三菱商事 ローソン共同経営化と日本KFC売却 連結で抱えた生活産業の2社を、共同経営と全量売却で持ち替えた選択
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何をなぜ決めたか
- 概要
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2024年、三菱商事は連結で抱えてきた生活産業の2社を相次いで持ち替えた。ローソンはKDDIによる公開買付けと株式併合によるスクイーズアウトを経て、2024年8月15日付で両社の出資比率を各50%へ調整し、単独支配を喪失して共同支配企業となった。日本KFCホールディングスは、同社が実施した自己株式の取得に応じて保有株式の全量を売却した。
資源高で当期純利益が1兆円台に乗せた直後の判断であり、ローソンの持ち替えでは残存持分の再評価益など1,821億円を計上している。
- 背景
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中西勝也社長が2022年5月に公表した中期経営戦略2024は、資本効率を軸とする循環型成長モデルを掲げた。戦略的なポートフォリオの入替え、関係会社の入替や収益性改善による資産効率化、柔軟な資本政策による成長の加速——この三つを一体で回すのが循環型成長モデルであり、 『ローソンやNexampにおける一部売却等の例のように、新たな最適なパートナーを招聘する』 と、ローソンの持ち替えを三つ目の型に当てている。
ナチュラルオーナーでなくなる事業、現時点で売却するほうが有利な事業を入れ替えるという線引きが、判断の前提にある。
- 内容
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KDDIとの取引基本契約および株主間契約は2024年2月6日付。KDDIは1株当たり10,360円でローソン株式の公開買付けを2024年3月28日に開始し、4月25日付で完了・成立した。株式併合によるスクイーズアウト手続きを経て、2024年8月15日付で三菱商事とKDDIの出資比率は各50%となり、株主間契約の効力発生によって単独支配が失われた。
ローソンについては売却益473百万円と残存保有持分の再評価益など182,070百万円、これに係る法人所得税費用60,074百万円を、日本KFCについては株式売却益21,861百万円を、いずれも2025年3月期に計上した。
- 含意
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ローソンが連結から外れたことで、2025年3月期の連結総資産は234,596億円から214,961億円へ縮み、連結従業員数も前期末比で17,975名減った。S.L.C.セグメントの連結純利益は493億円から1,850億円へ跳ねたが、中身は再評価益であって事業の伸びではない。
共同経営そのものは働いており、ローソンの2024年度の連結純利益は599億円と過去最高になった。日販は2023年度から2024年度にかけて104%近くまで伸び、Pontaパスやpovoとの連携が寄与している。
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筆者の見解
譲渡したのは事業ではなく支配
この判断の芯は、事業を売却したことではなく、支配権を譲渡したことにある。日本KFCは持分を全量外した売却だが、ローソンは50%を持ち続けている。変わったのは連結という帳簿上の位置づけと、単独で決める権利をKDDIと分け合った点である。単独支配の喪失は、会計上は残存持分を公正価値で測り直す機会になり、182,070百万円の再評価益として一度に表へ出た。長く持ち続けた資産の含みが、支配の放棄と引き換えに数字として顕在化したことになる。総合商社の持ち分を寝かせる経営から、持ち方そのものを設計し直す経営へ移ったと推察される。
もっとも、支配権を譲渡した後に価値が伸びるかは、相手次第の面が残る。ローソンの2024年度の連結純利益は599億円と過去最高で、Pontaやpovoとの連携という共同経営の狙いは、現時点では数字に出ている。ただ持分法へ移った以上、取り込めるのは半分であり、店舗網の拡大も日販の改善も三菱商事の連結の収益には乗らない。売却で得た資本と再評価益を、どの成長分野へどれだけの確度で振り向けられるか——循環型成長モデルという言葉の実質は、入れ替えたあとの投資で測られることになるのだろう。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
ローソンの共同経営化の条件
ローソンの共同経営化の条件
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 従前の持株比率 | 発行済株式の過半数 | 2017年に公開買付けで16.6%を取得し、それまで保有していた33.4%と併せたもの |
| 契約の締結日 | 2024年2月6日 | KDDIとの取引基本契約と、取引完了後の会社運営などに関する株主間契約 |
| 公開買付価格 | 1株当たり10,360円 | 公開買付者はKDDI |
| 公開買付けの期間 | 2024年3月28日開始 | 2024年4月25日付で完了・成立 |
| 出資比率の調整日 | 2024年8月15日 | 株式併合を用いたスクイーズアウト手続きを経たもの |
| 調整後の出資比率 | 三菱商事・KDDI 各50% | 株主間契約の効力が発生し、単独支配を喪失した |
| 会計上の分類 | 共同支配企業 | 連結子会社から外れ、持分法で会計処理される投資となった |
| 売却に伴う売却益 | 473百万円 | 連結損益計算書の「有価証券損益」に計上 |
| 残存保有持分の再評価益など | 182,070百万円 | 支配の喪失に伴い残存保有持分を公正価値で再測定して認識した利益 |
| 上記に係る法人所得税費用 | 60,074百万円 | 売却益と再評価益から差し引いた後は122,469百万円 |
| 支配喪失に伴う現預金の減少 | 457,961百万円 | 連結キャッシュ・フロー計算書の「事業の売却による収入」に含まれる |
| 分類直前の売却目的保有資産 | 2,678,672百万円 | 2024年3月期末。直接関連する負債は1,773,202百万円 |
| 投資の帳簿価額 | 5,287億円 | 2025年3月期末。2026年3月期末は5,026億円 |
出所:三菱商事 有価証券報告書 2024年3月期・2025年3月期【事業等のリスク】ローソン社への出資、2025年3月期 連結財務諸表注記11・37
ローソンと日本KFCが属したセグメントの連結純利益
三菱商事:ローソンと日本KFCが属したセグメントの連結純利益
| (億円) | S.L.C.(旧コンシューマー産業) | 食品産業 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2020年3月期 | 227 | 532 | |
| 2021年3月期 | △732 | 394 | コンシューマー産業は国内外の事業で減損が重なり赤字 |
| 2022年3月期 | 210 | 793 | |
| 2023年3月期 | 189 | 634 | |
| 2024年3月期 | 493 | 149 | ローソン宛て投資の無形資産の減損の戻入益を含む。S.L.C.区分では1,027億円 |
| 2025年3月期 | 1,850 | 924 | ローソンの再評価益と日本KFC株式の売却益を含む。区分をS.L.C.へ変更 |
| 2026年3月期 | 910 | 833 | 前年度の再評価益・売却益の反動で両セグメントとも減益 |
出所:三菱商事 有価証券報告書 2020年3月期〜2026年3月期(事業セグメント別の当社の所有者に帰属する当期純利益)
連結の総資産と当社の所有者に帰属する持分
三菱商事:連結の総資産と当社の所有者に帰属する持分
| (億円) | 総資産 | 当社の所有者に帰属する持分 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2020年3月期 | 180,334 | 52,274 | |
| 2021年3月期 | 186,350 | 56,136 | |
| 2022年3月期 | 219,120 | 68,802 | |
| 2023年3月期 | 221,475 | 80,656 | |
| 2024年3月期 | 234,596 | 90,439 | 期末にローソンの資産を売却目的保有へ振り替え、2,678,672百万円を計上 |
| 2025年3月期 | 214,961 | 93,687 | ローソンの持分法適用会社化で総資産が1兆9,635億円減少 |
| 2026年3月期 | 241,517 | 94,406 |
出所:三菱商事 有価証券報告書 2024年3月期・2026年3月期【主要な経営指標等の推移】
同じ問いに直面した会社
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参考文献
- 三菱商事 ニュースリリース 2022年5月10日「中期経営戦略2024」
- 三菱商事 適時開示「当社子会社(株式会社ローソン)の異動(持分法適用会社化)に関するお知らせ」
- 三菱商事 適時開示「日本KFCホールディングス株式会社の売却について」
- 三菱商事 決算説明会 質疑応答「2023年度決算説明会 質疑応答」
- 三菱商事 決算説明会 質疑応答「2024年度第1四半期決算説明会 質疑応答」
- 三菱商事 適時開示「(開示事項の経過)当社子会社(株式会社ローソン)の異動(持分法適用会社化)に関するお知らせ」
- 三菱商事 決算説明会 質疑応答「2024年度第2四半期決算説明会 質疑応答」
- 三菱商事 決算説明会 質疑応答「2024年度決算説明会 質疑応答」
- 三菱商事 有価証券報告書「2024年3月期【事業等のリスク】ローソン社への出資」
- 三菱商事 有価証券報告書「2025年3月期 連結財務諸表注記11・37」
- 三菱商事 有価証券報告書「2026年3月期 連結財務諸表注記(持分法で会計処理される投資の売却)」