなかった後継者計画
2024年三菱商事監査役会設置会社をやめ、決定の権限を執行へ委ね、諮問機関を二つに割った選択取締役会の監督機能と意思決定の速さ
2024年ライフコーポレーション監査役会を畳んで監査を取締役会の議席へ移し、社外取締役を4名から6名へ増やした機関設計の組み替え監督と監査の担い手をどこに置くか
出典・参考
  • 横河電機 決算説明会資料「2023年度決算説明会」
  • 横河電機 臨時報告書「第148回定時株主総会における議決権行使の結果」
  • 横河電機 有価証券報告書「第148期(2024年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • 横河電機 有価証券報告書「第148期(2024年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • 横河電機 有価証券報告書「第149期(2025年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • 横河電機 有価証券報告書「第149期(2025年3月期)【監査の状況】」

免責事項およびポリシー