資生堂指名委員会等設置会社へ移行:監査役会の廃止と、CEOの選解任・報酬の決定を独立社外取締役へ委ねる体制への組み替え

更新:

時期 2024年3月
当時の社長 魚谷雅彦
論点 機関設計と、業務執行と監督の分離
概要

2024年3月26日開催の第124回定時株主総会の終結の時をもって、監査役会設置会社から指名委員会等設置会社へ移行した。取締役は10名から11名へ、社外取締役は5名から7名へ増え、常勤監査役2名と社外監査役3名からなる監査役会は廃されて、取締役会の内側に監査委員会が置かれた。

指名委員会と報酬委員会はいずれも独立社外取締役だけで構成し、CEOの選任・解任と、取締役および執行役の個人別の報酬の決定を社外の手に委ねている。

背景

それまでの体制は、モニタリングボード型を指向した取締役会運営によって、透明性・公正性を確保しながら戦略の策定と迅速な執行を図るものだった。これを一段進め、更なる企業価値向上を目指すというのが移行の理由である。

2023年12月期の取締役会は14回開かれ、事業戦略・構造改革・取締役会の実効性と並んで、機関設計のあるべき姿が議題に上がっている。移行に備えて、委員会の事務局機能まで統合した部門を2024年1月に新設した。

内容

取締役会は経営の基本方針・経営戦略の決定とそれらの執行の監督に集中し、取締役会規程に定めた事項以外は代表執行役または執行役へ委任する。定款上の取締役の員数は12名以内から14名以内へ広げ、原則として過半数を独立社外取締役とする。

指名委員会は社外取締役4名で、取締役候補の決定に加えてCEOの選任・解任、代表執行役の選定、執行役の選任と担当領域の決定を審議する。報酬委員会も社外取締役4名。監査委員会は社外取締役3名と常勤の監査委員2名の5名で構成し、委員長は社外取締役が務める。執行役は代表執行役2名を含む6名が置かれた。

含意

移行後の初年度にあたる2024年12月期は、指名委員会を8回、報酬委員会を10回開いた。移行前の指名・報酬諮問委員会が3回だったことに照らせば、社外の関与の密度が回数にそのまま出ている。指名委員会はCEOサクセッションの実施状況をモニタリングし、CEOの選任、代表執行役および執行役の選定を審議して取締役会へ提言した。

さらに2025年1月1日からは、執行と監督の分離を一段強めるため、社外取締役の畑中好彦氏が取締役会議長を務めている。取締役会の議長も、人事も、報酬も、社内の執行陣の手を離れた。

筆者の見解

社外に委ねた三つの決定

この移行で実際に動いたのは、取締役会の外にあった監査役を内側の監査委員へ入れ替えたことよりも、CEOの選解任・執行役の選定・役員報酬という三つの決定を、独立社外取締役だけの委員会へ移した点にある。監査役会設置会社のもとでも任意の指名・報酬諮問委員会は置かれていたが、その答申は取締役会を拘束しない。指名委員会等設置会社では委員会の決議そのものが効力を持つ。取締役会の議長を2025年から社外取締役が務めるようになったことも合わせれば、社内の執行陣が自らの人事と報酬を差配する余地は、制度の上ではほとんど残っていない。

もっとも、器を組み替えたからといって監督が働くとは限らない。指名委員会8回、報酬委員会10回という開催回数は、移行前の諮問委員会3回と比べれば関与の密度の違いを示すが、回数は審議の中身までは保証しない。移行の翌期に資生堂が向き合ったのは米州事業の不振と二期連続の赤字であり、新しい機関設計がその局面でどう働いたかは、これから選ばれる経営陣と、その選び方によって測られるのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

経緯と対応

科目 概要 備考
移行の準備 2024年1月 委員会の事務局機能まで統合した部門を新設した
移行の決議 2024年3月26日 第124回定時株主総会。同総会の終結の時をもって移行した
移行前の体制 監査役会設置会社 取締役10名(うち社外5名)、常勤監査役2名と社外監査役3名からなる監査役会
移行の目的 業務執行と監督の分離 それぞれの機能を強化し、経営環境の不確実性が増すなかでも戦略の実効性を高める
取締役の員数 14名以内 定款。移行前は12名以内。原則として過半数を独立社外取締役とする
移行後の取締役会 取締役11名・社外取締役7名 概ね1か月に1回開催。取締役会規程に定めた事項以外は代表執行役または執行役へ委任
指名委員会の構成 社外取締役4名 委員長は岩原紳作氏。CEOの選任・解任、代表執行役の選定、執行役の選任を審議する
報酬委員会の構成 社外取締役4名 委員長は畑中好彦氏。取締役および執行役の個人別の報酬等の内容を決定する
監査委員会の構成 社外取締役3名と常勤2名 委員長は小津博司氏。常勤の監査委員は安野裕美氏と吉田猛氏が務める
執行役 6名 代表執行役は魚谷雅彦氏と藤原憲太郎氏。ほかに執行役4名を置いた
退任した取締役 4名 鈴木ゆかり氏、直川紀夫氏、横田貴之氏、チャールズD.レイクⅡ氏が総会終結の時に退任
内部統制システム 2024年3月26日の取締役会 移行に伴い「内部統制システムの基本方針」の改定を決議した
移行後初年度の委員会 指名8回・報酬10回 2024年12月期。移行前の指名・報酬諮問委員会は3回だった
取締役会議長 2025年1月1日から社外取締役 執行と監督の分離を強め、透明性と客観性を高めるため畑中好彦氏が務める

出所:資生堂 有価証券報告書 第124期(2023年12月期)・第125期(2024年12月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】、コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2024年4月10日)

資生堂:取締役会と監査体制の構成

(名) 取締役うち社外取締役監査役うち社外監査役 備考
2021年8月 7353
2022年3月 8453 社外取締役が3名から4名になった
2023年3月 10553 社外取締役が5名に増え、取締役会議長が社長から会長に替わった
2023年11月 10553
2024年4月 117 指名委員会等設置会社へ移行。監査役会に替えて監査委員5名を取締役会の内側に置いた
2025年4月 117 2025年1月1日から社外取締役が取締役会議長を務める
2026年4月 128
取締役の員数と社外取締役の比率
取締役(名)うち社外取締役率(%)

出所:資生堂 コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2021年8月30日〜2026年4月3日提出分)

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出典・参考
  • 資生堂 有価証券報告書「第124期(2023年12月期)【コーポレート・ガバナンスの概要】」
  • 資生堂 有価証券報告書「第124期(2023年12月期)【内部統制システムの整備状況】【事業等のリスク】」
  • 資生堂 有価証券報告書「第125期(2024年12月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】【役員の報酬等】」
  • 資生堂 コーポレート・ガバナンスに関する報告書「2024年4月10日提出」
  • 資生堂 コーポレート・ガバナンスに関する報告書「2021年8月30日〜2026年4月3日提出」

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